051 兄弟愛パワー
リビングアーマーに向かって、リュウベイとローガン兄弟が一直線に突き進んで行く！
体格差など彼らは気にしない。彼らの鍛え上げられたバトルセンスがあれば、小賢しい戦術などなくとも、真正面から状況を覆すことなど容易いことなのだ。
「図体がデカイということは……」
リビングアーマーが敵の気配を察知し、ナックルウォーク状態から身を起こす。そして、大きく拳を振りかぶった！
「それだけ動きも鈍いということ！」
振り下ろされた拳は石畳を叩き割ったが、リュウベイはサッと横に跳ねてかわし、さらにリビングアーマーの間合いに取り付く。
「フフン！ 大した攻撃じゃないな！ 様々な魔物に対処してきた俺たち兄弟の敵じゃない！」
ローガンがハンドサインを出すと、一列に並んで走っていた弟たちが左右に分かれる！
「離れていな！ リュウベイさん！ 巻き添えになっちまうぜ！」
「チッ！」
抜刀して今にも斬りかかろうとしていたリュウベイは、中空で身を翻し、アーケードの屋根に飛び乗る。
それからだいぶ遅れて、リビングアーマーの攻撃が空を叩いた。
「よし！ 動線が見えた！ 弟者共！ マッスル・クアトロ・ステップ・フォーメーション・セット・ゴー！！！」
ローガンはまるでゴリラのように、胸当てを両拳でガインガインと叩いて合図する！
「イエッサ！ 下兄者！ 俺を踏み台に！」
末っ子が斧を横に寝かせた状態で、上段に振りかぶる姿勢で屈むと、下兄者がその斧の上に飛び乗る！
「うおりゃぁッ！」
飛び乗った瞬間、末っ子が渾身の力を込めて下兄者を前に投げ飛ばす！！
「よし！ 中兄者！ 俺を踏み台に！」
下兄者が、さっきの末っ子と同じポーズを中空で取る！
「よし！ 行くぞ！」
中兄者が、末っ子の頭を蹴って飛び、下兄者の斧に飛び乗る！
「うおりゃぁッ！」
下兄者が、中兄者を投げ飛ばす！
「今じゃぁ！ ローガンの上兄者！ 俺を踏み台に！ 決めてくれいッ！！」
「素晴らしい！ 素晴らしいぞ！ 弟者共よ！！」
ローガンが落涙しつつ、もの凄い勢いで走って来て、倒れた末っ子の頭を蹴り、崩れつつある下兄者の頭を蹴り、そして中兄者の持つ斧へと飛び乗る！！
「これぞ、兄弟愛パワーじゃぁー！ うおおりゃぁッ！！！」
中兄者が、ローガンを懇親の力を込めて投げ飛ばす！！
「兄弟の力を合わせ、最高位までに飛び上がり全身全霊で振り下ろす！！ これぞ、我がクアトロアックスが奥義！！ 【ジャッジメント・ストーム・アターック】！！！！」
魔力が迸る大戦斧を構え、そのまま縦に大回転してローガンは突っ込んで行く！！
そして、リビングアーマーの胴鎧の最上部に重い一撃が当たり、これには堪らずに前のめりに崩れ落ちた！
先程のリビングアーマーが砕いた床畳よりも、遥かに深く大きな亀裂が周囲に走る！！
「クソ。あの馬鹿力め……。いきなり大技繰り出すヤツがあるか」
揺れて崩れる屋根から飛び移り、リュウベイはモウモウと立ち込める砂煙から顔を背ける。
「しかし、ローガンの奥義を喰らってはもう終わりか。せっかく出張ってきたというに、拙者の出番は……」
リュウベイは煙の中に気配を感じ目を細めた……。
