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ターリル州のターリ

 僕の名はターリ。

ラオル国のターリル州の洞窟で生まれたからそう名付けられた。

 両親は街で育ったが、普通の人と何処か違うと周囲の人にからかわれ、それが嫌で川下の誰も住んでいない所に来た。

 最初に持って来た布製の組み立て式の小屋に住んでいたけど、小さな山を削って洞窟を作って、その後、洞窟の入口に小さな家を建た。

作っている途中で僕が生まれた。

 両親は街の最後学校の建築学部と農学部で知り合って結婚したらしい。

 僕は小さい頃、父さん達が最初に持ってきた布製の小屋を自分で組み立てて幾晩か寝たりして遊んだ。

僕の両親は、小屋以外の物でも

「それは大切な物なので触ってはいけない。」などと決して言わない人達だった。

むしろ、短時間で上手に何かを組み立てたり、片付けられたり出来るようになるととても褒めてくれた。

後で思った事だが、僕が一人で生きていけるように色々な事が出来るようになって欲しかったのだと思う。

 2人は働き者で沢山の野菜を作った。

御蔭で一度も食べる物に困った事はない。

 父さんはたまに荷車に畳んだ小屋と乾燥させた野菜を詰めて街に行き、野菜を売って色々な物を買って来てくれた。

僕はやはり街に興味が有りどんな所か父さんに聞いたことが有る。

「ああ、街なんかつまらない所さ。

それより、途中綺麗な花がいっぱい咲いてたりしてそういうのを見るのが楽しい。

そうだ、今度は紙とペンを買って疲れて座った時などにその花の絵を書こう。」

そう言われると何も言えなかったが、内心やっぱり街って楽しい所じゃないかなと思った。

だからといって川沿いの暮らしが嫌だったわけではない。

両親は優しかったし、母さんの家事や父さんの仕事を手伝ったり、川で泳いだり毎日楽しい事ばかりだった。

雨の日は三人で別々の楽器で演奏して歌を歌った。

特に両親は「草原」という歌が好きでしょっちゅう歌っていたので僕も好きになった。

雨の日だけでなく農作業しながらみんなで歌ったりした。

 母さんは僕が生まれてからは家から遠い所に行くことは一度も無かった。

 父さんは僕に字を教えてくれて、街で絵本をいっぱい買って来てくれた。

その内、数学や外国語の本も買ってきてくれて教えてくれた。

僕が嫌がるのに無理に教えようとする事は一度も無かった。

それどころか本に出てくる事柄でわからない事が有って質問したら一生懸命教えてくれた。

 ところが、僕が12歳になった時、父さんは街に出たまま何日も帰ってこなかった。

僕は母さんに「探しに行こう。」と言ったが、

「女と子供だけでは危ない。

父さんは何処かで事故に遭って入院してるのかもしれない。

治ったら帰ってくるかもしれない。」

と言われた。

 だが、幾ら待っても父さんは帰ってこなかった。

僕達は父さんの事を思いながらもお互いを傷つけたくなく、父さんの話をしなくなった。

 そして僕が17歳になった時、母さんは亡くなった。

亡くなる少し前から時々胸を押さえて辛そうにしていたが、健康な人でも街まで行くのは大変なので病院に連れて行くことも出来ずきつい時は休むように勧める事しか出来なかった。母さんは亡くなる少し前に言った。

「私がもし亡くなったら家の近くにお墓を作っておくれ。

いつか父さんの遺体が見つかったら一緒に埋めて。

居間の引き出しにお金と通帳入れているからどうしても街に行かなきゃいけなくなったらそれを使ってね。

銀行でお金を引き出す方法わかるよね。

母さん達、両親と絶縁した時生前贈与してもらったから十分な金額が入っているから。

乾燥野菜売ったお金も入っているし。

 でも、お前はやっぱり私達と同じように普通の人と違うみたい。

なるべく街には行かない方がいいと思う。

本当は沢山兄弟を作って賑やかに暮らそうと思っていたのに、一人にしてごめんね。」 

母さんは涙を流した。

「何言ってんだい。

母さん達と暮らして僕どんなに楽しかったか。」

「ありがとう。」

やっぱり母さんも父さんはもう亡くなっていると思っていたのだ。

 僕はお墓を作って母さんを埋めた後しばらくは途方にくれていた。

ここで一人で生きていける事はいけるが、やはり父さんの消息も知りたいし、街にも興味がある。そうだ、街に行こう!もう17歳。

もし揶揄われたり嫌な思いをしたらすぐに戻ればいい。

雨が振ったら傘をさして歩き続ければ何とかなるだろう。

そう思い立ってすぐに引き出しに入っているお金を少しと通帳と着替えと乾燥野菜と水と傘を母さんが持っていた、からう式の鞄に入れた。

そう決めた日の夜はワクワクして中々眠れなかったが、明け方に少しだけウトウトした。

そして、朝早く僕は鞄をからって出掛けた。

川沿いにずっと西に歩けば街が現れる、と父さんが言っていた。

 休まず歩いて夕方になった。

すると、見慣れた荷車があった。

その横に大人の骨があった。

荷車に掛けてある布をめくると、沢山の本と花の絵が描いてあった。

僕は声をあげて泣いた。

こんな近くに父さんは一人でいたのだ。

何年も。

僕が一人になっても退屈しないように字を教え、街に行く度に本をいっぱい買って来てくれたんだと思う。

そして、父さんが描いた絵はとても美しかった。

瓶の水を飲み干して遺骨を一部入れてた。

荷車を押しながら一旦帰った。

母さんの墓の横に瓶を埋めた。

父さんの絵を鞄に入れて、荷車に布製の小屋などを入れて僕は又出発した。

歩いていて辛い時はみんなで歌った歌を歌って自分を励ました。

 何日も歩いたら街が見えてきた。

やはり、絵本で、見るのと実際に見るのは全然違う。

色とりどりの高い建物は本当に美しかった。

「草原」を歌いながら歩いているとみんなが意地の悪い目で僕の方を見ていた。

ああ、普通の人は外では歌わないんだ、と気付いて歌うのをやめて歩いていると、ひときわ高い建物の1階からいい匂いがしてきた。

絵本で見たから知っている。レストランだ。

丁度お腹も空いてたから中に入って奥の椅子に座った。

メニューを眺めていると太った初老の男が来た。

「ねえ、君、バイシャさんの息子じゃないかい?」

「そうですけど、父を知っているのですか?」

「知っているも何もバイシャさんはいつも乾燥野菜を売ってくれてさ、ここのレストランは変わった料理を出すって評判なのに、来てくれなくなって。父さんはどうしてるの?」

「ずっと家に帰ってなくて、ここに来る途中遺体を見つけました。」

「そうか、亡くなったのか。

いい人だったのに。何でこっちに来たの?」

「母さんも亡くなって、あそこで一人でいても仕方ないと思って、こっちで暮らしてみようかなと。働く所探そうと思って。」

「それならここで皿洗いしないか?

給料安いけど。」「いいんですか?」

「ああ、勿論。それと乾燥野菜ある?」

「ええ、少し残っています。」

「売ってくれる?」「勿論。」

「それは嬉しい。

うちは宿泊所も兼ねているから一番上の階に泊まるといいよ。勿論宿代は取らない。

客でいっぱいになる時は僕んちに泊まれよ。

僕はここの経営者で、バントという。

君は?」

「ターリです。」

「成る程。

ターリルで生まれたからターリね。

宜しくね。」

「こちらこそ宜しくお願いします。

ところで、ここは何という街ですか?」

「ムーロだ。」「そうですか。」

 早速部屋に案内してくれた。

僕は荷物を片付けお風呂に入った。

本で知ってはいたが、蛇口をひねるだけで上から線になった幾つものお湯が出てくるなんて夢のようだと思った。

家ではお風呂は薪で沸かしていた。

風呂場を出て、僕は泥のように眠った。

 次の朝、僕は洗い場に行った。

流しが並んでいて、右側に小さい荷車があって、そこに汚れた食器が入っていてそれを油がついている物は自分の所の流しに入れて、油がついていない食器はどんどん左の流しに入れていった。そして、空になった荷車を所定の位置に返し、流しの中の食器を洗って左の流しに入れていった。

交代の人が来るまで洗い続けた。

うちでも食器洗いは僕の担当だったが、比べられない量の食器を洗えてとても楽しかった。

休憩時間は客と同じ席に座って食事を注文し、ゆっくり飲み物を時間いっぱい飲んで、その時の食器は下げなくていいらしい。

休憩が終わると戻って、交代の人は左の流しに移って、左の人が休憩を取った。

夕方になると、夜の担当の人が来てその日は終わりとなる。

 夜は部屋に戻り父さんが買ってくれた本を読んだ。絵はタンスの上に飾った。

僕は絵に向かって言った。

「父さん、父さんが嫌っていた都会だけど、少し住んでみるね。」

そうして、昼は仕事、夜は読書や勉強と楽しく過ごした。

 ある日、意外と客が少なく暇な日があった。流しの横は洗った食器を拭く担当になっているのだが、その担当の男がニヤニヤ笑いながらこっちに向かってきた。

「ねえ君名前何ていうの?」「ターリです。」

「名前は普通なんだね。

君変わっているよね。」

「どこがですか?」

「うーん、何処って言えないんだけどさ。」

すると隣の流しの担当者もこっちを向いてニヤニヤ笑って、向こうから来た奴に向かって言った。

「だよね。うん、僕も前からそう思ってた。」

「だよね。やっぱり僕だけじゃなかった。」

「だから何なんですか?

僕にどうしろと言うのですか?」

「別にどうしろとか言ってないじゃん。」

「じゃあそんな事言いに来ないでいいじゃないですか。」

「別に怒んなくていいじゃん。

事実を言っただけじゃん。」

騒ぎを聞きつけてバントさんが来た。

「お前達客の前で喧嘩するな。

暇な時間帯だからといって怠けるな。

今のうちに片付けておかないとすぐ忙しくなるぞ。」

「はい。」

食器を拭く担当の男は持ち場に戻って行った。助かった。

やはりバントさんはわかってくれる人だ。

 そして、又数カ月僕は幸せに過ごした。

 夏になり観光客が増え、僕が使っている部屋も客に泊まらせる事になった。

僕は荷物をまとめ、掃除を済ませてバントさんの家に泊まる事になった。

 2階の空いている部屋に荷物を置いたらバントさんに呼ばれた。「お茶飲まないかい?」

居間の真ん中に大きな低い台があって、その下に足を入れて直に座るように言われた。

「街では部屋では直に座るんですか?」

「そうだよ。宿泊所では違うけど。」

若い女性がお茶を持ってきた。

「娘のカーラだ。宜しく頼む。」

「宜しくお願いします。」

と僕は言ったのだが、カーラは突然ケラケラ笑いだし、

「何かさ、貴方普通の人と違うよね。

お友達に変わっていると言われない?」

「来たばかりなのでまだ友達はいません。」

「じゃあ仕事仲間に言われるでしょう?」

「言われません。」

すると、バントが笑いながら言った。

「この前言われてたじゃないか。」

僕は驚愕した。

「バントさんは僕の味方ではなかったのですか?」「何の話だね。」

「みんなにからかわれている時庇ってくれたじゃないですか。」

「庇う?

別にそういうつもりはなかったんだけど。

君達が客の前で喧嘩してたから叱っただけで。」

僕は絶望した。

「やっぱり言われてたんじゃない。」

とカーラは笑い続けた。

「じゃあ父さんの事もからかっていたのですか?」

「そう言えば君の父さんも変わってたな。」

と言ってバントは笑った。

「でも乾燥野菜を買うだけでそんなに話してないからその事を指摘する暇は無かったな。

優しい人だったけど。」

「父と親しかったのではないのですか?」

「うん、名前位しか知らない。

バイシャに似てる子がいるな、息子かなと思って君に話しかけただけだよ。

でも勿論君真面目に働いてくれてとても感謝してるよ。」

僕は立ち上がって叫んだ。

「わかりました。もういいです。

泊めてくれなくていいです。

仕事も辞めます。

一人でもわかってくれる人がいたら頑張れると思っていたのに。」

「何を怒っているのだね。」

僕はカーラに言った。

「ねえ君、カーネ(動物の名)に似ているって言われない?

名前カーラじゃなくてカーネに変えたら?」

「娘に何て事言うんだ。」

「先に侮辱されたのこっちでしょうが。」

「別に侮辱なんかしてないじゃないか。」

「僕だって別に侮辱なんかしてませんよお。

似てるから似てるって言っただけです。」

僕はカーラに向かって言った。

「カーネさあん、カーネさあん。」

バントが言った。「この恩知らず!」

「ええ、感謝してますよ。

仕事と寝床を与えてくれて。

だからこそ信頼していたのに、よくも絶望させてくれましたね。」

僕は2階に行って鞄をからって荷物を持って外に出た。荷車を押しつつ西へ歩いていった。

どこかに、どこかに僕の事をわかってくれる人がいるはずだ。

 しばらく歩いていると右手に本屋があった。

そうだ、新しい宿を借りる前に読み終わった本を売って別の本を買っておこう。

先に本を売った後、選んだ本を店主がいる机に置いた。

店主は、本を紙で包んでくれた。

小さい頃から見慣れている包み紙だった。

「この包み紙ここだけの物ですか?」

「そうですけど。」

父さんはいつもこの店で僕の本を買ってくれていたのだ。街が嫌いなのに僕の為に。

父さんへの気持ちと傷付いた気持ちが重なって大声で泣いてしまった。

店主がビックリした顔をして、その後この街の人特有の意地悪いニヤニヤした顔を見せてきた。かなりの量の本を買ったのに。

「返します。やっぱり要りません。」

店主は怒って言った。「何でですか。」

「あんた笑ったでしょうが。」

「チェッ。なら別にいいよ。

あんたなんかに買ってもらわなくで店は潰れないよ。」

「よくそんな事が言えるね。

父さんがどれだけここでお金使ったと思ってんだい。」

 店を出てしばらく歩くと、右手に今迄住んでいた所とは比べられない大きさの施設があった。

とてつもなく大きな建物があって、その周りには公園みたいな所や小さな建物があった。

何だろうと思って門に近づくとラオル最後学校と書かれていた。

門に紙袋がいっぱい下がっていて、建築学部と書いてある紙袋にさしてある学生募集という冊子の一つを取ってみた。

入学する日に18歳になっていたら誰でも受けていいと書いてあった。

その後宿を探して、10日分の宿賃を払ったらお金が無くなった。

銀行に行って、お金を下ろした時始めて額の大きさに気付いた。

今迄も通帳を見たことはあったが、1ペラの価値がどの位か街に来るまで知らなかったのだ。改めて見てみて気付いた。

 部屋で荷物を片付けた後、猛一度募集用紙を開いた。

将来新しい家を建てなくてはいけなくなるかもしれないから、勉強しておいた方がいいかなと思って受験する事にした。

受験科目は外国語と一般教養だった。

街の本屋さんに行ったら赤い本がいっぱい並んでいて、ラオル最後学校建築学部と表紙に書かれた本を買った。

僕は安い宿を借りて受験の日まで一ヶ月勉強した。

基礎は父さんに習っていたので、試験に出そうな問題を解くだけで良かった。

今迄と違って目的の有る勉強だったので余計楽しかった。

 試験の日が来た。

建築学部を受ける教室に行く途中医学部を受ける教室があった。

そこに入る人達の中に目の大きな綺麗な女の子がいた。

目が合ったので急いで視線を逸らした。

普通の人達は僕達みたいな人は普通でない人と僕達みたいな人との区別が付かないと思いがちだが、実は僕達にも僕達みたいな人ってわかるのだ。

その子は多分僕と同じ世界の子だ。

それも有るけど、本当に綺麗な子だったので僕もあの娘も受かるといいな、と思った。


 試験に合格した。

 1年目は専門科目は少なかった。

外国語の授業の前に早目に教室に行って予習をしていたら、左の席にあの時目が合った子が座った。

教室は空いていたのに僕の席の横に座ったからビックリした。

「君、試験の時に目が合ったよね。」 

「ええ、その時素敵な人だなと思って、二人共受かったらいいなと思っていたの。」

初対面でこんな事を言われて再び驚いたが、僕はあのレストランでしか人付き合いした事ないのでこれが普通なのかと思い直した。

「君どこから来たの?」

「タカリという街よ。遠いから寮に入ったの。」「僕は近くに住んでいるよ。」

「何処から来たの?」

「ターリル州の川沿いで両親とだけ暮らしていたんだ。君名前は?」

「ルラって言うの。貴方は?」

「ターリだよ。ターリル州から取ったんだって。建築学部だよ。」

僕達はすぐ親しくなった。

二人でいるとみなニヤニヤしながら僕達を見る。

変な者同士がつるんでるぜ、みたいな視線。

それでも一人でいるよりは二人でいる方が耐えられた。

ルラは朝起きるのが苦手らしく、全て2時間目からの授業を取ったらしい。

それでもギリギリにいつも来ていた。

ある日ルラは言った。

「さっき慌てすぎてこけちゃった。

恥ずかしかった。」

すると近くの席にいた男子学生が言った。

「君達にも恥ずかしいとか有るの?」

他の人も聞いているのに結構な大声だった。

ルラは言った。「痛かったって言ったのよ。」

「ええ、嘘お。」「本当よ。」

そいつはニヤニヤして自分の席に戻った。

それ以来ルラも僕も二度と恥ずかしいという言葉を使わなかった。二人っきりの時も。

「普通はこうするよね、間違えた。」

などと言う言い方をするようになった。

と言っても話し合ってそうしたわけではない。

恥ずかしいという言葉が最初から無かったように僕達は恥ずかしいという言葉を使わなくなった。

 一学期が終わり、初めての長期休暇が訪れた。

僕達はからかわれるのが嫌なので、いつも学校の外の喫茶店で会うようにしていた。

カヒという豆を煎って砕いた粉にお湯をかけて抽出した飲み物を飲みながら僕達は話した。

「実家に帰らないの?」「うん。」

「実はもう一生帰らないつもりなの。」

「ええ!何で?」

「母さんにも変だってからかわれたしね。」

「ええ!それは酷い!自分の親に?」

「そうなの。

よっぽど家出しようかと思ったけど逆らったら最後学校行かせてもらえないしね。

表面上は従っているふりして、最後学校行くときもう二度と会わないと決めて出てきたの。

六年分の学費とか寮費とか生活費とか全部事前に貰っているしね。」

「そうまでして何で最後学校に入ったの?」

「実はね、私昔から変だと言われたし、対人恐怖症でもあるの。

何故かターリとは自然と話せたの。

そういうのって脳の問題ではないかと思うの。

両親はそんなわけないだろっていうけど。

だから将来脳の研究する為に医学部に入ったの。」

「成る程。」

「ターリが羨ましいわ。

誰にもからかわれずに生きてきたのね。」

「うん、楽しかったよ毎日。

父さんが街なんてろくな所じゃないっていってたけどやっぱりそうだった。

でも君に会えたからもう少し頑張ってみるよ。」

「いいなあ、帰る所があって。」

「いつか一緒に帰ろう。」「いいの?」

「勿論。」

「外でも人目を気にせず生きられるなんて夢みたい。」


 二学期になったので、新しい授業を受ける事になり美術の授業を取った。

ルラは美術は苦手なので取らなかった。

僕は学校に行った事がなかったので、自分が美術が得意かどうかなんてわからなかった。

 最初の授業で長方形に切ってある木を渡された。

そして大きな女神像を指差して、先生は言った。

「これを参考にして女神像を作って下さい。

真似してもいいし、自分の個性を出して作ってもいいです。」

 授業の終わり頃にはあちこちで笑い声が起こった。

「お前下手だなあ。」「お前もな。」

すると僕の席の隣の一人が僕の作品をみて言った。「おお、お前凄いじゃないか。」

その声を聞いて他の者も集まってきた。

「本当だ、凄い。」先生も来た。

「どこかで勉強したの?」

「いいえ、初めて作りました。」

「最初学校に行ってないの?」「はい。」

どよめきが起こった。

みんなに褒められて嬉しかったので自分で彫刻用の木と彫刻刀を買って学校の庭で花や鳥を見て彫刻をした。

すると他の学生が集まってきて褒めてくれたのでそれが目的と思われたくないなと思ってルラと学外の公園に出かけ、ルラをモデルにして女神像を作ったりした。











 



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