061 ヒーローは遅れてやってくる!
スライムたちが次々と爆発する!
スライムの死骸に囲まれていたアタシたちは、四方八方からの爆風に包まれた!
目の前のが真っ白に、キーンという耳鳴りが止まない。
気付いた時には、ウィルテもフィーリーもその場に倒れていた。
「……スライムの中には、受けたダメージを内部に蓄積して自爆するボムという種類のものがおりましてね」
揺れる視界の中で、オクルスはニタニタと笑っている。声が近くなったり遠くなったりする。
「“異なるスライム同士の固有能力を付与・剥奪する”というのが私の特殊能力でして。いま“自爆”と“猛毒”…この2つを掛け合わせたものを、お客様たちに提供させて頂いたというわけです。魔法の連爆ほどには、見た目は美しくはありませんがね。シヒヒ…失礼」
オクルスの1つ目がアタシを見て細められる。
「……しかし、魔剣ユーデス。エアプレイスが秘匿し続け、かの剣魔帝が欲しがるのも頷けます。これは魔界の勢力すら変える力を持つ代物だと、身を持って痛感しましたよ」
なにを…言ってるの?
「爆発は即死する威力に調整しておりました。加えて、仮に万が一に生き残った時の為に猛毒。それにもかかわらず彼らは生き残り、そして、バンビーナ。貴女は立っておられる。これは魔剣ユーデスによる力でしょう」
そういえばアタシは立っている……クラクラするけど痛みは無い。
「……防御に蓄えていた魔力を殆ど使ってしまった。このまま意識を保てなくなる。逃げるんだ。レディー」
「ユーデス! でも逃げるなんて……」
離れていたランザは無事みたいだけれど、ウィルテもフィーリーも少なからずダメージを受けている。放っておいたら、きっと死んでしまう。
「逃げる? できますかね? 私の体内にはまだ先程の半分ほどのサクリフィシオが残っています。この街の戦力、そして瀕死の貴方たち……どう見積もっても充分に元が取れる。さすがに再度、【生贄の対価】を使うほどの魔力はありませんが……」
特殊能力って言ってたけれど、やっぱり代償として魔力が必要なんだ……
オクルスは強敵。
だけれども、無敵じゃない……
アタシはユーデスに小声で話しかける。
「アイツの身体にユーデスを突き刺せれば、魔力を奪うなりなんなりできる?」
「……元となる魔力がわかれば、抵抗さえされなきゃ吸収できる。ただ敵は多数の個体が集まった複合体だから」
「でもオクルスも魔物である以上、どこかに本体の核があるんだろ? そこを狙えば……」
「……無理だよ。僕は、もうすぐ意識を失う。レディーを守れない。だから今は逃げて」
「ユーデス!」
ユーデスは返事をしなくなった。全身を覆っていた魔力の流れが途絶えた気がする。そして気怠さや悪寒がアタシの身体を走る。
「魔力を失いましたか。そうなると、魔剣も単なる棒切れですね。諦めなさい。“死体”でも別に良かったのですが、せっかく生き残ったのですよ。これ以上、無意味な反抗を続けるよりも、素直に我々の仲間となった方が賢いですとも」
「誰がッ!」
身体は動く、けれど反応は鈍い。フィーリーの施術ももう効果を失いつつあるのかも知れない……
でも、アタシは何としてでもコイツからデモスソードの情報を……
「これから先は簡単なもの……」
「そう簡単には行かせるもんかよ!」
アタシの後ろから誰が叫び声を上げた。
「ヒーローは遅れてやってくる!! 待たせたな!! ピンチに颯爽と、“マイザー・チーム”推参ッッッ!!!」




