13、話し合い
クロード神父を追い返してしまったことで、とうとう両親に呼び出されてしまった。
「妙な男を連れ込んでいるというのは、本当か?」
何かの冗談だろう、といった様子で父は私に尋ねた。久しぶりに顔を合わせた父はひどく疲れた顔をしており、これから言うことが憚られた。
「答えなさい、ミシェル」
「本当です、お父様」
違う、という言葉を想像していただろう父は、狼狽えた態度で自分の娘を見つめた。父が動揺するのも無理はない。
私はこれまで、異性関係で問題を起こすような非常識な人間ではなかった。それが素性も知らぬ男を屋敷へ連れ込むなど……到底信じられないだろうし、何かの間違いだと言って欲しいに違いない。
「いったいどういうことなんだ、ミシェル」
問いただす父の顔を見ながら、私は落ち着いた面持ちで事情を説明した。
「街で男に絡まれていた所を、偶然彼に助けていただいたんです。そのお礼として、私の家でもてなしていただけです」
「そんな嘘が通じるものですか」
口を出したのは、父の隣に座っていた義母だった。マーガレットと同じ美しい女性だが、その顔立ちはあまり娘とは似ていない。
「マーガレットから聞きましたよ。その男は恩を理由に、あなたの家に図々しく居座っているそうじゃないの」
まあ、あながち間違いとも言えない。
「それに、あなたは使用人たちにもわざわざ口止めさせていたようね。どうしてそんなことをする必要があったの?」
「お義母様たちに知られてしまえば、反対なさると思ったからです」
「当然です。素性もわからぬ男を、この敷地内に入れるわけにはいきませんもの」
「だから黙っていたのです」
義母の眉間に皺が寄った。
「あなたはいつもそうね。どんなに私があなたを叱っても、涙一つこぼさず、淡々としている。まるで人形を相手にしているみたいだわ」
「やめなさい」
父の咎めるような声に、義母は渋々といった様子で口を閉じた。コホンと咳払いをした父は、固い声で私に言った。
「とにかくミシェル。おまえはしばらくこの家にいなさい」
「……レドはどうなるのですか」
「しばらくの間はいてもらっても構わない。だが、いずれは出て行ってもらう」
「いいえ、あなた。すぐに出て行ってもらうべきですわ」
そうでしょう、と義母は後ろにいた人物を振り返った。見慣れた顔が、そこにはいた。
「クロード神父」
どうしてここに、と聞くのは今更な気がした。この神父が簡単にレドを諦めるはずがない。
「ねえ、クロード神父。あなたもその男を追い出すべきだとは思いませんか?」
「ええ、奥様。私もそうした方がよろしいと思います」
神父はずいっと前へ一歩踏み出た。
「あの男は危険です。一緒にいるお嬢さんにも、きっと災難が降りかかることでしょう」
まあ、怖いわと義母は自身の腕を抱きしめた。そして汚らわしいと言わんばかりの目で私を見る。
「あなたのようなお強い人ですら、恐怖を覚えるくらいですもの。きっととんでもない男なんでしょうね」
とんでもない男。神父は悪魔に関しては、両親に伝えていないように思えた。もし伝えていたら、義母の怒りは、こんな穏やかなものではすまなかったはずだから。
「やはり今すぐにでも出て行ってもらうべきですわ」
「私にすべてを任せてもらえれば、万事上手くいきます」
「ええ。どうぞよろしくお願いします」
意気投合した義母と神父は、レドを追い出す方向で話を進めていく。父も、そうした方が良いかもしれないという表情を浮かべ始めていた。
「あの、」
三人の視線が、私に向けられる。
「少し、クロード神父と話をさせてもらってもよろしいでしょうか」




