ライセンCUNとライセンSAN (1)
君島
「……というのが今回、提案したい新規グッズのクリアファイルになります」
三上
「うーん、またクリアファイルですか。どうしようかな」
君島
「そうは言いますが、一番売れるんですよ。
僕みたいなコレクターには安価で優しいですし、女性はクリアファイルということで普段使いできると言い訳にもなる……」
三上
「私は使いませんけどね。
理由はともかく、御社だけでもう3回目のクリアファイルですよ。
いくらアニメの出だしが好調だからといっても、出しすぎじゃないですか?」
君島
「そんなことないです!
今回はメインビジュアルではなく、描き下ろしでお願いすることですし、ファン的には絶対待っていたグッズです!」
三上
「確かにそうなんですが。
ファン的にはという理由に引っかかるんですが、キャラクターのラインナップおかしくありません?」
君島
「え! えーと、どこがでしょう……?」
三上
「君島さん、分かって言ってますよね。
ヒトシ、フタバ、シドウ、レイジの4種でご提案いただいてますが、サンゾウがいないのは困ります。
サンゾウは主人公チームの一人なので、必ず入れて下さい。それとレイジは抜いてください」
君島
「いや、え、えーと……そうだ!
クリアファイル2弾までで、主人公チームの4人は2周分も出したじゃないですか!
だから、一回サンゾウにはお休み頂いて、代わりに敵キャラながら人気のレイジをですね……。
4弾ではサンゾウも入れますから!」
三上
「最近ほかのライセンシーの方たちも、サンゾウを除いた3種で提案があるんですよ
それでここの所、先生が気にしてまして。ちゃんと全員作ってくれって。
だから、サンゾウを入れないと許諾できません」
君島
「なるほど、先生がそういっているなら仕方ないですね……」
三上
「あと今回は全て単体キャラのグッズになると思うので大丈夫ですが、フタバとシバの2キャラを一緒に入れたグッズは、気をつけてデザインをしてください」
君島
「どういうことですか?」
三上
「ちょっと分かり難いと思うのですが、意味なく近くしたりとか。
あとは極端な言い方になりますが、背景をハートにするみたいな」
君島
「あー」
三上
「もともとキャラのセットとしては、ヒトシとフタバ、サンゾウとシドウじゃないですか。
それが、ほら、一部の女子の間で、フタバとシドウが盛り上がってしまったので。
人気があるのは嬉しいことなんですが、あんまり直球過ぎると。」
君島
「……先生が気にすると」
三上
「そうなんですよ。
先生としては、少年漫画を書いているので、あまり女性向けにして欲しくないそうです。
編集部的にも、やはり少年誌の連載である以上、少年読者をまず前提に考えて欲しいそうです」
君島
「なるほど。
とはいえ、原作を読んでもそっちを狙ってるように見えるんですけどね。
少なくともアニメは、明らかにそっち狙ってると思うんですけど。」
三上
「原作はともかく、アニメ製作側としては新しいファン層を取り込むことも仕事のひとつです。
しかし、連載当時から注目していた作品のファン、雑誌自体が好きな男の子を無視することはできません。
いろいろな積み重ねがあったからこそ、今の人気があるわけですから。
何より、いま一番声が大きいところだけに供給をしても、ひとときの流行で終わってしまうと思います。
この作品というだけなく、アニメ業界という意味でも、ですね」
君島
「なるほど。
ただ業界が終わってしまうという所までは、正直実感ができないです。
ですが、作品にもいろいろなキャラ、お客さんにもいろいろなファンの方がいますし、できる限りフォローしてあげたいという気持ちはあります」
三上
「ですので、そんな女性ファンのために、サンゾウのグッズもぜひぜひお願いしますねっ☆」
君島
「……サンゾウ好きな女性って、三上さんしか知らないんですけど」
三上
「元気な男の子キャラって、可愛いと思うのですが」
君島
「……了解です。クリアファイルできたら、サンゾウのサンプルは1個多めに渡しますよ」
三上
「ありがとうございます。
それでは長い話も聞いて頂きましたし、レイジファンのためにも、そろそろレイジのクリアファイルも作れるよう相談はしておきますね」
いまや声優、アニメーターは人気商売。
アニメ業界に入りたい若者は多数だ。
そんな中、意外と知られていない(と私は思っている)職種、ライセンシー(許諾される側)とライセンサー(許諾する側)という、ライセンスのお仕事のお話。