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101話 コスプレ僧侶

 エスドエムとの無駄な争いをした挙げ句、アタシらはガニンガーの拠点があるウルガ山を目指す。


「クソッ。あのカツラ野郎…存在自体がふざけてるのに、滅茶苦茶強い。ムカつく!」


「しこたま殴られた…。薬草こんなのに使うハメになるなんて」


 パープルバッジだというのは嘘とかではなく、アタシらは返り討ちにあってコテンパンにされたのだ。


 シェイミはポーチの中を見てため息をつく。


「あの町の防衛を一手に引き受けている男じゃ。実力は高い」


「ギルドが町を守っているわけ? 随分と信頼されてるのね」


 トレーナさんが天を仰ぐ。


 確かに防衛を任せていいような人間にはアタシにも見えなかった。


「うむ。イークルとは違い、領主は軍を持っておらん。冒険者ギルドに防衛費を払って委託しておる」


「委託…あの無法者みたいな連中が防衛しているって不安しかないんだけど。

 ってか、ダルハイドさんはやけにあの町やエスドエムのこと知っているみたいだけど…」


「昔、ワシがあの男に命を助けられたことがあってな。まあ、向こうは忘れとるだろう。数ある任務のうちのひとつだったろうしな」


「なあ! ダルハイド! それでも俺は納得してねぇぜ!」


「なにがだ?」


「弟の船長だよ! あんなに似てたんだから、前もって教えてくれてもいいだろ!」


 マイザーが詰め寄るのに、ダルハイドさんはポリッと頬をかく。


「ヒューマンは区別が付きにくい。確信がなかったんじゃ」


「確信って…瓜二つだったにゃ」


「ワシの眼には、エスドエムとは体格の差ぐらいしかわからん」


 ダルハイドさんはなぜかアタシを見やって言う。


「…ん? 待って。それって、アタシの顔はエスドエムやエムドエズと同じように見えるってこと?」


 無言で頷くダルハイドさん。


「ふざけ…ッ!」


「落ち着いてレディーさん! ぼ、暴力はいけません!」


 ギグくんがアタシを引っ張り押さえる。


「ダブルパイパイ様と似ているなどと…」


 アタシらの一番後ろからついてくる僧侶の少女がボソボソなにか言っている。


「ちょっと、アンタ、道案内役なら先頭歩きなよ」


「ひゃ、ひゃい!!」


 シェイミが冷たく言うと、少女はワタワタと慌てたようにアタシの前に出た。


「えっと、名前…まだ聞いてなかったよね?」


「リュション・アウタルで…す」


 エスドエムのインパクトにやられてしまっていたけれど、この娘もかなり…


「…大きいな」


 うん。マイザーの言う通り、巨乳を通り越して男性向け成人誌に出てくるボディだ。


「あ゛?」


「あ! ち、違うんだ! シェイミ!」


 しかし、マイザー。本当にアンタはダメ男だよ。


「そんな男に媚びる格好は趣味かにゃ? 清楚系シスターじゃなくて淫乱シスターにゃ」


 ウィルテがジト目で言う。


 リュションは僧侶の服装なんだけれど、なんていうか全身タイツみたいでピッチピチの上、胸元と太腿のスリットがガッツリあいている。

 僧侶というより、風俗店でコスプレをしている人みたいだ。


「…こ、これがコルダール正装なんですぅ! そ、それにビキニアーマ着ている人たちに淫乱だなんて言われたくは…」


 リュションは、アタシとウィルテを見やって言う。


 そういやアタシたちはビキニアーマーにマントじゃん。好きでこんな服着ているわけじゃないけど!


「へへへ…。確かに眼福だなぁ♡」


「あ゛?」


「サイテー」


「い、いや、違うんだ!」


 鼻の下を伸ばすマイザーに、シェイミが鬼の様な形相を浮かべる。トレーナさんは救いようがないと肩をすくめた。


 本当にこの男、バカなんじゃない?


「緊張感がなさすぎじゃ。敵地じゃぞ」


「そうですよ」


 この中で常識人のダルハイドさんとギグくんが嗜める。


「こうしている間にもいつ敵が…」


「ガニガニガニ!」


「え!?」


 チュドーン!!


「ら、落石だぁ!!」


 山が爆発したんですけど!?

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