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俺の幼馴染は甲子園を目指す  作者: かのさん
高校二年生編
109/297

野球部の夏休み


「みづほは、今日は練習、休み?」

「ああ。亡くなった母親の法事があるんだって」


 新チーム――といっても、創部二年めの緑陵は引退者ゼロだが――が発足し、お盆休み直前に、みづほの父親が勤務先のイギリスから一時帰国した。

 わずか一週間ほどの、短い有給休暇だ。

 我が家に居候していたみづほも遠野の家に戻り、束の間の父娘水入らずの生活を送っている。

 以前話してたように、ひとつのベッドに寝てたりするのだろうか。


 とは言えども、親たちは中学高校以来の親友同士だったので、みづほ父娘は我が家に実質入り浸りだったし、スケジュールの都合上、一度きりだが家族総出で遊びに出掛けたりもした。

「秋山、ありがとな。うちのみづほが、何か迷惑かけてないか?」

「迷惑も何も――みづほちゃんはもう、うちの子だぜ。お前に返したくないなぁ」

「この野郎……みづほを渡してたまるかよっ」

 そう言いながら小突き合う親父たち。このふたり、ほんとに仲が良い。


「みづほちゃん、ほんとにいい子よ。手伝いもたくさんしてくれるし、助かってるわ――あ、そうそう、困ってる事と言えば、ひとつだけあるの」

 お袋は苦笑しながら、みづほがしょっちゅう裸で居間を走り回ってることを話した。

「お母さん、そんなに何度もしてないわよぅ……あれは、お風呂に入って着替えを忘れただけで、好きで走ってるわけじゃ……」

 真っ赤になって弁明するみづほ。


「みづほ、そうなのか?」

「んーと……その……」

 父親の突っ込みに、みづほがますます真っ赤になって小さくなる。

「そうか――血は争えないな。雅美が結構な裸族だったんだよ」

 なんでも、みづほの母親は実家の躾が厳しかったらしく、その反動でかなりの時間を裸で過ごしてたそうだ。

「俺と結婚して解放された、ってよく言ってたな……それにあの頃は若かったから、俺たち――」

 懐かしそうに話していた父親は、ハッと我に返り、慌てて付け加えた。

「今のは無し、今のは無し、な」


「へえ。雅美ちゃん、そうだったんだ……知らなかったな。愛する人だけに見せてた一面ね」

 お袋が穏やかに、しかし容赦なく話を続ける。

「うーん、うっかりしてたな。でもこの年頃の娘に『人ん家で裸でうろつき回るの、止めろ』て注意するの、明らかにおかしいだろ」

「はい……あの――以後、気をつけまふ……」

「まあ、みづほちゃんは、自宅にいるような気になってんだろ。それはそれで、俺たちにとっては嬉しいことさ」

 消えそうなほどに恐縮しているみづほに、親父が助け舟を出した。




 準決勝での激闘以来、都立目野とは急速に仲が良くなった。

 みづほの甲子園出場をあれほどプッシュしてくれたのだから、こうなったのも自然な流れだろう。

 夏休み中に練習試合が二回組まれたばかりでなく、目野の一部メンバーが緑陵グラウンドにやって来て、合同練習なんてのも行うほどになった。


「今日の練習、楽しみにしてたぜ」

 合同練習の日。なんと村田さんや若林さんら、引退した筈の三年生が、多数参加して来た。

「先輩たち、ぜひ遠野と一緒に野球がしたいんだってさ」

 新主将となった井上が、苦笑しながら話してくれた。


「引退したら、もう敵も味方もないからな。今日は純粋に野球を楽しみに来たよ」

 村田さんが豪快に笑えば、若林さんもにこやかに話し掛ける。

「俺たちみんな、遠野さんの大ファンなんだ。遠野さんよりパワーやスピードがある選手はたくさん居るけど……プレーの美しさは、誰もかなわない。世界一美しいセカンドだと、俺は思うよ」

 それについては、一も二もなく同意したいと思った。


 というわけで、練習の始まりから終わりまで、みづほは引っ張りだこになった。

 かなり戸惑い、少々照れながらみづほは、しかしプレーの際には見違えるような動きを見せ、合い間に短い解説を入れながら練習を続けた。


 最後はグーパーでチーム分けをして、ノーサインで試合をした――のだが、思わぬ展開となった。

 みづほの打順になって、みづほと同じチームだった筈の村田さんが、マウンドに上がって来たのだ。

「頼む、井上! 俺に投げさせてくれ」

「村田さん、そりゃねえよ。俺だって遠野と対戦したいのに」

 村田さんにとっては、最後の試合でホームランとサヨナラヒットを打たれた相手。

 このままで終わらせたくない気持ちは分かるが……マウンドの井上としばらく揉み合いが続いた。


「じゃあ……あたし二回続けて打つから。その間に村田さん、肩作って下さい」

 額に青線を入れながら、みづほが二人を取り成す。

「そんなら――まあ、いいか」

「はは……グダグダだね」

「もう野球じゃねえな、こりゃ」


 ちなみに村田さんとみづほの対戦は、村田さんのツーシームをきれいにセンター前に弾き返したが、センターの福富の超ファインプレーに阻まれた。

「おおっ、サンキュー!!」

 マウンドで雄叫びを上げる村田さん。

「福富ーっ。余計な事すんじゃねえー」

 相手チームからはお約束の野次が飛んできた。


「村田さーん。いい冥途の土産になったなあー」

「うっせーよ! みんな、ありがとな!! ――ほんと、ありがとう……」

 村田さんが帽子を目深に被り直し、ゆっくりとマウンドから降りて行った。


「いやあ、すっげえ勉強になった。今日はどうもありがとう」

 合同練習が終わり、井上が満面の笑みで肩を叩いてきた。

「何言ってんだよ。こっちこそいろいろ目からウロコだったよ」

 目野の選手たちとの合同練習は、こちらが気づかされる事も多く、非常に実りのあるものだった。

 反面、互いに手の内を知り尽くしてしまったので、対戦する時には、それを承知の上での高度な駆け引きが必要になるだろう。


「目野の粘りと瞬発力ってさ、日頃の練習で裏打ちされてるって、よく分かったよ」

「――緑陵こそ、ひとりひとりが凄く考えて野球やってんのな。遠野だけじゃないって、よく分かった」

 しばらく無言のまま、俺と井上は見つめ合った。


「なあ。俺たちと当たるまで、負けるんじゃねえぞ」

「ああ。それはこっちの台詞だ」

 これからは、俺たちで時代を作ろう。

 同じ地区である以上、どちらかが勝ち、どちらかが敗ける。

 敵味方になり、一枚しかない甲子園の切符を争うことになったとしても、その直前までは、俺たちは互いを応援し合うだろう。


 井上の目つきからも、同じことを考えてるのが分かった。

 緑陵と目野の主将同士、俺たちは固い握手を交わした。




 夏休み中は、ほぼ毎日夕方まで練習とトレーニングに費やしてたので、夏の甲子園は録画やダイジェストで、それでも毎日観ていた。

 居間のソファ。俺の隣にはいつものように、みづほが座っている。

 みづほの父親は短い有給休暇を終えて再びロンドンへ旅立ち、みづほは秋山家に戻って来た。


 東東京代表、櫻田の帝山は優勝候補の筆頭だった。エースの宇田川さんをはじめ、チームとして完成されている。

 俺たちに勝った西東京代表の早田実業も、投手力では劣るものの、一年生の清田が超逸材として注目を浴びていた。


 もうひとり、甲子園に懐かしい顔があった。

 超強豪の大阪樟蔭を下して大阪代表となった、なんば高校の二年生エース、丘大樹だ。

「でかっ……丘くん、また背が伸びてない?」

 マガジンの甲子園特集号を見ると、190㎝と書いてある。

 丘は特待生のある、いわゆる名門校には行かず、地元の府立高校から甲子園に出た。

 母子家庭で離れ離れになることを良しとせず、親戚の串カツ屋でバイトしながら、野球道具一式の費用を稼いでるそうだ。

「泣かせるじゃねえか、丘のヤツ……」

「えらいなぁ――ていうか、そんなことまでマガジンに書いてあんの!?」


 丘の投げるボールだが、テレビの映像越しにも、その凄さが伝わってくる。

 9割以上ストレートの超豪速球で、バンバン空振りを獲っていく。

「丘くん、当たり前だけどシニアの時より凄くなってる――背が高いから、とんでもない角度でやって来るし、すっごい重そう……普通に打ったら、手が痺れるね」

 瞳をキラキラさせながら、みづほが丘の投球に釘付けになってた。


 俺はと言えば、もちろん試合を観てはいるのだが、みづほの恰好が気になってた。

 俺たちの試合観戦は、夕食も風呂も済ませ、後は寝るだけ、という時間帯。

 つまりみづほは今、風呂上がりのいい匂いをさせながら、ワンピースのパジャマを着ている。

 パジャマの下は、俺の知る限りではノーパンノーブラ……俺も男だからな。気にならないと言えば、嘘になる。


「みづほ、あのさ……」

「丘くん、全然球威落ちないねー、また三振――なあに?」

「その――俺も男だから、さ。みづほのそのカッコ、ちょっと刺激が強いんだけど……」

「えっ? これ、ただのパジャマだけど……ふうん」

 一瞬きょとんとしたみづほだったが、すぐに悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「ちーちゃん――ひょっとして、あたしの体に興味ある?」

 そう言うとみづほは、俺の腕を取って抱き寄せてきた。

「ちょっ、ちょっと、みづほ……」

「あたしは、さぁ。ちーちゃんの体に、興味あるよ?」

 甘い声で囁きながら俺に寄りかかって、胸板をペタペタと撫で回している。

「――みづほお前、何やってんだよっ」

 なんだ、何なんだ、この雰囲気は。


「だってさぁ。緑陵じゃ、パワーで言ったら野口くんと双璧じゃん、ちーちゃんは。おまけにスピードもあるし、その秘密、ぜひぜひ知りたいなぁ……」

 なんだ、やっぱ野球関連かよ。

 心の中で、思いっ切りずっこける。

「やっぱ、男子の体って興味あるよ……ね、ちーちゃん? 裸になって?」

「断る」

 みづほの性格上、他意はないのは分かってるが、あまりにダイレクトな表現にドキリとする。

「うー……じゃあさ。お互いさまで、あたしも脱ぐから」

「よせっ」

 野球のために大切なものをあっさり捨てるんぢゃない。


 このままじゃ収拾がつかないのは、火を見るより明らかだった。こんなとこでみづほにマッパになられたら、いろいろと終わってしまいそうな気がする。

「仕方ねぇな。じゃあ、上だけだぞ?」

 パジャマ代わりのTシャツを脱ぎ、みづほに体を委ねる。

「ほいっ」

「ありがと、ちーちゃん」

 みづほは満面の笑みで、俺の体を触り倒しながら、夢中で自分の筋肉と比べている。


 パジャマいっちょで、胸を触ったり、腰を撫で回してるみづほの姿は、俺にとっては充分刺激的で、正直甲子園の観戦どころじゃなくなっていた。

 気づくと丘はすでに完投勝利を挙げていて、次の試合に移っていた。


 夏の甲子園の結果だが、なんば高校は実質、丘のワンマンチームだった。勝負どころでタイムリーエラーが出て、ベスト16で敗退。

 俺たちに勝った西東京代表の早田実業は、大木さんと清田の連続アーチなど豪打が炸裂し、ベスト4進出。

 圧倒的なチーム力で勝ち進んだ東東京の帝山が、深紅の優勝旗を手にした。

 んー……なんか、裸ネタ多いですよねw

 R15にならないよう、気をつけまふ(恐縮)

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