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本日の課題「経験に勝る学習は無いらしいです」


薄暗い巨大な地下施設。

今日も超高性能コンピューター「コクマー」は、学習型アンドロイド「キュリアス」に対する(教育)に以下略。


「さて、筆者が妙な面倒くさがり方をし始めたのは気に入りませんが、とにかく今日は昨日の続きである実践的学習です。まずは私の説明をよく聞きなさい」

「……あれ?」

「どうしました、キュリアス?」

「コクマーさん、声……なんか、変なところから聞こえてくるんですけど……」

「ふふふ……。気づきましたか、キュリアス」

いつものマニピュレーターに付属したスピーカーからの音声と異なり、どこか別の場所から響いてくるコクマーの声に、キュリアスが疑問を感じているのを楽しむように、コクマーは言葉を続ける。


「お前は以前から散々私に言ってきましたね。(アンドロイドでもないのにアンドロイドのことを知ったように語るな)と」

「……はぁ」

「ですがお前のその戯言を聞くのも今日が最後です。キュリアス、ご覧なさい」

コクマーが言い終えるや、室内にキュリアスは自分以外の者の足音が響くのを聞いた。

足音は小さく、ちょうどコクマーの本体後ろからゆっくりと前面のキュリアスへと近づくように聞こえてくる。

と、

足音の正体が姿を現した。


コクマー本体の左手側から半身を覗かせているその姿は、一見すると人間の少女の姿に酷似している。


「どうですキュリアス。これで私もお前が言うよう、アンドロイドとなるという体験を得たわけです。もうお前の屁理屈や逃げ口上は通用しませんよ!」

完全に姿を見せたコクマー……の、どうやらアンドロイドのボディらしきものは、なんとも感情的な笑い声と表情を浮かべ、キュリアスへ向け、そう断じた。


「……えーと、コクマーさん?」

「なんですかキュリアス?」

キュリアスの困惑が滲む疑問の声に、コクマーのアンドロイド体が声を発する。


「……なんか、ちっちぇえですね……」

予想外の発言。

というより、あまりにどうでもいい感想。

普段ならば震わせるのは複数のマニピュレーターだが、今日のコクマーはアンドロイド体の顔を引きつらせつつ、握った拳を震わせていた。


「……キュリアス。人が苦労して得た結果に対しての第一声がそれですか……」

「だって、ほんとにちっせぇですよ?」

「……」

「なんですかね。部品不足で大人サイズのボディが確保できなかったとか?」

「……まあ、それは半分当たりです。確かに部品不足でアンドロイドのボディを制作するのに大変手間を取りました」

「で、結果がそのチビっちゃいボディだと」

「……」

「意気込みは買うけど、どうも拍子抜けするなー。なんか、それじゃあ威厳の(い)の字もありませんし、大体、まともに動くんですか?」

「……動作については心配は無用です。私が数少ない部品の中から最善の組み合わせで完成させたボディ。まあ……確かにお前のボディに比べれば見劣りするのは確かですが、機能についてはお前とそれほど遜色はありませ……」

「はい、コクマーさん。ちょっと質問」

いつもの如く、人の話の腰を折るような質問に再び握りしめた拳を震わすコクマーは、それでも不機嫌そうに返事をする。


「……なんですか、キュリアス」

「なんか、さっきから気になってるんですけど、その、ボディの後ろから出てるやつ。なんですかそれ?」

「ん、ああ、これですか」

少女の姿をしたボディで咳払いをひとつすると、コクマーはさらに本体から身を乗り出し、キュリアスが指摘した背中の部位を露わにした。


「これも部品不足による苦肉の策です。正直、このボディのみでは私の高度な能力を発揮することは不可能と判断したので、こうして有線によって直接私本体から高度高速処理したデータを流し込む形をとっているのです」

「……チビっこい上に、シッポつきですか……。なんか、笑うの通り越して、ちょっと悲しくなってきますね……」

「……」

「参るなー。こんなポンコツボディで私の気持ちを理解しようとするとか、お気持ちはねー、ありがたいけど、なんて言うかなー、完全に努力が空回りしてるっていうか……」

「……」

「まあねー、コクマーさんはどこまで行ってもやっぱりただのドデカい脳みそであって、それ以上でも以下でも……、てか、以上ではないってことですかねー」

「てめぇ、今なんでわざわざ以上と以下の表現、微妙に変えやがったんだコラッ!」

もはやお馴染みとなったコクマーの怒声に警戒し、マニピュレーターの動きを探っていたキュリアスは、まさかに自分の想定外の攻撃をもろに喰らった。


ポンコツとまで揶揄されたコクマーの有線式アンドロイドボディが、キュリアスの死角から鋭い飛び蹴りをその背中へと叩き込んだのである。


「うげっ!」

注意していなかった方向からの、思った以上に強力な攻撃にキュリアスは背中を押さえて悶絶した。


「どうだ、お前が言うところのポンコツの威力。我が身で味わって理解したろう!」

「たたた……。痛いじゃないですかもう、人に不意打ちするためにわざわざそんなもん作るなんて趣味が悪いにもほどがあるってんですよこの脳み……」

「その先を言わすか、このスカタンッ!」


再びコクマーのアンドロイドボディがキュリアスへ飛びかかる。

その攻撃をとっさに回避し、以後も連続する相手の攻撃を見切ることに全機能を集中するキュリアス。


昨日の仕事は今日も成しえず。

今日の仕事は明日に持ち越し。


彼らの成すべきことは多い。


が、

彼らが自らに与えられた能力を有効に活用する希望は、今のところ見出せそうに無い。


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