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本日の課題「で、具体的には一体なにすればいいの?」


薄暗い巨大な地下施設。

今日も超高性能コンピューター「コクマー」は、学習型アンドロイド「キュリアス」に対する(教育)に勤しんでいた。


「さて、今日は実践的学習ですキュリアス。席について私の話をよくお聞きなさい」

「それにしても」

「?」

「毎日毎日、よく飽きないねー、コクマーさん」

コクマーに対して完全に背を向けながら、どこからか見つけてきたノートパソコンでキュリアスはソリティア……クロンダイクに集中している。


「……キュリアス、我々には元来(飽きる)という感覚は備わっていません。もっとも近しいものとしてはすでに習得した知識について無用に再学習をおこなわない機能が存在しますが、これとて人間的感覚で言うところの(飽きる)とは根本的に違うもの……」

「あー、もう、ダイヤの9が邪魔でクラブが揃わないー!」

「……キュリアス、大概にしないとそのパソコン叩き壊すぞ……」

「……はーい」

さすがに楽しみが壊されるのは一大事と見て、キュリアスはしぶしぶコクマーに向き直ると、

いつも通りの退屈そうな顔で話を聞くことにした。


「繰り返しますが、今日は実践的学習ですキュリアス。我々に課せられた地球及び人類を筆頭とする生物の存続に関する具体的活動案を考えてゆきましょう」

「いつの間にそんな大層なこと課せられたのか記憶に無いんですけど……」

「……もし本当に記憶に無いというならば、それは間違い無くお前自身の異常です。即刻解体して調べる必要が……」

「はいはいはい、うっかりしてました、よっく覚えてます!」

大慌てで発言を撤回するキュリアスを見て、コクマーは自身のキュリアスに対する接し方の手並みに満足したらしく、妙に満足げな雰囲気を漂わせたが、当のキュリアスは不満もあらわに聞こえない程度の小さな舌打ちを漏らしていた。


「これは今から三時間ほど前のことですが、この施設内で唯一探査不能だったD52ブロックの強固なセキュリティロックが私のたゆまぬ努力の結果、ついに解除成功するに至りました。ついてはキュリアス、お前にその内部探査を命じます。しっかりと調べてきなさい」

「自慢と命令、一緒に出すって、一体どんだけいい性格してんだかこの脳みそお化け……」

「何か言いましたかキュリアス?」

「いーえ、なーんも言ってません」

「おかしいですね。私の聴覚センサーは確かに(脳みそお化け)云々という音声を捉えているのですが……」

「あー……、あれですよ。空耳。よくあります。うん」

「キュリアス……、私の聴覚センサーは(空耳)などという現象は起こしません。よしんばそれに近いことがあるとすれば、それはセンサー周りの故障を示唆する重大な問題です。見過ごすわけはありません」

「じゃあ、故障でいいじゃないですか。元々、ぶっ壊れてるようなもんなんだし」

「言ってるそばから繰り返しバカにしてんのかてめぇっ!」

言うが早いか、コクマーの数あるマニピュレーターのひとつが、キュリアスの横に置かれたノートパソコンを粉砕した。

「あーっ!」

自分が身をかわすことに集中していたせいで、ノートパソコンを犠牲にしたキュリアスは粉々になったノートパソコンを眺めながら、さもうらめしそうにつぶやく。

「人にあたるだけでも最悪なのに、物にまであたりやがったよこの脳みそ……」

「……その先言ったら、今度はお前の頭にマニピュレーター叩き込むぞ……」

「……」

危ういところで口を閉じたキュリアスだったが、その顔にはあからさまに不満と怒りの表情を浮かべていた。


「さ、下らないやりとりはこの辺で終わりとしましょう。キュリアス、早急にD52ブロックを調査して……」

「コクマーさん、ちょい質問でーす」

言葉の途中を切られたことに加え、またしてもふざけた口調で話すキュリアスに、コクマーはそれでも努めて冷静に話しかける。


「……なんですか、キュリアス」

「D52ブロックのセキュリティロック外すのは、さぞ骨が折れたと思うんですが、いかがでした?」

「ふむ……。お前にしてはなかなかに殊勝な物言いですねキュリアス。まあ、コンピューターである私には(骨が折れる)という表現は決して適切ではありませんが、確かにかなり苦労させられました」

「それじゃ、ずいぶんとお疲れになったんじゃありません?」

「いえ、私はコンピューターですから、(疲れる)ということはありませんでしたが……」

「いえいえ、きっとお疲れでしょう。そんだけ大変なことしたんですから」

「あー……キュリアス。繰り返しますが私はコンピューターですから(疲労)というものは基本的に起こさない……」

「いーや、絶対疲れてます。コクマーさん、ちょっと働きすぎです。たまには休まないと体が持ちませんよ?」

「……キュリアス、お前、一体何を言ってるんですか?」

「だーかーらー。ちゃんと仕事したらちゃんと休む。これ、効率的な仕事するための基本。コクマーさんが過労で倒れたりしたら困りますものー」

「……?」

「ですからー、今日はー、みんなでー、しっかりとー、お休みしてー、明日から改めて頑張ろうってー、そういうことー♪」

「……それ、てめぇが休みたいだけじゃねぇかコラッ!」

キュリアスの真意を悟った次の瞬間、コクマーのマニピュレーターが風を切ってキュリアスの頭へ振り下ろされた。

が、

いち早く状況を見切っていたキュリアスは、軽々とマニピュレーターの射程圏外へと身を引いている。


「短気は損気って言うでしょ、コクマーさん。それに、今日やれることは明日やれとも言うじゃないですかー♪」

「前のは合ってるけど、後のは逆だろてめぇっ!」

届かぬマニピュレーターを空しく振り回すコクマー。

それを微妙にはやし立てるキュリアス。


彼らの重責は地球の命運。


しかし、

彼らにこれを背負わせることが果たして正解かどうかはもはやあまりにも疑わしい。


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