存在意義はきっとある
目立つのは好きじゃない。
主張せず、周囲に溶け込み、馴染み、紛れる。
可愛かろうが不細工だろうが、飛び抜けていれば特別視される。
良い意味でも、悪い意味でも。
羨望の眼差しも、同情の視線も、どちらもほしくない。
たとえ誰からも相手にされなかったとしても、それならばそれでいいのだから。
私は平和主義者。
無駄な争い事は好まない。
どうか構わないでください。
私を放っておいてください。
保護色で背景に同化するように、透明色であたかもそこに居ないかのように、居ても居なくても一緒であるように存在することが、私の望みなのです。
どうか私で争わないでください。
幼く可愛い兄弟、姉妹よ。
私は他の皆と同じなのです。
大した違いなど無いのです。
この見た目に騙されないで。
どうか探さないでください。
もし見付けたとしてもどうかお気になさらず。
喧嘩しないで。
取り合わないで。
怒らないで。
作ってくれた人が悲しむ顔は見たくないのです。
私なんて居なくてもいい。
消えてしまったっていい。
だって、居ても居なくても一緒でしょ?
私の存在が、味に影響を及ぼす訳じゃなし。
仮に私が全身白タイツを着ていたとしたら、きっと誰も気付きやしない。
波風を立てず、器の中にただひっそりと存在する私。
だから居ても居なくても同じ。
そんななら、そうであるなら、最初からここに居なければいいでしょう?
揉め事を引き起こす種となることは本意ではないのだから。
始めから、皆と出会わなければいいの。
そうすればきっと皆が幸せ。
皆が笑顔。
それが皆の当たり前。
「おかあさん、ぴんくのちゅるちゅるなぁい?」
「残念。今日はお素麺だから入っていないのよ」
「みどりのちゅるちゅるも?」
「そうね、今度はまた、ひやむぎを買ってこようね」
「そしたら、かわいいちゅるちゅるある?」
「そうね、きっとあるわ」
「ぴんくがいい」
「そうね、また今度ね」