100話 あ゛?
冒険者ギルド、コルダール支部。
柄の悪い連中が集まっている。全員レンジャーらしい。
…ってか、なんでここのレンジャーってモヒカンばっかなの?
なんで揃いも揃って、顔にメイクして、舌出して、トゲトゲのジャケットなの?
その肩のトゲパッドどんな意味があってつけてるの?
そして、武器がバットみたいなのに有刺鉄線巻いた即席っぽいのなのはどうして?
「「あ゛ーん?」」
加えて、なんでガムクチャクチャさせて血走った眼でアタシらを睨んでるの?
「我輩こそが、コルダール冒険者ギルドの長! エスドエムであーーるッッ!」
壇上に立ったエスドエムが言うけど、それは前に聞いたから。
「「あ゛ーん?」」
って、モヒカンどもは、どうしてエスドエムじゃなくて、アタシらを見てんの? どう見ても、あっちの方が異様でしょうが。
「者共!! そう新入りをイジメてやるな!!」
「「あ゛ーん」」
新入り?
って、返事も「あ゛ーん」なんかい!
「なんとなく察しての通り、我輩らの愛する時計灯台の町は、ガニンガーどもに襲来されて、メチャンコヤバイことになっておーる!」
「「あ゛ーん」」
メチャンコって普通使うか?
「しかし、なんでガニンガーに襲われ…」
「そんなこと知るか! 黙っていろ! いま我輩が喋ってるでしょうが!!」
「「あ゛ーん」」
マイザーの問いは、エスドエムとモヒカンたちによって掻き消される。
「本来ならば貴様らの格を推し量り、セルヴァンへ行くかどうか判断する試験を行うはずであったが、それもこの状況じゃどうにもこうにもなんともならーんッッッ!!」
「「あ゛ーん」」
「ちょっと待てよ! 試験って…」
「いまからそれを説明するんだろうが! 黙っていろ! いま我輩が喋ってるでしょうが!!」
「「あ゛ーん」」
アタシの問いも、エスドエムとモヒカンたちによって掻き消される。
「まあそこで、このガニンガー鎮圧…なんかこの町の隣のウルガ山を拠点にしてるみたいなんで、貴様らちょっくら行って敵のボスであるガニンガー大将軍とやらをブッ倒して来るってのを貴様らの試験とするッッッ!!! つまり、初めてのお使いだッッッ!!!」
「「ゲヒャヒャ! そりゃいいぜ! ルーキー!!」」
そこは「あ゛ーん」じゃないのかい!
「ちなみにここにいて笑っているレンジャーたちは皆がレッドだ!!」
「な、なんだって!?」
見た目はどこぞの世紀末的なザコキャラなのに……
「このリヴァンティズを舐めぬことだ! 田舎者ども! 道案内と監視役として1名を貴様らにつけてやる! 泣いて喜んで感謝しろ!」
エスドエムが横にズレると、その巨体の後ろから女性が出てくる。
恰好は僧侶っぽい。
「あ、あの! よ、よろしくお願…」
でも胸が規格外に大き……
「挨拶なんて後だ! いま我輩が喋ってるでしょうが!!」
「「あ゛ーん」」
おかしいだろが!!
「“ダブルパイパイ”様…申し訳…」
「謝罪なんて後だ! いま我輩が喋ってるでしょうが!!」
「「あ゛ーん」」
「おーい! いい加減にしろ! それに“ダブルパイパイ”はアタシらのチーム名だ!」
「なにぃ!? それは我輩の二つ名だ!!」
「なんでやねん! アンタ、パイは1つなんだから“シングルパイパイ”だろ!」
「そうにゃ! ウィルテと、レディーで“ダブルパイパイ”にゃ!」
「ウチらを入れると“クアトロパイパイ”だけどな」
「え!?」
「黙れ黙れッ! パイそもそも双丘なんだからダブルだろうが!! それに我輩のパイの質量は貴様ら4人を凌駕しとるわ!! 故に我輩こそが真の“ダブルパイパイ”であーーるッッッ!!!」
「「あ゛ー…」」
「「「「あ゛?」」」」




