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053 お手々を繋いで

 光の爆風に、ローガン兄弟たちも巻き込まれる。


「「「「死ぬ! 死んでしまうぅッ!」」」」


「【フレイム・バリヤー】」


 突如として現れた焔の障壁が、その光の攻撃を受け止めた。


 身を寄せ合った兄弟たちが見たのは、自分を庇うかのように立ちはだかる、とても魔術師とは思えぬ格好をしたキャッティの少女だ。


「お前は…ウィルテ・ヴィルル!」


 ローガンは驚きに目を見開く。


 ランクは同等のブルー。ギルドでも有名人ではあるが、ローガンやリュウベイのように討伐任務を好んでするわけでもなく、金払いさえ良ければ船大工の護衛などといったつまらない仕事を請け負うような変わり者といったイメージしかなかった。


 ましてや魔術師というのは、そこそこレベルが高くとも単独での任務には向かず、前衛がいる前提……つまりパーティーを組んでいなければ、戦闘などもままならない。

 最近になってウィルテがパーティを組んだというのも、そういった背景があるからに違いないと誰もが思っていた。


「なぜ、そんなことが…お前に…」


 そして、ランクは同等だとしても、戦士と魔術師であれば、戦闘能力差には天と地ほどの差があるだろうとローガンは考えていたのだ。


 それがどうしたことか、ローガン兄弟が手も脚も出そうにない敵の攻撃を、か弱いはずの魔法使いが一身で受け止めているのである。


「井の中の蛙……なんとやらにゃ!」


 光の爆撃をすべて防ぎ切り、ウィルテはステッキをバトンのようにクルリと回す。


「自分の実力を把握できてないレンジャーなんて、ホントーにダサいヤツらにゃ! チーム名以上にダサーい! ダサダサァ〜!!」


 尖った犬歯を見せて、ウィルテは笑う。


「な、なんだと!!」


 怒る兄弟たちを、「プークスクス」などと声に出してウィルテは煽る。


 その間も、リビングアーマーの魔法攻撃を障壁を張って食い止めていた。


「邪魔にゃ。ザコはさっさと消える。ここから本当の戦いが始まるんにゃからね」


「本当の戦いだと!?」


「おのれぃッ!! 小娘が!!」


「言わせておけば! 貴様!!」


「待て。弟者たち…」


 怒りに額に青筋が立っていたが、それでもローガンは怒りを6秒を数えることで押し殺した。彼は長男であり、リーダーである。それぐらいのことは造作もない。


「いいだろう。ウィルテ。貴様の魔法が有用であることは分かったとも。それは認めよう。

 なれば、協力して倒すとしよう。敵の動きさえ止めてくれれば、一撃の重さであれば俺たち“クアトロアックス”以上のダメージソースは他にはないだろう。そこは任せてくれていい」


 ローガンがそう自信満々に言うのに、ウィルテは「はぁーん?」と心底イヤそうな顔を浮かべた。

 

(この俺が下手したてに出ているのに、なんだそのツラは!!)


「……いらねぇーにゃ」


「い、いらねぇ…いらねぇだと!? このローガン様を!?」


 押し殺したはずのローガンの怒りが爆発する!


 アンガーマネージメントの6秒なんて何の意味もなかった。沸騰したヤカンがすぐには冷めないように、ローガンの顔はみるみるうちに真っ赤になる。


「このクソアマァー!! この斧の錆にしてくれるぅッッ!!」


「「「あ、兄者!! れ、冷静に!」」」


「なにが冷静にだ!!! ここまでコケにされて冷静になれるかッッッ!!」


「はー。メンドクサ。ゴイソン。安全なところまでエスコートしてやるにゃ」


「かしこまりました。お嬢様」


「な、なんだ貴様らは!?」


 燕尾服を着た強面の集団が突如として現れ、兄弟たちを囲む。


「さ、安全な場所に行きましょう。避難誘導いたしますよ」


 入れ墨のスキンヘッドが肉食獣のような笑みを浮かべる。


「ふざけるな!! 俺たちはベテランレンジャーで……」


 ゴイソンに腕を掴まれ、ローガンはハッとする。


 それは全力で抵抗しようとしているのに、相手の腕はまるでビクともしないかったからだ。


 それは弟たちも同じだった。男たちに手を掴まれ、肩を押さえられ、振りほどこうと必死になるが、巨岩を相手にしているかのようにままならない。


「さあ、お手々を繋いで行きましょうか♡」


 ゴイソンが歩きだすと、ローガンは無理やり引きずられる。


「お、オゴゴゴッ! て、手が! 手が離れぬッ! な、なんだ、貴様ら! 一体何者なんだぁッ!!」


 捻り上げられているわけでもないのに、幼子のように手を繋がれているという羞恥に、ローガンたちは涙と鼻水で顔をグシャグシャにさせる。


「……まあ、元山賊ってヤツでしてね。今は丸くなってしまいましたが」


 ゴイソンがツルリとした自分の頭を撫でてみせる。


「はぁ?! 山賊がこんな…」


「まあ、これから我々よりもっと恐ろしい人が来ますからね。危ないからさっさと行くとしましょう。私たちも巻き添えはゴメンですから」


 ゴイソンたちはウィルテに向かって一礼すると、彼らと手を繋いだままその場を後にしたのであった。


 ウィルテは尻目にそれを見やると肩をすくめる。


「さあ、レディー。お出ましにゃ! こっちの準備は万端にゃよ〜!!」 

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