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071 黒き鴉は両刀の夢を見るか①

まさか1話で完結しないとは…続き物になります。まことに申し訳ございません。

 レンジャーチーム……“レイヴンツヴァイ”。


 それはイークルギルド最強と謳われており、“猛虎”と呼ばれる凄腕剣士こと、リュウベイ・タロマサがリーダーである2名タッグのチームである。


 そして、いま、“レイヴンツヴァイ”はかつてない危機を迎えていた。


 リュウベイは新たな愛刀“ゴマサバ”を両手に握り締め、漆黒の闇の如き異形の魔物を次から次へと斬り伏せる。


「有象無象が! いかに卑怯に攻めてこようとも、拙者の天武不動流に死角はない!」


 血振りし、リュウベイは自身の漆黒のマントの端をビーッと歯で引き裂いた。そして、その布切れを使い、利き手と柄をグルグルに巻いて固定した。


 敵の数は多い。


 アメーバーのような不気味な敵だ。


 かなりの数を倒したはずなのに、さっきよりも増えている気がする。


(……さすがの拙者もここで死ぬやも知れぬ。しかし、ただではやられんぞ。1匹でも多く彼奴らを叩き斬り、地獄へ道連れにしてくれるッ)


 リュウベイは口角をクイッと上げる。


 剣士にとって死は恐怖ではない。強敵と戦い果てる……これこそ、最高の誉れではないか。


 ましてやリュウベイほどの男であれば、それをいつでも受け入れる覚悟はできていた。


「……参る」


 ユラリと歩を進めようとしていたリュウベイの背に、ドシンッと何かが当たる気配があった。

 

 一瞬、敵からの攻撃を受けたのかと思った。

 

 しかし、神経を研ぎ澄ませたリュウベイの背後を取るなど、ベヒーモスですら難しいはずだ。

 

 では、一体、誰が……


「リュウベイ。らしくないな。私が来たからにはもう大丈夫だ」


 リュウベイは思わず目を見開き、驚くように振り返る。


 それは光に照らされ、キラキラと輝く水面を思わせるかの長髪。


 女性受けするであろう、端正な細面に切れ長の目。


 やや脚が長めだが、全体的にバランスの取れたスラリとした長身。


 それはまるで、お伽噺の中から飛び出してきたような、秀麗なる剣士であった。


 だが、決して姿形だけが整っているのではない。その実力のほどは、他ならぬリュウベイ自身がよく知っていた。


「……フィーリー・ハイオン」


 あまりに神々しいその姿に見惚れ、思わずリュウベイがフルネームを漏らしてしまうと、フィーリーはフッと笑って髪を掻き上げた。


「私たち(・・)、“レイヴンツヴァイ”に敗北はない! 背中は私に任せろ! リュウベイ!!」


 頼もしい言葉と共に、フィーリーは剣を抜き放ち、リュウベイの背後の敵を斬り伏せていく。


 リュウベイは腹の底からマグマのように熱いものが漲ってくるのを感じた。


「応!! フィーリー、無様な姿を拙者に見せるなよ!!」


「お前もな!!」


 リュウベイは自分が死を覚悟したことを少し恥じた。


 そうだ。自分にはこんなにも頼もしい“パートナー”がいるではないか。


 自分が死ぬ可能性など、万にひとつ……いや、億にひとつもありえないのだと!!


 リュウベイは目の前の敵だけに集中する!!


「“レイヴンツヴァイ”! リュウベイ&フィーリーいざ参る!! 死にたいヤツからかかって来い!!」




 ──屍が折り積み重なっている中、2人の男だけの姿があった。


 満身創痍ではあった。しかし、戦いによるアドレナリンの大量放出による興奮が続いているせいなのか、痛みや疲労といったものはまったく感じず、目だけがランランと輝いていた。


「……やるな、ジュウベイ」


「……フン。お主こそな、フィーリー」


 2人は笑いながら徐々に近づいて行く。


 そして、向かい合った時に真剣な顔になった。

 

 リュウベイの瞳の奥にフィーリーが映り、フィーリーの瞳の奥にリュウベイが映る。


 そして、2人の唇は徐々に近づいて行き……




──




「おおおおおおんッ!!」


 リュウベイは寝床から勢いよく起き上がる。


 顔は真っ赤に紅潮し、さして気温が高いわけでもないのに汗だくだ。


「ま、またこの夢か……」


 リュウベイは、あのリビングアーマー戦の時に、フィーリーに屈辱的なお姫様抱っこ救出をされてから、このような悪夢に悩まされる日々が続いていた。


「む」


 下半身に違和感を覚え、リュウベイは恐る恐るめくって中を見る。


 しばらくの沈黙の後、そっと閉じ、リュウベイは手で顔を覆った。


「……拙者はどうしてしまったというのだ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] どうしちゃったんだよホントに!!
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