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奴隷少女と大聖者  作者: 臥藤拙句
第1章
12/30

銀狼少女(1)

新キャラ登場回です。

前回の事後処理から2日後の話です。

銀狼少女



この世界の四季は1夜にして入れ替わるらしい。

昨日まで過ごしやすい気候だったのだが、夜が明けてみれば辺り一面銀世界に変わっていた。

気温も一気に落ち込み、吐く息も白く、素手だと痛いくらいだ。

この季節の変わり目に体調を崩す事が多いとエミリアは言っていたが、仕方ない事なのだろう。

この世界を作った神は随分とズボラなのだろう。


雪に覆われた街並みをアクアと並んで歩いているとそんな事を考えていた。

足りなくなってきた食材の買い出しにアクアが同行して来たのだが、いつもの服装で出歩こうとしたので以前買って置いたコートとマフラー、手袋をプレゼントしたのだが、腕に抱き付いて表情が完全にトロけているところを見ると気に入ってくれたようだ。


『にへへへ〜♪』

『アクアがコートとか気に入ってくれたみたいで嬉しいよ。』

『マスターからのプレゼントなら何でも嬉しいです♪』

それにとアクアは続ける。

『マスターにとっては私も人も変わらないのですね。』

『何のことだ?』

『マスター、私は精霊です。だから気温の変化なんて関係無いのにこうやってコートとかを用意して頂けるのが嬉しくて♪』

『あ〜。そうか、精霊にはいらなかったのか?まあ、知っていても可愛い娘に寒そうな格好はさせられないからなぁ、結局用意したか。』

『マスター、大好きです♪』

トロけきったアクアが抱き付いている腕に頬を擦り付けるように甘える。



『何だ?』

『どうしましたマスター?』

大通りを離れ、自宅のある路地を2人で歩いていると今にも崩れそうな廃屋の玄関に何かが見えた気がした。

近くに寄ると薄汚れた服を着た娘が廃屋の玄関の扉に寄りかかり、倒れていた。

身体の上に雪が積もっているにもかかわらず、雪を払うことすらしないで視線すら定まらない瞳に生気は無く、身体も冷えきっているようだ、死体かそれに準ずる状態なのだろう。

しかし、特筆するなら雪に埋もれていながらも輝きが衰えないその長い銀髪と頭の上に付いた耳だろう。


『おい、大丈夫か⁉︎』

『マスター、心音が殆ど聞こえません。せめて、最後の言葉を聞いてあげましょう。』

トウヤが駆け寄ったのだが、その身体は雪の様に熱が無く、触っても反応を示さない。

アクアの言葉がトウヤの心にのしかかる。


『分かった。娘よ、ここで巡り会ったのも運命だろう、最後に何か話しておきたい事は無いか?』

『あ…う…。』

銀髪の娘に問いかけると、僅かに娘の唇が動く。


『わ…たし……の…事……はも…う……いい…で………す。』

『…で……も、…い……妹…が……こ……の…扉………のお…く……、お……ねが…い………いも……と…を……いも………う…と…を。』

生気の無い瞳がトウヤを捉える。

その瞳の端に涙が一雫流れ、トウヤの手を濡らす。


『妹が扉の奥に居るのだな?分かった、安心しろ私の命に掛けて守ろう。』

『あ……り…が…と……、ター……シャ…ご……め…ん……ね。』

少女は妹へ謝罪を口にすると静かに目を閉じる。

その顔は穏やかなもので、妹を託すことが出来て安心したのだろうか。


『マスター、その娘もう…。』

『自己犠牲か…、最後まで自分のことより妹の命を守ることを選んだのか。』

しかしとトウヤは続ける。

『その崇高な生き様、この地の神が見ていなくとも我が見ていたぞ。己が命よりも妹の命を護らんとする生き様、我が心を動かした。』

『ま、マスター何をする気ですか⁉︎』

トウヤの右手に魔力が集まり渦を巻き始めた。

その魔力に反応しアクアが慌てて制止しようとするが遅かった。


『その命、黄泉にくれてやるのは惜しい。我が心を動かした褒美をくれてやる!』

トウヤが魔力の集まった右手を少女の胸に翳すと辺りを清浄の光が覆い尽くした。



パチパチッ

『んっ、あれ?ここは?』

私が目を覚ますと、見た事が無い天井が目に映った。

周りを見ると見た事が無い部屋のベットの上に寝かされていて、部屋に有る暖炉には火が灯されている。

部屋の中は心地の良い暖かさが保たれていて、時折薪が爆ぜてパチパチと音が鳴っている。

寝起きで、今一まとまらない思考でこの部屋の事を考えて見ても、何故私がこの部屋に居るのか分からなかった。

私は確か、帰る家も無くなり母に託された歳の離れた妹と街を彷徨って…。

そこまで考えて大事な事を思い出した!


『ターシャ!』

『ううん…、誰だ我の耳元で声を張り上げるのは…。』

これが、私と最愛のご主人様との出会いでした。

と、いう訳で、猫耳(ニアちゃん)もいいけど犬耳も捨て難くてキャラの追加になりました。

と言うか、まだ妹の名前しか分かって無いですが、諸々は次話に期待してください。


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