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079 ロマンスこそが冒険

「……んにゃ。ウィルテもレディーと一緒に行くにゃ」


「え?」「「「えっ!?」」」


 いや、なんかアタシ以外もびっくりしてるんですけど。


「えーと、そんなに簡単に決めていいの?」


「実は前から考えてはいたにゃ。この島で悠々自適な生活もいいけど、ウィルテはレンジャーとしてそれでいいのかって……」


 確かにウィルテの実力を考えれば、このイークルではもったいない気もする。ギルドマスターのペイジさんもそんなこと言ってたし。


「それに婚活にゃ! 大陸に行けばフィーリー様! いや、他のイケメン男子との出会いもあるかもしれんにゃ!!」


「そっちが本命っぽいけど……」


「ロマンスは大事にゃ! 冒険の根幹にゃ!!」


「ううッ、ついに、お嬢様が大人になられて! ギルドで詐欺まがいなことをして小金をせしめておられたことを思うと、このゴイソン、天国の御主人様と奥様に、どうお詫びしたらよいかと心を痛めておりましたが! ようやく、人間として成長なされたッ!」


 なんかゴイソンさんたち使用人たちがさめざめと泣いている。


 ああ、きっとウィルテのワガママに付き合わされて大変だったんだろうな。


 気のせいか、ガッツポーズとってる人もいるけど見なかったことにしよう。


「なんだよ。俺はギルドに戻ってきてほしかったんだがなぁ。ウィルテもレディーもこの島を出て行っちまう話になったのか」


 グランダルさんは残念そうに言う。


「うん。なんかゴメンね」


「親方には世話になったにゃ」


「んまあ、そう決めたんなら仕方ねぇさ」

 

 レンジャーがどういうものか知っているグランダルさんは、「気持ちよく送りだしてやんなきゃな」と言ってくれる。


「姐さんがいなくなったら我々は……」


 ローガンさんたちが途方に暮れた感じだ。


「こんなバカなことやってにゃいで、ギルドに戻ってホワイトランクからやり直すにゃ」


 えー。バカなことやらせてたのはウィルテなのに。


「ベッドになっても一流のレンジャーにはなれにゃいのにゃ!」


 正論は正論だと思うけど、アンタが言うなって思う。


 ローガンさんたちは何か感動して男泣きしてるけど……。


「でも、ペイジには悪いことしたにゃ。返事をかなり待たせたにゃ」


 返事は2、3日待ってくれるって話だったけれど、もう5日も経っている。


「それがねぇ……」


「んにゃ? それは……」


 アタシは、ポシェットからレッドバッチを2枚取り出す。


「ゴメン。アタシ、勝手に行くってペイジさんに伝えてたんだ。ウィルテのことも……」


「レディー!」


 てっきり怒られると思いきや、なぜかウィルテは抱きついてくる。


「怒らないの?」


「怒る? なんでにゃ? むしろウィルテは感心したにゃ。それでこそ“チーム”、それでこそ“仲間”にゃ!」


「そう?」


「そうにゃ。イマイチ、レディーは自主性がないというか、にゃんというか、ウィルテの言いなりになっていたというか……まあそれはそれで都合がよかったんだけれども、少し頼りなく不安に思っていたにゃ!」


 なんかアタシ、若干ディスられてね?


 そんな都合のいい女じゃないんですけど……


「それにペイジに先に話したってことは、レディーはウィルテを説得できる気でいたにゃ?」


 ウィルテはアタシの手からバッジを取って、口元を隠しニャフフというわざとらしい笑みを浮かべる。


「まあ、うん。ウィルテなら……。たぶん、一緒に来てくれるかなぁと」


 正直、ひとりで大陸に行くのは怖かったし(ユーデスはいるけど、対人スキル持ってるのはアタシだけだし)。フィーリー捜索を餌にすれば、ヒョイヒョイ軽いノリついてくるんじゃと思っていた……ってことは、言わない方がよさそうな流れだよね。


 まあ、仮にもしダメだったとしても、ペイジさんにバッジを返せばいいだけかなぁって軽く考えていたんだ。


「よしよし、これでレディーに“ダブルパイパイのリーダー”を本当に安心して任せられるにゃ!」


「え? アタシがリーダーなの?」


「そうにゃ。なにを今更なこと言ってるにゃ」


 なんも聞いてないんですけど。


 ってか、これもウィルテにいいように使われてるだけじゃないの?


「善と決まれば急ぐにゃ! ゴイソン、ウィルテは旅に出るにゃ! 準備にゃ!」

 

「「「は! ただちに!」」」


 自分で旅支度するのかと思えば、ゴイソンさんたちに一任するらしい。


「それでレディー。リーダーにお願いがあるにゃ」


「ん? お願い?」


「うん!」


「なに?」


「実はぁ……」


「実は?」


「お金貸して欲しいのにゃ!」


「……は?」

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