表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/141

049 憧れの勇者

 いよいよ町に、リビングアーマーが到達する。


 平和だった港町イークルは、かつてない脅威の襲来に、喧騒と恐怖に包まれていた。


「近くで見ると、やっぱデカイな……」


 広場から、アーケード越しに見える敵の姿を見て、マイザーは冷や汗を一筋流す。


 “マイザー・チーム”はついさっきまで、ギルドの緊急依頼に応じて人々の避難誘導に当たっていたのだ。


「自然発生する普通の魔物じゃないわ」


 マイザーと同じ種族であるヒューマンのウイッチがそう言う。


「ああ。わーってる。ここらへんの避難は完了した。後は被害を最小限に……」


「ちょっと、待ってよ。リーダー、まさかアイツとやり合う気じゃないよね?」


 犬人(コボルト)のシーフが目を白黒とさせた。


「そのまさかだよ。町の兵士じゃアレの相手は荷が勝ち過ぎるだろ。今こそ、俺たちレンジャーの出番じゃねぇか」


「勘弁してくれい。グリーンランクの仕事じゃないぞい。報酬倍でも割に合わん」


 半巨人トロルのファイターが鼻を鳴らして不快そうにする。


「トレーナ、シェイミ、ダルハイド…俺がレンジャーやってる理由は知ってるだろ?」


 マイザーに言われ、3人は顔を見合わせる。


「“勇者”になりたい…だよね」


 シェイミが少し呆れたように言うと、マイザーはニヤリと口の端を笑わせる。


「実力が伴ってねぇのは百も承知。だがな、ここで逃げ出したら…俺は俺を許せねぇ。だから、お前たちは逃げても……」


「逃げるわけないだろ。死ぬのはご免だけど、その直前までは付き合ってやるよ」


「ま、惚れた男がバカだったのは、ウチに見る目がなかったんだし。しゃあないよね」


「未だにヒューマンとコボルトが付き合う意味がワシにはわからんが……ま、ここで死なせちゃ寝覚めがわるいわい」


 トレーナがステッキを、シェイミがフライングディスクを、ダルハイドがツーハンデッドソードをそれぞれ構える。

 

 そんな仲間たちの友情を前に、マイザーは思わず涙腺が緩み、ズズッと鼻をすすった。


 そしてマイザーは自分の頬をパチンと叩き、2本のショートソードを抜き放つ。


「あの巨体に、正面から突っ込むのは無謀だ! 進行方向から逆に回り込み、屋根伝いに攻撃を仕掛ける! 攻撃は右足関節に一点集中! まず魔法と投擲、怯んだら俺とダルハイドが一撃かます! 第一目標としては、ヤツの動きを止める事!」


「はい!」「OK!」「応!」


「“マイザー・チーム”、推して参…」


「待ちな」


 マイザーが走りだそうとした瞬間、その肩を強く掴まれ、その場に押し止められる。


(!? な、なんだ? 俺を…片手で…)


 マイザーはにわかに信じられずに驚く。ダルハイドほどには力は強くはないが、それでも膂力にはそこそこ自信があったからだ。


「自殺志願なら他所でやれ。……拙者らの仕事の邪魔になる」


「なにを! ッ!?」


 怒鳴り返そうとしたマイザーは、肩を掴む男の顔を見て目を見開く。


 左目を覆う眼帯、そして乱雑に結った髷。無精髭だらけの痩身。それは異様な風体だった。

 鎧はおろか胸当ても付けずに、ただ着流しと羽織だけをまとっていて、腰に帯びているのは黒い刀が1本だけだ。


「あ、アンタは……“レイヴンツヴァイ”の“リュウベイ”!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ