037 戦えない不利
「ッ! まとめてやられる! バラバラに!」
フィーリーがそう怒鳴って、アタシたちは慌てて左右に分かれるけれど、元々狭い通路だ。そんな広がれる場所なんて無い。
「【フレイム・ボール】!」
ウィルテが魔法で焔の球をハイ・リッチーへと撃ち出す!
「…【マジック・キャンセラー】」
「げ!」
ハイ・リッチーが何やら魔法を唱えると、焔の球が一瞬にして消える。
「な、なに!?」
「消失魔法にゃ! ウィルテの魔法を打ち消されたにゃ!!」
「【斜陽突】!」
フィーリィーが突き入れる!
確か、一瞬にして死角から連続して3回突き刺す技だ。
「【フロスト・ブリザード】」
ハイ・リッチーが手に持つ水晶を掲げると、劈くような吹雪が突如として吹き荒れる!
「ぐあッ!」「にゃ!」
攻撃を仕掛けていたフィーリーが吹き飛ばされ、魔法を唱えようとしていたウィルテにぶつかって倒れ込む。
「…く、クソッ!」
「ダメだ! レディーは戦ってはいけない!」
「で、でも!」
絶体絶命…そんな言葉がアタシの頭に浮かんだ。
「い、一度、逃げて体勢を立て直すにゃ!」
「逃すと思うのか…人間」
ハイ・リッチーがカラカラと低く笑う。
「貴様、まさか…」
「なに?」
「…いえ」
フィーリーが怪訝そうにして何かを口にしかけたけれど、すぐに口元を覆ってしまう。
「閉じろ」
アタシたちが出口に向かおうとした瞬間、その扉が閉められる!
「な!? 魔法か?」
いや、違う。扉の前に誰か居た…あれは……
「ランザ?」
見間違い?
ううん。そんなはずない。
アタシによく雰囲気が似た暗そうな女性。だから印象が強かったせいで覚えていた。
「扉を破るにゃ!」
「無理です! きっと魔法の障壁が張られ…」
そうこうしている間に、またさっきの吹雪の魔法が繰り出される!
寒い! 寒すぎる! まるで極寒の冷凍庫に放り込まれたみたい!
「手がかじかんで…」
アタシはつい手からユーデスを取り落としてしまった。
「こ、このままでは…」
「……レディー。魔剣、借りますよ!」
「え?」
フィーリが落ちたアタシの剣を取って…




