041 仲直り
「……ッ! アタシは…」
目を開くと、見慣れない風景……
今にも崩れそうなボロボロの天井……
ここは……どこ?
……そうだ。思い出した。
依頼を受けて、この廃墟に来て……
「あ! 敵! 戦っている最中に……あれ?」
アタシたちはハイ・リッチーと戦っている……そう慌てて身構えたけれども、どこにも敵の姿は見えない。
でも、戦っていたのは間違いない。
なぜなら、ウィルテやフィーリィーが側で気絶していたからだ。
「いったい、何があったの……?」
起き上がって、すぐ目の前の床に刺さっていたユーデス。
答えてくれないんではないかと不安になりつつ、アタシはその柄にそっと触れる……
「ユーデス?」
「……やあ、レディー」
「ユーデス! よかった……もう、口をきいてくれないんじゃないかとばかり!」
「……ゴメン」
なんだか落ち込んでいる?
「……実は、波長が一致しなかったのは私のせいなんだ」
「え? それって……もしかしてトレントの時の暴走のこと?」
「ああ。君に原因があったわけじゃない。私が…君と合わせなかったんだ」
「……わざと?」
「……そう思われても仕方ない」
アタシは顔を上げて周囲を見る。
敵の気配はたぶんない。
「ハイ・リッチーは…」
「……私が倒した。君から掠め取った集めていた魔力を使ってね」
ユーデスの声は抑揚がない。
「……ありがとう」
「……え?」
「助けてくれたことへの御礼だよ」
「え? あ、いや……別に……」
「それにさ、アタシ、頭悪いからよく分からないんだけど……ずっと、ユーデスはアタシの事を心配してくれていたんだよね」
「……それは、うん」
「で、今もアタシたちを守ってくれた?」
「……守ったのかな。ただ感情のままに敵を倒しただけだよ」
「それでも、そのお陰でアタシは生きている」
アタシがそう言うと、ユーデスは何か言いかけて口ごもった。
剣だから表情は読めないけれど、たぶん戸惑っている感じだ。いつもの彼らしくない。
なんだかもどかしい。
でも、このままじゃ埒が明かないから……アタシから話を振るしかない。
「じゃさ、提案ね」
「提案?」
「そろそろ仲直りできない…かな?」
握手ってわけじゃないけど、私はユーデスの柄の部分を撫でる。
「……私だって仲直りしたい。けど」
「けど?」
「……僕は、君に……打ち明けていない秘密もある」
「それは今は言えないこと?」
「……」
「いつか話せる時が来たら話してくれる?」
「それはもちろん……」
「なら、いいよ。受け入れる」
「え?」
「前に聞いたよね。“私は仲間?”って」
「……ああ」
「最初は、アタシはユーデスのこと“強い武器”としか思ってなかった。…デモスソードを倒すための力だとね」
その言葉にユーデスが怒った気配はない。彼もそんなことには気づいていたんだろう。
「でも、今は違うよ。仲間以上に大切。アタシにとって欠かせない存在だ」
「レディー…」
そう。ユーデスが励ましてくれたり、側にいたからアタシは生きてここまでやって来れたんだ。
これが単なる武器だったなら……きっと今頃、アタシは野垂れ死にしている。
「ユーデスと一緒だからここまでこれたんだ。だから、これからも仲良くしてくれると助かる」
「……ありがとう。レディー。私は私の命の続く限り、君を守ると誓うよ」
「んー。それって結構、クサイ台詞だよ」
「そう? 愛の告白と取ってくれてもいいんだよ」
よかった。なんだかいつものユーデスらしくなってきた。
「! レディー! 後ろから気配が!」
「え?」
アタシは慌てて振り返る。
そこに居たのは……




