第13章:帝国との遭遇戦
平穏な日々は、長く続かなかった。
ある朝——
ガロウが、険しい顔で戻ってきた。
「まずい」
「何があった?」
イヴェインが聞いた。
「帝国の兵士。この山を、捜索している」
「!」
四人の顔色が、変わった。
「見つかったのか?」
「いや、まだだ。でも——時間の問題だ」
ガロウは、荷物をまとめ始めた。
「ここを、出るぞ」
「どこへ?」
「さらに北。山脈の奥だ」
四人は、急いで準備した。
最小限の荷物だけを持ち、洞窟を後にした。
山道を急ぐ。
後ろから——
遠く、犬の吠える声が聞こえる。
追跡犬だ。
「くそ......匂いを嗅ぎつけられたか」
ガロウが、舌打ちした。
「どうする?」
ユリウスが聞いた。
「川だ。川で匂いを消す」
ガロウが、先導する。
四人は、川へ向かって走った。
やがて——
激流が見えた。
山の雪解け水が作る、冷たい川。
「ここを渡る」
ガロウが言った。
「冷たいぞ。覚悟しろ」
四人は、川に入った。
「冷たっ......!」
セロスの体が、凍りつきそうになった。
でも——止まれない。
必死で、対岸を目指す。
川の中程——
セロスの足が、滑った。
「!」
激流に、呑まれそうになる。
「セロス!」
イヴェインの手が、セロスを掴んだ。
「大丈夫!」
二人で——何とか、対岸に辿り着いた。
全員、ずぶ濡れだ。
「......これで、追跡犬は巻けたはずだ」
ガロウが言った。
「でも——油断するな。帝国は、諦めない」
四人は——再び、山道を進んだ。
夕方。
ようやく、四人は立ち止まった。
「ここで、休もう」
イヴェインが言った。
「もう、体力の限界よ」
確かに——
全員、疲れ果てていた。
四人は、岩陰に身を隠した。
焚き火はできない。
煙で、居場所がバレる。
寒い夜。
四人は、身を寄せ合って温まった。
「......なあ」
ユリウスが、口を開いた。
「いつまで、逃げ続けるんだ?」
誰も、答えなかった。
「俺たちは——ずっと、こうやって逃げるのか?」
ユリウスの声が、苛立っている。
「......」
イヴェインは、黙っていた。
ガロウも。
セロスは——
「......ごめん」
小さく、言った。
「俺の、せいで」
「違う」
ユリウスが、首を振った。
「お前のせいじゃない。悪いのは——帝国だ」
「でも......」
「お前は、何も悪くない」
ユリウスは、セロスを見た。
「お前は——ただ、生きようとしているだけだ」
セロスは——
胸が熱くなった。
(ユリウス......)
「俺は、決めた」
ユリウスが言った。
「もう、逃げるのはやめだ」
「え......?」
「戦おう。帝国と」
ユリウスの目が、真剣だった。
「いつまでも逃げてたら——俺たち、いつか捕まる」
「でも——帝国は強大よ」
イヴェインが、言った。
「私たちだけでは——」
「だからって、諦めるのか?」
ユリウスが、イヴェインを見た。
「イヴェイン——セロスを守るって、言ったよな」
「......」
「なら——戦おうぜ」
ガロウが——
口を開いた。
「......ユリウスの言う通りだ」
「ガロウ......」
「俺も——もう、逃げたくない」
ガロウは、拳を握った。
「俺の部族を滅ぼした、帝国。一矢、報いてやりたい」
イヴェインは——
三人を見た。
そして——
溜息をついた。
「......分かったわ」
彼女は、微かに笑った。
「あなたたちには、勝てないわね」
「じゃあ、決まりだな」
ユリウスが、立ち上がった。
「明日——帝国の奴らが来たら、迎え撃つ」
四人は——
覚悟を決めた。
翌朝。
予想通り——
帝国の兵士たちが、現れた。
十人。
全員、武装している。
「見つけたぞ!」
兵士の一人が、叫んだ。
「予言の子だ! 捕らえろ!」
兵士たちが、四人に向かって来る。
「行くぞ!」
ユリウスが、剣を抜いた。
戦闘開始。
ユリウスが、最前線で戦う。
彼の剣捌きは——見事だった。
敵を、次々と斬り倒していく。
ガロウも——
拳で、敵を殴り飛ばす。
獣人の腕力は、凄まじい。
一撃で、兵士を気絶させる。
イヴェインは——
弓で、遠距離から援護。
正確な射撃。
敵の武器を、狙い撃つ。
そして——
セロス。
彼は——ペンダントの力を使った。
剣を振る。
蒼い光の刃が、敵を薙ぎ払う。
しかし——
「うっ......!」
セロスの頭に、痛みが走った。
(また......記憶が......)
アストラルの記憶。
戦場の記憶。
それが、流れ込んでくる。
「セロス! しっかりしろ!」
ユリウスの声。
セロスは——我に返った。
敵は——残り三人。
「......やるしかない」
セロスは、剣を構えた。
最後の力を振り絞る。
蒼い光が、剣を包む。
「はぁっ!」
セロスが、斬撃を放った。
光の刃が——
三人を、一度に薙ぎ払った。
敵が——倒れた。
全員。
「......やった」
ユリウスが、呟いた。
「勝った......」
しかし——
「セロス!」
イヴェインの叫び。
セロスは——
倒れていた。
意識が——
遠のいていく。
アストラルの記憶が——
セロスを、飲み込もうとしている。
(まずい......)
(このままでは......)
暗闇が——
セロスを、包み込んだ。
[第13章 了]




