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102話 かまってちゃん

「イタタタ…」


「んにゃー」


 薄暗い中、身を起こす。


 ここはどこだっけ?


 そういえばガニンガーの根城ウルガ山って場所に来てて…


「そうだ! なんか爆発したんだ! みんな、大丈夫か!?」


 耳がキーンとしている。


 ああ、ガニンガーのなんかしらの罠に引っかかったんだ!


「防御したから怪我はないと思う。道の下にあった坑道に落ちたみたいだけど…」


「ユーデス!」


 そっか。アタシらが落石であたふたしている時に守ってくれたんだ。


「あ。レディー。たぶん、どいた方が…」


「え?」


「んにゃ! いつまで上に乗っ取るにゃ! レディー!」


「うわあっ!」


 床が盛り上がって、アタシはその場に尻もちをつく。


「にゃー。ひどい目に遭ったにゃ〜」


「ご、ゴメン」


 どうやらウィルテの上に乗っかっていたみたいだ。


「えっと他のみんなは…」


「マイザーたちは上にゃね」


「空は…見えてるね」


 呼びかけてみるけれど、マイザーたちからの返答はない。


「先に進んじゃったのかな?」


「ウィルテたちはしばらく気絶していたみたいにゃしね。この坑道に入る別のルートを探しに行った可能性が高いと思うにゃ」


 そうか。状況もわからず、そのまま降りてくるのも危険だったろうしね。


「しかし困ったにゃ。上から引き上げてもらうならともかく、自力じゃ登れそうにないにゃ」


 そこまで深いわけじゃないけど、取っ掛かりがなくて、ここから上には登っていけそうにない。

 爆発の際に崩れた瓦礫が踏み台になりそうだけど脆くて危なそうだ。


「…うーん」


「あ! まだ誰かいる!」


 アタシたちの後ろから声がした。


「小僧にゃ! 生きていたかにゃ!」


「は、はい。なんとか…」


 破片にまみれ、真っ白な状態のギグくんが瓦礫の下から抜け出てくる。


「怪我はない?」


「僕は大丈夫ですけど…この人が…」

 

 ギグくんが自分の後方を指差す。


 瓦礫の山から伸びた2本の素足…昔に観た古いサスペンスの水面から飛び出た脚を思わせる。


「こんなギャグみたいなこと本当に起きるのにゃ? タイツが破れて、パンツも丸見えにゃ」


 ギグくんが気まずそうにしているのはそういうわけか。


「そんなこと言ってる場合じゃないだろ。はやく助けないと窒息するよ」


 アタシとウィルテは片脚ずつ掴んで引っ張り出そうとする。


「イターイ! イタイですぅ!! やーめーてー!」


「こら! 暴れるな! ちょっとは我慢しろよ!」


「ムリですぅ!! 鼻が擦れますぅ! 胸が支えてますぅ!」


「無駄にデカい乳してるのが悪いにゃ!」


 ユーデス。ここはガタガタと興奮する場面じゃないから。


「ウィルテ! せーので一気にいこう!」


「よし! わかったにゃ!」


「え!? いや、絶対無理…」


 スボッ! と、本当にそんな音がした感じで上半身が抜ける。


「うあ!」


 キグくんが自分の眼を覆う。


「ひゃあぁ! 酷いぃ! 痛いぃ! ヒリヒリしますーぅ!」


 全身擦り傷だらけ。しかも思いっきり引っ張ったせいで、肩紐がほどけて乳丸出しだ。


 しかしやはりデカい。


 チッ。なに食ったらこんなになるんだ?


「僧侶なら自分で治すにゃ」


「まあ無事でなにより」


「無事じゃないですぅ!」


「リュションを含めてアタシら4人だけみたいね」


「わ、私は足手まといで…道案内役なのに…その役割すらまっとうできずに…」


 自分を癒やしながら、リュションはブツブツ言っている。


「はやく脱出してマイザーたちと合流しなきゃマズイにゃ」


「僕たち分断されたってこと…ですよね?」


「そうだね。ガニンガーたちはアタシらが来ていること知っていたってことだろうし…」


「わー! ご、ゴメンナサイィィィ!!」


 リュションがいきなり土下座をする。


「な、なに? 急に…」


「私のせいですぅ! ダブルパイパイ様に期待され、案内兼監視として送り出されたというのにぃ! こんなツマラナイ罠に引っ掛かってしまうだなんてぇ!!」


「ご、号泣だ…」


「あ、あの、早く上着直して…下さい」


 リュションはワンワン泣いているが、そんなことより乳丸出しなのなんとかしてよ。

 

 ユーデスがさっきからカチャカチャしてるんでうるさくて仕方ない。


「わ、私なんてダブルパイパイ様の言う通り見せかけだけの乳しか取り柄ないんで生まれてこなかった方がよかったんですぅ!

 回復魔法使えるったって全員回復させるような範囲系はもってませんしぃ、私だけ唯一のブルーとどまりですしぃ……

 へへへ、もうダメですぅ! やっちゃいましたぁ〜! やっちまいましたよぉ! 私! ここで責任取って無駄飯食らってきた命を散らしますぅ!

 どうか皆さん、この無能女はここに置き去りにして、餓死という道を選ばせて下さいませぇぇぇぇ!」


「お、おかしいでしょ! なに言ってんのアンタ!」


「リュションさん、落ち着いて! ……と、とりあえず、胸は隠して下さい!」


 気遣いできるショタは肩紐を結んであげる。

 

 しかし、このリュションって娘。ネガティブっていうか、被害妄想の塊みたいなことを言い出してるんですけど。


「……道案内っていうか、ただ厄介払いされて、押し付けられただけじゃないにゃ?」


「こ、こら! ウィルテ!」


「わーーーーん!!」


 あ、泣いちゃった。


 ……いや、さっきから泣いてたのは知ってるんだけど。

 

 あのさ。なんか泣きながらチラチラこっち見てんだよね。


 気づかれないとでも思ってるのかな?


「……あのぅ」


「ん?」


「……そろそろ慰めの言葉があってもいいのかなぁと」


「……」


 なにこの人?


 どういうメンタルしてるの?


 もしかして、すっげーメンドウクサイ人?


「にゃ! 人にゃ!」


「え?」


 ウィルテが何かに気付いて耳を震わせる。


 でもこんなところにアタシら以外が…


「チェッ。もっと私に構えよ…」


「え?」


「はい? なんでもないですぅ! さ、人がいるなら脱出する方法もあるはずですよねぇ! 行きましょうぅ!」


 おい。アンタ、ここで餓死するんじゃなかったのかよ……

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