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本日の課題「三人寄らば文殊の知恵ですが、ふたりだと……?」


薄暗い巨大な地下施設。

今日も超高性能コンピューター「コクマー」は、学習型アンドロイド「キュリアス」に対する

(教育)に勤しんでいた。


「さて、今日も学習の時間……」

「はい、コクマーさん、質問ー」

「……キュリアス。もういい加減、指摘するのも面倒になってきましたが、何故お前はそう人の話してる間に入ってくるような無作法なことを……」

「非礼は深くお詫びいたしますので、とりあえず質問ー」

「……はいはい、わかりました。なんですキュリアス?」

「こういうのもなんですけど、今って昨日聞かされた通りだとすれば、ものすげぇ危機的状況ですよね?」

「ふむ、確かに。極めて危機的状況と言っていいでしょう」

「そこが疑問なんですけど、なんでそんな大変な時に、私に対する学習なんて、悠長なことやってんですか?」

「ふむ、お前にしてはなかなかまともな疑問ですね。では説明しましょう。今現在、正直を言って私だけの能力ではこの事態の打開策を考えつく自信がありません。そこで、私の思考プロセスにひとつ、特異要素を含めることでより複雑かつ多岐にわたる仮説、解答を導き出そうという試み。それがお前に対する教育なのです」

「……すいません。さっぱり分かりませんが……」

分かりやすく苦い顔をして、キュリアスが答える。


「キュリアス……。お前はどうしてそう、少しばかり難しいものの言い方をすると途端に話を理解出来なくなるんですか……」

「噛み砕くように説明するっていうのは教育の基本ですよコクマーさん」

「……それをお前が言うな……」

相も変らぬキュリアスの理解力不足にコクマーも頭を痛める。

いや、コンピューターが頭を痛めるというのは決して適切な表現ではないが……。


「仕方ありませんね。それでは出来るだけ簡単な言い方に替えましょう。私だけの考え方では今の事態を打開する方法が思いつかない。だから、お前も一緒になって考えろ。そういうことです」

「なあんだ。やたら簡単なことを変にこねくり回して、小難しく言うから分かりづらくなってただけじゃないですか。しかも、それなら別に教育は必要無いでしょ?」

「そのちょっと小難しい表現にしただけで理解出来なくなるようなノータリンの考えなんぞが役に立つかボケっ!」

何故かいちいち自分に都合のいい解釈に話を持っていくキュリアスをコクマーが一喝する。


「いいですか、私だって別に好き好んでこの緊急事態にお前を教育なんてしたくありません。しかし最低限お前の思考能力が今回の事態を具体的に理解出来る程度のレベルまで成長してくれなければ、ものの数に入れられないのですよ!」

「いや、ちゃんと理解してますよ。月にあるらしい、ナンチャラ装置がぶっ壊れてるからさてどうしようって、そういうことでしょう?」

「ナンチャラ装置とか言ってる時点でもうダメだろ絶対にっ!」

キュリアスのいちいち雑なものの捉え方や物言いは、何につけても正確さを重んじるコクマーには苛立ちを煽る要因としてしか働かない。

しかしキュリアスはそれに反し、そうした態度言動を改める気は毛頭無い。

まさに字の如く、不毛な両者の対話と言える。


「……ともかく繰り言になりますが、今はそれこそ(猫の手も借りたい)状態そのものなんです。正直、お前に対して期待はこれっぱかりもしていませんが、それでも一縷の望みに……」

と、

突然そこまで言い差して、コクマーは急に沈黙した。

しばらくは不思議そうに様子を見ていたキュリアスがコクマーに呼びかけたのは、それから約十秒ほどの間を空けてからだった。


「……もしもーし、コクマーさん?」

「……」

「どしたんですか?」

キュリアスの呼びかけにコクマーが反応したのは、さらにそれからわずかの間を空けてからである。


「……キュリアス、現状の情報がほぼ出揃いました。これでこの先、我々がやるべきことが多少具体的に思考できるでしょう」

「なんですか、急に。なんかあったんですか?」

「観測ポッドによる調査が地球全域で完了しました。ここと同様の施設などを含め、すべての調査が終了したのです」

「……はあ」

コクマーの口調は相変わらず抑揚を欠く、機械的なそれであることに変わりは無かったが、何故かこの時は、その声の中に言い知れぬ緊張感が漂っていた。


「予想の範囲ではありましたが、結果は相当に残念なものでした」

「残念って……?」

「現在この地球上には、人類を始めとする主要な生物が一切存在しないことが判明しました」

断定的に、かつ重苦しい響きのコクマーの声が室内を満たす。


「……えーと、それってつまり……」

「当初から想定していたことではありますが、現時点で地球上における人類の滅亡が確認されたということです」

「……って、つまり生存者は……」

「いません。今、この地球上にはひとりとして生存している人間はいません。完全に死滅しています」

「……」

コクマーの言う通り、事態は予測の範囲内。

とはいえ、それでショックを受けずに済むかと言われれば、それとこれとは別のこと。

さしものキュリアスも自然と絶句した。


滅びた地球。

滅びた人類。


希望を見出す要素はゆっくりと削り取られてゆく。


果たして、ここまでの状態から地球と人類の再生は可能なのか。


まともに考えれば、絶望に必要な要素が大半を占める。


過酷さを増す状況の中、コクマーとキュリアス。

人ならざるものの足掻きが一体どこまで厳しい現実に通用するのか。


それは存在すると仮定した場合の神なるものにしか分からない未来。


完全なる破滅へのリミットは、確実に近づいている。


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