プロローグ〜空から落ちてきた〜
はじめまして、黝簾@ココア好きと申します。拙い文章ではありますが、ぜひ読んでください
別世界で彼女は魔法使いだった。
プロローグ
「ふーふふーふーん…にしてもあちぃ…」
いつも無邪気に遊んでいる子供たちも外には出ないような暑さ。野良猫も日陰で伸びている。
「流石に長袖のやつはいないよな…こんな暑い日に長袖着てるやつは頭おかしい…」
ボソボソと独り言を呟く。いや、これはいつもの癖だ。気にしないでくれ。
俺はそんな中、鼻歌を歌いながら我が家へ向かっていた。
特別な理由はない、ただ普通に鼻歌を歌いたかっただけだ。
「家に帰ったらコーラでも飲むか。いや、買ってきたお茶でもいいな。」
…自己紹介が遅れたな。俺は新月岳だ。「しんげつ」ではない、「にいづき」だ。近くの大学に通う普通の大学3年生だ。昔は実家に住んでいたが大学の近くに引っ越してきて今は一人暮らしをしている。
平日は大学に行っているが休日はもっぱら家に引きこもっている。休日にこうやって家を出るのはものすごく久しぶりだ。
俺は今、彼女に頼まれたお茶とお菓子を買って、家に帰る途中だ。熱中症で倒れる前に帰らなければ…
おっと、彼女の話をしてなかったな。
こんな俺だが一応彼女はいる。同じ大学で同じ学部の仲間だ。名前は「満月桜」これまた「まんげつ」ではなく「みづき」と読む。髪は産まれながらの茶髪で、長い髪を後ろでまとめている。鼻がずっと高く、目もパッチリとしていて、所謂美人だ。
桜とても明るくて、人柄も良い。そんなところに俺は惚れたのだ。
俺の惚気話はまぁあとにして、今は家に帰ろう。あぁ、暑い…
太陽がカンカンと照りつける中、俺は空になにか不思議な影がゆらゆらと浮かんでいるのが見えた。
「なんだありゃ、鳥か…?」
鳥にしては少し大きい。
俺は立ち止まってその影を見つめる。
しかし、次の瞬間、その影が地面に向かって落ちてきた。
「えぇ?!」
遠くて見えなかったがやはり鳥ではなく、なにかの塊のようだ。しかし、俺はその物体に更に驚いた。
その形か俺には人間に見えたからだ。
人間が空を飛ぶ?まさか、そんな夢みたいな話あるわけないだろう。
考えていると近くでドーンと少し大きめの音がして、俺は慌てて近寄る。
「ゲホッゲホッ…」
俺は愕然とした。
人が落ちてきたから、もあるが、それ以上に驚くことが起きた。
「いてててて…」
「えっ…あっ…」
オレンジ色のワンピースで白のフリルが胸元や裾に付いていて、魔法使いという言葉がしっくりくるような洋服を身に纏い、近くにはほうきが落ちている。髪は金髪で肩ぐらいのボブ。普段とは雰囲気が全然違うが、俺には誰が落ちてきたのかすぐに分かった。
「え?……!!」
その人も俺の存在に気づいたのか、俺とその人は目が合い、カチンと氷のように固まる。
暑い暑い夏の日。落ちてきた人物、それは
俺の彼女、桜だった。