ファイル0 三人の少女
とある高校のとある時間。応接室にて、一人の教師と生徒が、ある話しを始めた。
「急に呼び出してすまないね、氷川雪絵君。少し君に頼みたい事があるんだ」
「頼みたい事...ですか?」
今思えば、これが始まりだったのかもしれない。
「我が校にいる三人の少女...その子達について調べてほしいんだ」
「調べる?...どうして僕が?」
そう僕が質問すると、教師は少し不思議そうにし、
「おや?君は確か彼女達の知り合いだと聞いたが...まぁいい、これが我々が調べてほしい少女達だ」
と、言った。
心の中で『良くないだろ』と思いながら雪絵は教師から渡された資料に目を通そうとするーーー
「...は?」
しかし、その資料には何故かその少女達の名前だけが黒いもやのような物で見えなくなっていた。「あのっ...この資料名前が変なもやで見えないのですが...」
「もや?どういう事だ?」
「それが...見た目とかそれ以外の情報はちゃんと見れるんですが、何故か名前の欄や家族の情報だとかが黒いもやで見えなくなっていまして...」
そう雪絵が伝えると教師は少し考え初め、とある方法を思いついた。
「...私にはそのようなもやは無い...なら、私が彼女達の名前を伝えるのはどうだ?」
「あっ...確かにそれなら」
その方法なら名前が分かると思った雪絵は、早速教師の考えた方法を試すことにした。
しかしーー
「ええと名前は...●◎○○◎◇● □◇◎○★☆ □◎●○★◆だ」
「え...」
雪絵の耳に聞こえたのはただのうるさいノイズだった。
「なんだこれ...?ノイズ?どうなってんだ...?」
「ノイズ?...まさかこの方法も...」
そう教師が疑い出すと雪絵はゆっくりとうなずいた。
「この方法でも駄目か...!一体どうすれば...」
「...あ、そうだ」
「何か思いついたのか!?」
「名前で呼ばなければ大丈夫なんじゃないですか?」
「なるほど...確かにその方法なら、よし試してみよう」
そうすると雪絵は資料いる少女達を何と呼ぶかを決め、一息を吸いこれで成功してほしいという思いを込めて、名前を言った。
「...A子、B子 C子!!」
「...?」
「やった!!言えた!!成功ですよ先生!」
ようやく彼女達の名前を言う事に成功した雪絵は激しく喜び、教師も同じように喜んでいるのだろうと考えた。
「...雪絵君」
「どうしました先生?」
しかし、教師は逆に喜ぶのではなく少し困った顔をしていた。そして教師は一息吸ってから、
「もう少し良い名前は無かったのかい...?」
「やめてください、これしか思い付かなかっのですから」
雪絵のネーミングセンスに少し苦言をしたのであった。
~数時間後~応接室
一人の教師がいる部屋から一本の電話が鳴り始めた。
「私だ。...ああ、なんとか彼に彼女達を調べてもらう事に成功したよ。ネーミングセンスはひどかったのだがな...」
『ふーん、で?僕の雪絵はいまどこにいるのさ』
電話の先で喋る声は、幼く、雪絵と同じような年齢の少女の声だった。
「...彼を選んだ理由は君の私的な理由か、それとも...」
『君もうすうす気付いているんじゃないの?僕が雪絵を選んだ理由』
「...あぁ」
そう返事をし、教師は机においてある資料に目を向けた。
「君は彼の幼馴染だと言っていたが…それと彼女達にどんな関係があるんだ?」
『いずれ分かるさ、いずれね』
そして、電話の向こうから不敵な笑い声が聞こえ、電話が切られたのであった。
~同時刻~空き教室
普段はよっぽどの事がなければ使うことがなく、利用するとしても教師からの許可でしか使えないこの教室に、一人の少女が暇そうに机に腰を掛けて座っていた。数時間前に教師に自分に用がある人がいると空き教室呼ばれ、待たされている最中であった。すると部屋の扉が開きだした。
「貴方が私に用がある人?随分長く待たせてくれたわね」
「―――それに関しては本当にごめん…」
「はぁ…もういいわ、それより聞きたいことが一つあるんだけど言っていいかしら?」
「えっ何?」
「なんであんた左腕が無いの?」