表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/19

第17章:人格の侵食

『沈黙の塔』から戻る道——

セロスは、何度も予言書の内容を反芻していた。

(共存する道......)

(それが、答えなんだ)

胸のペンダントが、温かい。

アストラルも——喜んでいるのだろう。

しかし——

問題は、残っている。

「どうやって、共存するかだな」

ユリウスが言った。

「予言には——『共に在れ』としか書いてなかったよな」

「ええ」

イヴェインが頷いた。

「具体的な方法は——書かれていなかった」

「つまり......」

ガロウが、セロスを見た。

「俺たちで、見つけるしかない」

セロスは——頷いた。

「そうだな」

四人は、小屋に戻った。

夕食を済ませ、それぞれ休む。

セロスも——横になった。

しかし——

眠れない。

考えてしまう。

(共存......)

(どうすれば......)

その時——

頭痛。

突然の、激しい頭痛。

「うっ......!」

セロスは、頭を抱えた。

記憶が——

流れ込んでくる。

アストラルの記憶。

しかし——今までとは、違う。

もっと——鮮明だ。

まるで——

自分の記憶のように。


玉座の間。

セロスは——いや、アストラルは——玉座に座っている。

臣下たちが、報告をしている。

「陛下、深淵の獣の活動が——再び、活発化しています」

「どれほどの被害だ」

アストラルが——セロスが——答えた。

いや、違う。

(俺は......セロス? それとも、アストラル?)

境界が、曖昧になる。

「西の都市が、一つ——飲み込まれました」

臣下の声が、震えている。

「生存者は......いません」

アストラルは——拳を、握った。

『また......また、守れなかった』

怒り。

悲しみ。

後悔。

それが——混ざり合う。

「創世の炎を——使うしかないのでは」

別の臣下が、提案した。

「しかし——あれは、危険すぎる」

「他に、方法がありません」

「陛下——ご決断を」

全員の視線が、アストラルに集まる。

重い。

とても、重い。

『私が......決めるのか』

『また......私が』

アストラルは——立ち上がった。

「......分かった」

「創世の炎を——使う」

臣下たちが、ざわめく。

「でも、陛下——」

「他に、方法はない」

アストラルの声が、厳しい。

「これ以上——民を、失わせるわけにはいかない」

記憶が、飛ぶ。


戦場。

アストラルは、剣を手に立っている。

前方に——深淵の獣。

黒い霧のような、巨大な存在。

『倒す......』

『絶対に......』

アストラルは、手を掲げた。

金色の光が、集まる。

『創世の炎』

それが——彼の手に、形を成す。

「行け!」

光が、放たれた。

深淵の獣に——命中する。

獣が、悲鳴を上げた。

しかし——

光は、止まらなかった。

広がっていく。

「まずい......!」

アストラルは、力を抑えようとした。

でも——

遅い。

光が——世界を、飲み込んでいく。

「やめろ! 止まれ!」

アストラルの叫び。

しかし——

光は、止まらない。

都市が——崩壊していく。

人々が——消えていく。

「エリアナ! みんな!」

アストラルは、走った。

でも——

もう、遅い。

全てが——

全てが、消えていく。


「やぁぁぁぁっ!」

セロスは、叫んでいた。

目を覚ます。

汗びっしょり。

「セロス!」

イヴェインとユリウスが、駆け寄ってきた。

「大丈夫か!」

「......ああ」

セロスは、荒い息をついた。

「また......記憶......」

「アストラルの?」

「ああ......でも、今回は——」

セロスは、自分の手を見た。

震えている。

「もっと——鮮明だった」

「まるで......自分の記憶みたいに」

イヴェインの顔が、青ざめた。

「それは......」

「侵食が、進んでいるのか?」

セロスが聞いた。

イヴェインは——

頷いた。

「おそらく......」

「でも——なぜ?」

ユリウスが聞いた。

「セロスとアストラル、仲良くなったんだろ?」

「共存の道も、見つかったし」

「......分からないわ」

イヴェインは、困惑していた。

「でも——確かに、境界が曖昧になっている」

セロスは——

胸のペンダントに、手を当てた。

『アストラル』

心の中で、呼びかける。

『......スマナイ』

アストラルの声が、聞こえた。

『私ノ 記憶ガ 強スギル』

『抑エキレナイ』

「なぜ......?」

『深淵ノ獣ガ——目覚メツツアル』

アストラルの声が、緊迫していた。

『ソノ 影響デ 私ノ力モ 活性化シテイル』

『記憶ガ——溢レ出テクル』

セロスは——

理解した。

(深淵の獣が、目覚めている)

(だから、アストラルの力も——記憶も——抑えられなくなっている)

「どうすれば......」

セロスは、呟いた。

「どうすれば、止められる?」

『......共存スルシカナイ』

アストラルが答えた。

『完全ニ 共存スレバ 境界ガ 安定スル』

『デモ ソノ方法ガ マダ ワカラナイ』

セロスは——

三人を見た。

心配そうな顔。

「......大丈夫」

セロスは、言った。

「俺は——まだ、俺だ」

「でも......」

イヴェインの目に、涙。

「このままでは——」

「分かってる」

セロスは、イヴェインの手を握った。

「でも——諦めない」

「絶対に——共存する方法を、見つける」

ユリウスが、拳を握った。

「そうだ。絶対に、見つけてやる」

ガロウも、頷いた。

「俺たちで——必ず」

セロスは——

温かい気持ちになった。

(みんなが——支えてくれる)

しかし——

不安も、ある。

(間に合うのか......?)

(俺が——俺でいられる間に......)

その夜。

セロスは——もう眠れなかった。

眠れば——また、記憶が来る。

アストラルの記憶が——セロスを、飲み込もうとする。

(怖い......)

セロスは、認めた。

(自分が——消えるのが、怖い)

窓の外を見る。

星空。

母の言葉を——思い出した。

『あなたは、あなたのままでいい』

「......母さん」

セロスは、呟いた。

「俺は——生きたい」

「自分として——生きたい」

星が——瞬いた。

まるで——

答えるかのように。

[第17章 了]


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ