063 激しく同意する
「ヒーローは遅れてやってくる!! 待たせたな!! ピンチに颯爽と、マイザー・チーム推参ッッッ!!!」
誰だろう? 4人組のレンジャー? ギルドで見掛けたことがあるようないような…
「……なんとも醜い」
オクルスはシーッと歯の隙間から息を吐き出す。
「なにが醜いだ! テメェの方がよっぽどキメェだろうが!」
先頭に立つ赤い髪をした男性がショートソード2本をオクルスにと向ける。
「見なさい。趨勢はもはや決したのです。今頃、イークル冒険者ギルドのグリーンランク位が出てきたところで状況はなにひとつ変わることはない」
「テメェ…。魔物の癖に俺たちのことを…」
「情報も大事な商売道具です。相手の力を見極めた上、私は動いている。だからこそこれから先は無駄な足掻きです。無価値は私は最も軽蔑するものだ」
オクルスの目が紅く光る。
何だか怒っている様に見えるけど…
「ああ、ランザ! ランザ! しっかりして!」
彼らの後ろでは、ランザを泣きながら抱き起こしているローラさんの姿が見える。
彼らはローラさんとランザを、オクルスから隠すように立つ。
「ヒューマン2体、コボルト1匹、そして…トロル…いや、ハイ・トロルですか。混成種族によるパーティは確かに応用力は高い。ですが、私の敵とはなりえない」
オクルスは、さっきのように全身から触手を伸ばす。
「ヒッ! こ、コイツ…Sランクどころじゃない! たぶん、SSランク…いえ、SSSランク級の魔物よ!」
ウィルテより魔法使いっぽい、三角帽子の金髪の女の子が怯えたように言う。
「はぁ!? それって魔王クラスってこと!?」
犬耳をしたモフモフの女の子がギザギザの歯をあんぐりと開いて見せた。
「戦うのなら今更の話だわい。なんでもいい。もっと詳しく教えんか。形状からして石化蛇女の仲間かいな?」
大きい…なんか、白熊みたいだ。
「ううん。最上級粘液生物…だけど、たぶん突然変異個体だと思う。他種族のスライムを吸収して同化する…いま、50体くらい中に…うええッ、なにこれ! 混ざり合ってて気持ちワル!」
「……なんだと?」
オクルスが戸惑ったように目を細める。
「しっかりしろ、トレーナ。弱点はないのか?」
「…そ、そこまではまだ。レベルは…180ッ! 信じられない。HPは半減してるけど、8,250。MPは……えっと、色んなのが混じりあってて分かんないけど…だいぶ消耗はしてるハズ」
「は? 100超えの魔物なんて神話の話じゃねぇか! マジで本当に居たのかよ! よりによって、最悪の化け物じゃねぇか!」
「…“魔眼”のスキル? 工作隠蔽している私の情報を読み取った…?」
オクルスの全身が波打つようにして赤や黄に色が変わる。
「コイツ、麻痺、毒とか…爆発とか、色んなスライムの固有能力を全部持ってる! 蛇みたいな姿に擬態させてるけど、切り落としたりはダメ! それが合図になって強い能力発動させるから!」
「無価値な商談はもうお終いです!!!」
マズイ。オクルスが動き始め…
「ダブルパイパイの“狂犬”レディー!」
狂犬? あ、そういやアタシそんな風に影で呼ばれていたんだっけ。
「俺たちマイザー・チームは、ダブルパイパイにチームアップ! “トゥギャザー”申請する!!」
「は?」
「チーム連携のことだ! 申請されたら、『アグリーモア!』って答えろ! 早く!」
…そんなことする意味があるの?
「はやくせんかい! 来るぞ!」
白熊に怒られてしまう。
「あ、アグリーモア! ち、ちなみに意味は!」
「“激しく同意する”だ!!」




