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120話 止まらない豚

 ゆっくり歩いて来るトンペチーノに、あのデモスソードの姿が重なる。


 倒れるダルハイドさんが、柱で潰されたおじいちゃんに…


 そのダルハイドさんに回復魔法をかけようとして指で弾き飛ばされるマイザーが、首を飛ばされた母さんに…


「う…うあああッ! マイザーを! よくも! よくもぉぉッ!!」


 ダメだよ。


 シェイミ……いや、あれは父さん? 


 勝てない。絶対に勝てない。


 殺されちゃう。


 逃げて。逃げなきゃダメだよ…。


「なんだぁ? このガキのおもちゃはブヒヒ?」


 投擲されたフリスビーを摘むようにキャッチして、“父さん”が払い飛ばされる…


「あ、あああ! みんな! みんなが!!」


 トレーナさんが半狂乱になって叫ぶ。


「ぜ、前衛が崩されたにゃ! 【フレイム・ボール・ネスティング】!」


「ンブゥ? いまぁなにかしてるのかぁ?」


 ウィルテの連続爆破魔法も、まるで何事もなかったかのように“デモスソード”は平然と歩いてこっちに来る。


 勘違いしていた。


 みんなといるから、きっと何とかなるって…


 だって、あのオクルスとだって何とか戦えてたじゃん……


 だって、変態だけど、あんなに強いエスドエムも今回はいるんだし…


 なんとかなるって……


 思って……


「…ディー! 聞いて! レディー!」


「あ…。ユーデス? アタシは…」


「しっかりして! 一撃でも喰らったらおしまいだ!」


 ユーデス。ずっとアタシに声をかけて…?


「トレーナ! 立つにゃ!」


「あ、あううっ! みんな…みんなを助けなきゃ…」


 ハイハイで前に進もうとするトレーナさんを、ウィルテがスカートを掴んで止める。


「行けばやられるだけにゃ! 魔法の連続で土煙を巻き起こして、敵の目をくらましつつ退避するにゃ!」


 喋りつつも、ウィルテは次から次へと魔法を使って足止めする。辺りは爆煙で覆われて、トンペチーノの姿も見えないくらいだ。


「そんな! マイザーたちは!?」


「助けている余裕はないにゃ! むしろ、ここでオークキングが大技でも使ったら、それこそ巻き添えになってしまうにゃ!」


「おいおい。相談事はもっと小声でやるもんだブヒヒィ」


 トンペチーノが大きく手を振るうと、大きな風が巻き起こって周囲の爆煙を一気に吹き払う。


「ぐっ…」


「おしまいよ…もう…ムリ…あんなのに勝てない…」


「手品はおしまいかぁ? 逃げたきゃ逃げるブヒヒ。そっちの方がもう少しは楽しめるぞ。食前の運動でイライラさせられた方が、より残虐に苦しめて喰ってやる気がするブヒヒィオゥッ!!」


 舌なめずりしてアタシたちを見るその目は、皿に乗った料理を見ているかのように感じられる。


「黙って突っ立つてるだけなら、そのまま丸齧りに…!?」


 トンペチーノの側頭に槍が刺さる!


「そこまでだ!」


 それはローストだった。ガニンガーたちを引き連れて、トンペチーノを囲む。


「遅れてすまなかった!」


 ローストはアタシの方を見て言う。


 よくみると、その中には怪我をしたレンジャーたちもいた。


「貴様の引き連れてきたオークどもは全部倒したぞ! 残るは貴様だけだ!」


「ほほう。そこそこやるみたいだな。でなければ、カロリーを消費してオレサマがここまでやって来た甲斐がないというものブヒヒヒ!」


 そう言って、トンペチーノは頭に刺さった槍を引き抜いて捨てる。




──




「レディーさんたちを助けなきゃ…」


「ぼうや、ダメよ」


 物陰に隠れていたギクが飛び出そうとしたのを、アイジャールが止める。


「でも! このままじゃ…」


「わたくしたちが出て行ってもかえって彼女たちの足手まといになってしまうわ」


 ギグは自分の腰のポーチをチラッと見やる。


「足手まといになんかなりません。僕には…」


「いいえ。“それ”を使っても勝てはしないわ」


 アイジャールにそう言われ、長い前髪に隠れたギグは眼を見開く。


「なんで…」


「……わたくしは占い師ですから。いえ、今はそんな話はいいですわ」


 アイジャールは首を横に振る。


「……いまは待つことよ」


「待っても…」


 状況は変わらないとギクは思った。


「いいえ。必ず風向きというものは変わるわ。……魔剣を持つ少女が世界に現れたのは偶然ではないのだから」


「アイジャール…さん?」


 ギグにアイジャールは優しく微笑む。


「利用するものは、なんでも利用するものよ。…それが例え悪魔だとしてもね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 序盤からは想像できない真面目展開に困惑しているんだ……普通に熱い展開なんだ
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