第3話
「父さん!母さん!」
俺はあの大虐殺と言う名の防衛戦の後、すぐに両親の元へと駆け寄った。理由は言うまでもなくあの絶対的な強さについてだ。
「ちょっとコル! なんでここに来てるのよ!まだモンスターが残ってるかもしれないのよ!」
俺が母さんの元へ行くと、鬼が立っていた。戦闘力本物だから、結構まじで鬼か・・・・・・なんでもありません。
「まあまあ、シルファもそこらにしといて。コルが急いで来るのもわかるから。なぁコル、俺らの強さについてだろ」
ああ、流石父さん。息子の考えてることがわかってるじゃないか。
「うん、そうだよ! なんだよあの強さ!意味分かんねえよ!」
はは、やばいやばい、まじでなんなのあの強さ。俺の知ってる世界だとハイゴブリン一体を中堅冒険者三人パーティーでやっと互角くらいの設定だぞ、主人公は序盤で倒したけれど。
「口調が変わってるぞ、コル。はあ、今知られるのは本当はまずいんだが。まぁ、いずれ話すことになるしいいか。俺たちは昔後二人を入れた四人で冒険者稼業をしてたんだよ。まぁ後はいろいろあって俺とシルファの二人は冒険者を引退してこの村に引っ越して来たんだ」
まあここは最強系の親にありがちな設定だよな。でも、なんかこの話聞いたことある気がするけど、思い出せんな。ていうことは俺の両親はゲーム本編に関わっていたっていうことかな。
えっと、俺のゲームに関する記憶喪失はゲーム本編、メインストーリーはある一つのシナリオを除いて忘れているんだ。思い出せることを紙に書いたら、魔王を倒した後、ゲームクリア後のストーリーは全部思い出せた。
だが、メインストーリーの部分は魔王討伐後のヒロインが主人公をかばって死ぬ部分だけだった。
なんかこれだけだと誰かにヒロインを救えって命令されてる気がする。ていうかこの記憶喪失は意図的なものだと考えられる、っていうかそれしかない。はぁー、面倒な事に巻き込まれたな。楽しいからいいけど。
で、俺には絶対何かしらの役割が与えられている。それも魔王討伐に関わる何かで。だって、明らかに魔王討伐までのストーリー抜き取られてるもん。そんくらいしか、凡人のおれには考えられない。
まぁ、誰の思惑かはわからんが、俺はヒロインの死を変えられるならそれでいい。てか、おれ自身の目的はそれだし。
「・・・、おい!コル。急にどうしたんだ?」
不思議そうな表情で父さんが俺の顔を覗き込んだ。
おっと、長時間一人の世界に浸っていたようだな。ていうか顔近い近い、離れろって。
「いや、別に。それよりも話の続き聞かせて!」
今は考察よりも父さんらの話が先だな。
「ああ、俺らが冒険者だった時の話をしたよな。その冒険者だった時に神と対話する機会を得たことがあったんだよ」
・・・・・・まじで? どんな人生歩んでるんだよ、父さんは。
「それでな、その神様に言われたんだけど、この世界に何か起きるらしいんだ。まぁ、その内容は知らされてないんだが、その何かに備えるためにこの村に移住することを仰せつかったんだ。そして、俺たちの方もそろそろ冒険者稼業も潮時って考えていて、ちょうどいい時期だったからこの村に引っ越したんだよ。ソフィアとも結婚する予定だったし、平和な日常を過ごしたかったしな」
「へぇー、そんなことがあったんだね」
なんかゲームの世界特有のありがちな物語だけど、なんかこう、そそるものがあるな。
「そうか。えっと、俺らの話自体は終わったんだが、お前の方こそ言いたいことがあるんじゃないのか。この頃大人に隠れて何かしてただろ。身体能力も急に上昇してたし」
「うっ!」
バレてるし。うわ、えっとどう説明しようか。
「あー、あれは、聖夜の儀式でゴブリンを殺した後にこの世界は強いものが生き残るって気づいたからだよ。なんの抵抗のないゴブリンを殺して、申し訳ない気持ちと同時にこの世界の不条理? を理解して強くなろうって決めた。それだけだよ」
父さんは深く考えたそぶりをしたあと、顔を上げた。
「そうか、なんか小さな子供にこんなことを考えさせるってあの儀式も考えものだな。うん、よし!これからは俺たちが稽古をつけてやる。これでも俺ら冒険者時代は神様に会うぐらいには強かったからな。期待しとけよ」
「・・・・・・お手柔らかに」
いやー、この人らが稽古つけてくれるのは嬉しいんけど、俺の体、もつかな?
「もう、何男二人で話進めてるの。私も入れてちょうだいよ。私もその稽古、コルにつけるよ。強くなることに悪いことはないんだもん。まぁ、悪いことに使わないんならね」
ゾクッ!
「いやいや、しない! しないから!」
「うん、コルがしないのはわかってるわよ」
何、あの怖さ。なんか得体の知れない何かを見た気がするんだけど。
「こら、いじわるするなよ。まだそれは使っちゃいけないだろう」
ヘェー、まだってことは少ししたら使うって事なのかな。
「じゃあ帰るか。俺の索敵にはモンスターは居なさそうだし」
「・・・・・・ちなみに索敵のランクは?」
「・・・・・・秘密だ」
そうして、平和を取り戻した自分の村に帰っていくのだった。
一つの影を残して。