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067 その後のイークル

 オクルスが退いた後、それからイークルの町は慌ただしい日々が続いた。


 壊れた町を復旧するのに、冒険者ギルドも特別な臨時依頼を出して、レンジャーたちが一丸となって協力するって流れになった。


 アタシたちも当然なにか手伝いをするものと思っていたけれど、ローラさんが気を遣ってくれたのか、特に依頼は回ってこず、いつもの安宿でゆっくりと休養させてもらった。


 ちなみにウィルテの家へ行かないのは、毎回のように執事さんたちが世話を焼いてくれるのが煩わしかったから……ってのがある。


 ただ、後から町の偉い人の部下って人がやってきて、「町からは決して出ないように」……って言われたのが、まるで犯罪者みたいな気分になるけど。


 まあ、どのみち出るつもりなんてなかったから問題はないんだけどさ。あんま気分はよくないよね。



 そして、戦いが終わって3日後に町長の屋敷へ来るようにと言われた。


 指定された時間にアタシたちが向かうと、ローラさんとライザ、そして“マイザー・チーム”もちょうどやって来たナイスなタイミングだった。


「レディー。皆さん。改めて、妹を助けてくれた御礼を……」


「いや、いいって。もう一生分は言ってもらったよ」


 マイザーが、ローラさんが頭を深々と下げるのを止める。


 もう何十回とされてるから、逆にこっちが申し訳ない気持ちになる。


「ランザは平気?」


「は、はい……」


 アタシが話しかけると、ランザはビクッと肩を震わせて姉の背に隠れる。


「ランザ。あなた、命の恩人に対して……」


「アタシは大丈夫だから、ローラさん。

 身体は平気? 痛みとかはない?」


「え、ええ……。お医者様にも診てもらいました。異状もないと」


「そう。それはよかったね」


 ランザは俯いて、アタシと目を合わせようとはしない。


 なんだか懐かしい気がする。昔、アタシもこんなだったな。ここまで人見知りじゃなかったとは思うけど……。


 言葉には出さないけれど、彼女はきっと頭ん中では沢山のことを考えているに違いない。


「よう。レディー・ラマハイム」


 マイザーが片手を挙げて挨拶してくる。


 なんか改めて見ると、やっぱりチャラ男だなぁ。元聖騎士見習いには見えない。清廉なイメージはゼロだ。


「……なんか今、失礼なこと思わなかったか?」


「気のせいでしょ。……で、まだ怒ってる?」


 アタシがそう尋ねると、気まずそうにマイザーは頬をかく。


 オクルスをアタシがそのまま逃したのを、マイザーたちは快く思ってなかったからだ。


「リーダー」


「あれから話し合ったでしょ」


 シェイミーとトレーナさんが小声で言う。


「ああ。……いや、改めて考えて、あの時のレディーの判断は正しかったと思う」


 マイザーがたどたどしく言うと、大きな白熊…ダルハイドさんが無言で頷く。


「当たり前にゃ。レンジャーの基本原則は、“敵を倒す”ことじゃないにゃ。“生き残ること”にゃ」


 ウィルテがなんだか自慢気に言う。


「オクルスはまだ自身の持つスライムを強化する術を持っていたと思います。あのまま戦い続けていれば、仮にヤツを倒せたとして、間違いなくこちらにも犠牲者は出たことでしょう」


 そうフィーリーも擁護してくれる。


「ああ。もちろん分かってる。……でも、倒したかったって気持ちも本当なんだ。アイツがまた誰かを傷つけるのは俺には許せない」


「うん。次は必ず倒す。約束するよ」


 アタシが拳を突き出すと、照れくさそうにしながらもマイザーはコンと拳を当て返してくれた。


「皆さん、町長とギルドマスターがお待ちです。そろそろ行きましょう」

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