プロローグ
「地球が滅びた」という。
地上に生きる命は滅び、後にはその痕跡だけが残った。
「地球が割れた」という。
どうしたものだろうか、地球はある時、突然に地軸を中心として、真っ二つに割れた。
一体、この異常現象を当時の科学者たちが見たなら、どう思っただろうか。
あまりに奇天烈?
あまりに怪異?
科学的常識から考えて、これらを彼らはどう説明するだろう。
その答えに興味は尽きないが、残念ながら答えを聞くのは不可能である。
何故なら、地球が割れたその時には、すでに彼らは息絶えていたから。
ともかく、科学上の摩訶不思議な謎を残しつつ、地球は右と左の半分ずつに分かれたまま、どうやらその体裁を保っている。
宇宙は神秘の塊だ。
そして、地球もまた然り。
数多の生命が息づき、知性を得、宇宙にまでも飛び立つほどの科学力を手に入れた生物が住んでいた星。
そう考えれば、大抵のことは奇跡か神秘の一言で決着がつく。
さて、地上の生命は絶滅したとはいえ、依然地球には高度な知性を持った人間の残した遺物が多数残されている。
右か左といわれれば、恐らく左に位置するある土地に、人間たちが残した遺産が、ゆっくりと自分たちに課せられた使命を模索し始めていた。