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035 息子の依頼

 神殿から戻って来たアタシは、ウィルテたちと酒場で合流することになっていた。


 きっと依頼人やギルド長との会話は済んだ頃合いだろうと思っていたら、ちょうどアタシが酒場に入った直後に、ウィルテたちも入ってきた。


「ナイスタイミング?」


「そうにゃね。そっちはどうだったにゃ?」


「なーんも。分からないって。ただ時間が経てば治るだろうってさ」


「暴走が?」


「あ。いや、そっちじゃなくて、調子がとかの話かな」


「え? 呪われてるって話だったんじゃにゃいのか?」


「違う違う。そんなことないから」


「……とりあえず席につきませんか? 立ち話もなんですし」

 

 確かに入口で突っ立っていたら邪魔だ。アタシたちは店員さんが案内してくれた席にと座る。


「それで依頼は? この前に酒場に会った人からだったの?」

 

 ウィルテは「そうにゃ」と頷くけれど、2人とも何だか浮かない顔だ。


「そんなに困難な仕事?」


 アタシがまたアタシで無くなってしまうような相手は困る。できれば戦闘はない方がいい。


「困難と言うよりも…うーんにゃ」


「…話が少し上手すぎるんですよ」


「上手い?」


 ウィルテが手を上げて注文をする。それに合わせて、アタシもフィーリーも飲み物だけ頼んだ。


「依頼内容はそこまで難しなさそうにゃ。廃屋に住まう魔物退治。ゴースト系にゃけど、話に聞いた感じだと屍鬼グールにゃ」


「グールってゾンビみたいな奴?」


「ええ。ゴースト系だと最弱の部類ですね。ウィルテは炎魔法の使い手ですし、まず苦戦はしないでしょう」


 歩く死体を燃やすのか…嫌なニオイしそう。


「給金は手付3,500E、本報酬で6,500E…計10,000Eにゃ」


 この額が高いのかどうかアタシにはいまいち解らない。困った顔をしてフィーリーを見やる。


「…そうですね。グール1体程度なら1,000Eでも破格でしょう。仮に他の追加注文が入っても、この額を上回ることはないかと」


「なら、なんか他に条件とかがついてんの?」


 ウィルテもフィーリーも首を横に振る。


 頼んでいた飲み物とお通しが来た。

 ふたりは麦酒だけど、アタシはアルコールが飲めないからココナッツみたいな味のする果汁だ。あんまり美味しいとは思わないんだけどね。


「…この金額なら船賃としては充分ですね」


「え? そうなの? でも確か10万はするって…」


「10万? どこまで行かれるつもりなんですか?」


 フィーリーが驚いて言うのに、ウィルテが舌を出す。


「…騙したの?」


「ニャハハ! ま、そんなことより今はこの依頼を受けるか否かの話にゃ!」


「…誤魔化すなよ」


「…まあ、とにかく。私は手っ取り早く稼ぐことができるなら多少のリスクは厭いません」


 ウィルテも賛同すると思いきや、何やら首をひねる。


「どうしたの? いつもならすぐに飛びつく話じゃないの?」


「そうにゃんだけど…依頼してきたのが…」


「町長の息子マルカトニー・レパトリですね」


 町長本人じゃなく? 息子が依頼人なの?


「あまり良い評判は聞きませんが…信用できない相手なんですか?」


 フィーリーが聞くのに、ウィルテはまた「うーん」と悩む。


「…別荘にしていた無人家屋に屍鬼グールが住み着いたから退治してくれ。話の筋としてはおかしくないにゃ。そういうこともあるにゃ」


「なら…」


「うーん。普通すぎるにゃ」


「普通すぎる?」


「金払いが良すぎる件は?」


「そこもおかしくはないにゃ。口止め料…もし、その別荘を売ることを考えるにゃら公にはしたくにゃい。額面的にも妥当とも思えるにゃ」


「なら…」


「ウィルテが気にかかってるのは、あまりにもあのドラ息子にしては普通すぎるってところにゃ」


 なに? 普通すぎるからおかしいって、息子ってそんなに常識外の存在なの?


「なら受けるの止めるの?」


「いえ、受けはしたんです」


「は? それならもう話は終わってるじゃん」


 アタシに聞かずにOKしたってのはなんか納得いかないけど…。


「…そうにゃ。怪しいニオイしてたんにゃけどなぁ」


 なんだ。自分の勘がハズレたからウィルテは首を傾げてたのか。


「ウィルテが乗り気じゃないなら、アタシとフィーリーでやるよ」


「エッ!? ち、違うにゃ! ウィルテもやるにゃ!」


「うん。受けたんだからやろうよ」


「…そうにゃね」

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