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乙女ゲームの悪役転生『練習用』

乙女ゲームの悪役転生のお話の練習用。

桜が満開の始業式。

そう、今日はこれから私が通う高校『桜咲(さくら)学園』の入学式アンド始業式だった。まるで、王道漫画のような豪華な校門を新入生である私達がくぐり抜けると、そこには広い庭と白を基調としたの校舎と麗しい生徒会長さまがお出迎えしてくれる。


ついでに補足すると新入生は一旦、校門の前で各クラスに集まり男女別に並び、式を行う体育館へと目指すのだ。なぜなら、この桜咲高校は迷子が出るほど広いから。


「ようこそ、一年生の諸君」


そう言ったのは桜咲高校の生徒会長であり攻略対象の司馬(しば) 祐樹(ゆうき)、長身で黒髪黒目の爽やか好青年のような風貌、スーツを着ればホストでナンバーワンを取るのは確実だ。しかし、性格がね、少々どころかかなり酷くてさ。


「私は生徒会長の司馬 祐樹です」


はにかみながらそう言うと一年生の女子たちはドミノ倒しのようにバッタバッタと倒れて行く。この司馬さんは普段、人前では一人称を私と言うけど、主人公の前だと一人称はオレに変わるんだよね。


「では、行きましょうか」


唯一、倒れなかった私と主人公を見た司馬さんは少し、驚いていた。まぁ、別にあの人が驚くとか驚かないとか私には関係ないから、どうでも良いや。


「かっこいい〜」

「やっぱり生徒会長はあぁだよね」


周りにいる女子達が司馬さんを褒めちぎる。そりゃぁ、イケメンを見たら誰でもそうなるわさ。でもね、あの人の性格は酷いよ。いわゆる『見た目は爽やか好青年だったけど、実は腹黒でした!』それが、司馬 祐樹だ。だから、女子達よ!顔で惑わされるな!と私は声を大にして言いたい。


「この学校って、イケメン尽くしね」

「うわっ!あの先輩かわいい」

「こっちの先輩もかっこいい」


そうだよ、この学校にはイケメンか美女しかいないんだ。なぜなら、ここは乙女ゲームの世界なんだから。


「よりにも寄ってなんで私は悪役に転生したのかなぁ」


私の独り言は大勢の女子達の騒ぎ声でかき消されてしまった。そして、入学式から私のテンションは最悪である。




* * *




乙女ゲーム『桜咲学園』は主人公、デフォルトネームは如月(きさらぎ) 彩香(あやか)が繰りなす恋愛バトル学園生活。この学園について少し説明すると、実はこの学園は世界から特殊能力を持った若者を集め、自分の能力を間違った方向に使わず社会に貢献出来る人間を育てるために作られた学園。


「より良い社会を作るためにも君たちの力が必要なんだ」


今、体育館では桜咲学園の理事長が熱い演説をしている。そんな話を一年生は壇上の真ん前で聞かなければならない。はぁ、話は長いし声は大きいし、と言うかなんで、私は悪役に転生したんだろう?それだけが、私の頭の中でぐるぐると回っている。


「以上、理事長のお話でした」


副会長でこれまた攻略対象の如月(きさらぎ) 冬夜(とうや)。ちなみに主人公の兄が締めくくり理事長のお話は終わったけど、次は校長の話だぁ。長いことこの上ない。


それで、話を戻すと私は前世この乙女ゲームを娘とやったことがある。確か記憶が朧げだけど私がお陀仏したのは40歳過ぎくらいだったかな?だから、私はここにいるみんなよりも精神的におばさんなんだよね…はい、年齢に落ち込むのはここら辺で終わり。


私の前世は乙女ゲーム好きの娘とサラリーマンの旦那の3人家族で幸せだったはず、記憶が曖昧だからここはなんとも言えないけど、きっとそうだったと思う。


「これで、式は終わります。一年生のみなさんは担任の後に続いて退場して下さい」


教室に移動しながら私は頭の中を整理する。なんせ、思い出したのが校門をくぐる直前だったから。人って驚くと反対に落ち着くもんだね。そんな事を思いつつ、ようやく辿り着いたのはコの字型の校舎、最上階である3階の端っこ、1年3組。


「出席番号順に座れよ」


主人公の担任であり攻略対象の秋月(あきづき) (かなめ)が指示をする。確か、主人公と私は同じクラスで、出席番号が近かったはず、主人公がデフォルトネームのままなら、私はきっとその後ろ。


「ほら、やっぱり」


後ろ姿しか見えないけど、頭のてっぺんから毛先にかけて明るい茶髪から薄ピンク色は主人公の髪のカラーリングだ。


「全員、席に着いたか」


ここからのシナリオは分かっている。なんせ、前世では娘と一緒に何度もプレイしたから全攻略者のハッピーエンドとバッドエンドを知り尽くしているんだよ。そして、ここから担任の秋月先生はこう言う。

『あっ、しまった。最初に配るプリントを忘れたからこれから取りに行く!それまでフリータイムな』

どうだ!一字一句あっているでしょ。


「あっ、しまった。最初に配るプリントを忘れたからこれから取りに行く!それまでおとなしく待ってろよ」


最後だけが違った。やっぱり少し忘れているのかな?まぁ、流石に全攻略者のセリフを一字一句覚えているのは無理があるか。でも、大丈夫。シナリオはちゃんと覚えている。


「ねぇ!」

「うん、どうしたの?」


この時間、明るい性格の主人公は私に話しかけ、自己紹介をした後、なんだかんだで友達になるんだ。


「私は如月 彩香。これからよろしくね!」


体をひねらせ明るく元気に言ってくれた彼女。薄茶の瞳は大きくて、大人びた整った顔立ちはもちろんのこと少し高めの声。後は主人公だからかな?胸がね…結構あるんだよ。ゲームの時も攻略者との夏イベントである、プールシーンで胸が大きいことを攻略者のとある人に言われて顔を赤くしていたっけ。


「えーと、あなたの名前は」


こてんっと首を傾げて問われた。女の子らしい仕草に同性でもくらっときてしまいそうだけど今、私は自分が転生者で尚且つ、悪役ということを知って内心、ズタボロショックなんだよ。


「私は工藤(くどう) 沙也香(さやか)


工藤 沙也香、身長は152センチ、黒と薄紫色が混じった腰まである長い髪にこれまた薄紫の瞳、ちなみにタレ目。そして、私の性格は主人公と真逆で大人しく冷静ないわゆる地味キャラ。尚且つ、全ルートの悪役キャラでもある。主人公を太陽に例えるなら私は月だ。


悪役と言っても私の出番はゲームの序盤ではなく。実は、悪役キャラは私の他にもあと1人いて、3年の藤塚 カルハと言う女子生徒がゲーム序盤に陰湿な嫌がらせやいじめをした後に私の出番が回ってくる。


確か、工藤 沙也香が主人公に嫌がらせをする理由は。ゲームの序盤、主人公と仲が良く親友だったはずが、だんだん、光り輝く主人公、あとは能力の伸びの差に自分を比べ嫉妬するんだ。


そして、ゲームの最後にはその嫉妬を元に学園中を巻き込む大事件を起こして能力を使って悪さをした人を集めた刑務所で一生を過ごす羽目になるんだよね。


「彩香でいいよ。じゃぁ、沙也香って呼んでも良い?」

「いいよ」


やっぱり主人公だ。それと、主人公の能力は予知夢と治癒能力の2つ。モブキャラは能力が1つだけど主人公と攻略者と悪役キャラは能力が2つかそれ以上、かくいう私も能力が2つあるんだけど。


「能力は予知夢と治癒能力なんだ」

「予知夢って便利だよね。コントロールが上手くなれば期末テストとか小テストの問題が分かるし」

「コントロールが出来ればねぇ〜。私、コントロール苦手だから。って能力をそんな事に使っちゃダメだよ」

「ふふ、ナイスツッコミ」


私の能力は、身体能力を上げる事と透視能力。でも、ゲームの最後、嫉妬を元に学園中を巻き込む大事件を起こす時、工藤 沙也香は始めからもう2つ自分には能力があると主人公と対峙した時、暴露している。


それまで、主人公は工藤 沙也香は能力が2つしかないと認識していたことから工藤 沙也香は最初から自分の能力を隠していたと言うことだ。


でも、能力を隠す理由も分からなくもない。だって、残る2つの能力は、負の感情が溜めれば溜まるほど自分の能力のパワーがあがる能力と指定した範囲を破壊する能力。そう、この2つを使って工藤 沙也香はゲームの最後、暴れる。


これさ、もろ悪役って感じの能力だよね。


「沙也香は〜?」

「身体能力を上げる能力と透視能力だよ」


ゲームの悪役だからって私はゲームの通りに動かない、なぜなら、自分が刑務所行きになるのはごめんだからだ。まぁ、それを回避するのはとても簡単で要は主人公に嫉妬さえしなければいいだけの話。


「彩香、これからよろしくね」


あと、攻略者には関係ないこと以外で関わりたくないな。だって…よく分からないけど私、男の人が苦手なんだよね。これはゲーム内の工藤 沙也香にはない新しい設定。


男性恐怖症じゃなくて、普通に話せるんだけど極力、会いたくない感じ。


「うんっ!」


あぁ、神様。なぜ私はこの乙女ゲーム桜咲学園の悪役キャラに転生してしまったのでしょうか?


練習用ですからね〜

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