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103話 ガニ堂落

 坑道は薄暗く狭い。


 辛うじて道にはなっていたけれど、ガニンガーが侵入者を撃退するために作った罠だから基本的に移動するためのものじゃない。


「ウィルテ。本当にいたの?」


「間違いないにゃ」


 キャッティであるウィルテの眼は、そりゃアタシたちヒューマンよりはいいだろうけれど……


「こっちにゃ」


「え、もっと狭くなっていますよ」


「む、胸が詰まりそうですぅ」


「ツベコベ言うなにゃ! 先は広くなってるにゃ!」


 猫みたいに身体が柔らかいらしく、ウィルテはスルスル隙間を抜けて行く。


 アタシやギグくんは小柄だからいいけれど、リュションはかなり窮屈そうだ。


「あ! 人間!!」


「おい! プリリ! 後を付けられたのかよ!」

 

 狭い道を抜けた先にいたのは、ギグくんより少し大きな子供だった。


 なんか赤い髪が接着剤で固めたみたいに左右に大きく拡がっている。それは触手か何かに見える。


「ガニンガーの子供にゃ」


「は?」


 子供? ガニンガーの?


「え? でも全然違うじゃん。髪型はともかく、見た目はアタシたちみたいに…甲羅にも覆われてないし」


「戦闘態勢じゃないと、ガニンガーは普段は私たちとほぼ変わらない姿なんですぅ」


「戦闘態勢?」


「ガチチ! プリリ! 下がりなさい!」


 ガニンガーの子供たちの前に、アタシたちから遮るようにして大人の男が立つ。その人も特徴的な固まった髪型以外は、アタシたちと同じような人間の姿だ。


「あ!」


「ギチギチギチ! ガニィ!」


「へ、変身した!?」


 男が腕を上げると全身が甲殻に覆われて、アタシたちが戦ったガニンガーの姿になる!


「まさかこんなところまで人間が入り込むなんてガニィ!」


「なに寝ぼけたこと言っとるにゃ! そっちがウィルテたちをハメてこんなところに落としたんだうにゃ! さっさと出口を教えないと痛い目に見るぞ!」


 ウィルテが魔法を放つ構えを取る。


「す、すみませぇん! 私、戦闘苦手で、これでブッ叩くことしかできませーん!!」


「げ! なにその武器!?」


 リュションが取り出したのは鋲付きの棍棒だ。

 なんか変色した血みたいなのがベットリと付いてだいぶ年季が入ってるけれど、どっからそれ取り出したんだよ! どこにしまってあったんだよ!


 でもこんな狭いところで、いつ崩れるかもしれない場所で戦うだなんて…


「クソー! ガチチ! プリリ! ガニ堂落(どうらく)様を連れて逃げるガニィ!」


 あーもう! やっぱり襲い掛かってきた! 

 クソ! やるしか…


「やめい!!」


 今まさにぶつかり合おうとしたアタシたちに、鋭い一喝が突風のように叩きつけられる!


 ガニンガーとその子供たち、その後ろにあった大きな“影”がズルリと動く。


「お、大きい…」


 それはガニンガーだった。けれどサイズが半端ない。普通のガニンガーの縦横の幅は倍はあるかというくらいの大きさだ。

 狭い坑道内なんて若干前屈みになっているから、きっと身を起こしたらもっと大きいんだろう。


 その大きなガニンガーが大きな手を持ち上げて……


「みんな! 攻撃が来る!!」


「ゲェホゲホッ!!」


「……え?」


 その大きなガニンガーは苦しそうに咳き込む。持ち上げた手は口元を覆っていた。


「堂落様!」


「わぁーん!」「しっかりしてぇ!」


 前にいたガニンガーが慌てだし、子供たちがその大きなガニンガーの側に寄ってその大きな背中をさする。


「……し、失礼した。大声を出すのは久しぶりでな」

 

 うーん、どうやら戦う気はないらしい。


 アタシはウィルテと顔を見合わせて、言葉を交わさずとも同じ意見だったのか武器を下ろす。


「チャンスですぅ! 敵が弱っている今がビッグチャーンス! ガキ諸共コテンパンに殴り殺しましょうぅ!」


「なに怖いこと言ってんのアンタ! 少しは空気読めよ!」


 鼻息荒くリュションが棍棒を構えて特攻しようとするのを押え付ける。


「……アンタ、病気?」


「気安く堂落様に話しかけるな!」


「よい。ケガニンよ」


 怪我人?


「は! し、しかし…」


「見てわかるように、魔剣を持つ者にはワシらが束になったとしても敵いはすまい。無益な戦いじゃ」


「! アンタ、魔剣のことを…」


「長いこと生きているからな。見てわかるように、多少のことは知っとるもんよ」


 いや、わかんねぇよ。アンタが何歳かなんて、他種族の年齢なんてそう簡単にわかるか。


 とにかく、堂落というらしい、巨大なガニンガーはアタシとユーデスをジッと見やる。


「……アンタが親玉か? アンタがガニンガー大将軍なのか?」


「“元”大将軍じゃ。見てわかるように、いまや隠居した身の老いぼれよ」


「いや、見てわかんないんですけど…」


 なんか偉い人ってことしかわかんなかったし。


「見てわかるように肺を患っておってな…ゴッホゴッホ」


「いや、だからわかんないって…」


「もうおわかりかと思うが、ワシがガニンガーの元首領のガニ堂落よ。見てわかるように、この穴蔵で蟄居しとるんじゃ」


「だからわかんねーってんだろ! ちゃんと説明しろ!!」


「……いや、だいぶ説明してると思うにゃ」

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] リュションのダメっぷりがクセになります。
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