第2刀 火の剣
第2話です
私は日本のお偉いさんに呼ばれ対談という名の一方的な尋問をされている。
「何故あの施設を爆破した」
15対1という数的不利の場で問いただされる。
「爆破…ですか」
私は簡単に返す。
「そうだ、○○県にあった研究施設の事だ」
「あそこは我々にとって重要な施設だった、それを君たちに爆破されたのだから今こうして呼び出したのだよ」
男は怒りを隠しきれぬ様子だった、私は冷静に返す。
「爆破されたというだけで我々を疑うのですか?言われ尽くした言葉ですが証拠はありますかね」
「黙れ!あの様な爆発を引き起こせるのは貴様ら雷宝軍だけだ!残骸すら残らない全て『溶けた』ような爆発だ!貴様ら以外に誰が出来る!」
なるほど、確かに彼が怒るのも仕方がないか、あの研究施設はたしかにこの世界にとって重要な役割があったから、だが私は彼らミチノク部隊に破壊するよう言っていない。
「すみませんが、我々は確かにあの研究施設を攻撃しました、ですg…」
「やはり爆破したのだな!あの施設がこの国の未来のためにあったことを知りながら!!」
そう割り込んで叫び、男は周りの男達に合図をし銃を私に向けてきた。
私は目も動かさず男の目を見つめた、男の目にはこちらの説明を聞く耳を持たないという意思があった。最初から男はここで私を殺害する気だった。
私が雷宝軍所属の幹部であり研究者であるから戦闘経験も抵抗手段も何も無いと、そして幹部を1人殺害したのだからお前たち全員を殺害することが出来るんだぞと言うために。
「残念ですが、この選択をした時点でここから先、5分以内の真実は確定してしまった、私はもう少しあなたと話したかった」
そう言うと男は遺言を聞いたと思い男達に引き金を引くよう合図をした。
14方向から迫り来る金属の塊、人への殺傷能力は十分、だが私はソファに座ったままお偉いさんを見つめていた、男は笑っていた、だから私も着弾するまでの数フレームの間笑って返した。
放たれた弾丸は対象の脳をズタズタにする予定だった、だがそれは叶わなかった。弾丸は着弾せず体をすり抜け向かい側にいた仲間の足や腹を貫いた。誰が予想出来ただろうか、投げたボールが壁をすり抜けて向かい側にあった花瓶を割ったのだから。
男は何が起きたのか理解出来ず座ったまま固まっていた。
私はその男に言った。
「たしかに我々はあの施設を攻撃しました、ですが私は彼らには施設を破壊しろと言っていませんし、彼らの装備には爆弾はありません、銃と弾丸と剣を回収するためのケースだけです」
「私たちはあなた達を敵対していません」
男は黙って聞いていた。
「では…何故施設が爆発したのだ…」
男は震えた喉で発した。
私は話した。
「推測でしかないのですが、剣が爆発したとしか考えられません。私達も原因を調べているところですから」
立ち上がり私は部屋を出た。
「疲れた」
そう言い俺は姉のロアと夜遅く高校からの帰宅路を歩いていた。
姉はとっくに授業が終わっており先に帰れるのに俺の用事が終わるまで待っていた。
「おつかれ〜、晩御飯はうどんだから楽しみにしててね〜」
うどん、俺の大好物だが喜びを隠す。
「なんで姉ちゃん先帰らなかったんだよ」
気を紛らわすために質問をする。
「最近行方不明者が出てるからに決まってるでしょ?ロイが帰ってこなかったら嫌だから待ってたのよ」
そういう事か、俺は納得した。
最近この街では行方不明事件が多発しいる、ありきたりな行方不明事件だ、夜一人で歩いていた人が居なくなり行方不明になる。物語の最初に起きそうな事件だ。
その後は先生の愚痴を言ったり授業のことを話したりしていた。
瞬間、悲鳴、俺たちは一瞬立ち止まる。
悲鳴のした方向へ同時に走り出す、無駄な会話をするより早く現場に行く方が優先だ。
誘拐事件もあり助けることが出来れば助ける、無理なら犯人の特徴を記憶する。
現場まではそう遠くなかったのですぐに到着した、犯人は屈強な大男なのか細身で凶器を持った人なのか、それによっては対応が変わる。
目に入ったのは異種族、人では無い生物。
黒いコウモリのような翼、血の気のない顔色、銀色の長髪、まさに吸血鬼と目で見て言える特徴の異種族。
「うぉっ」
俺は久しぶりに異種族を見たため少し隙が出来てしまった。
瞬間、こちらに高速で迫ってくる犯人、両腕を交差し防御の構えをとる。
衝突、俺は吹き飛ばされたがすぐに立ち上がり近くの石を投げる。
吸血鬼はそれを見ていた、だが「ただの人間の投擲」だと思い込んでいた奴はそれを正面から受けた。
石は奴の額にあたり吸血鬼は後方へ吹き飛ばされる。当たり前だ、「魔人族」の投擲だぞ。
「ロイ大丈夫!?」
姉が襲われていた女性へ駆けながら俺に言う。
「準備運動、うどん大盛りで頼む」
俺は拳を握り奴に殴り掛かる。
紅く染まる空。
俺達4人は異様な光景に動きが止まる。
背後からの足音に振り返る、後ろから1人歩いてくる、剣を持った少女。
振り返る、そこには既に吸血鬼は居なかった。
熱い。
首元に灼熱の剣。
目の前にはさっきの少女が立っていた。
「貴様は害獣か?」
何を言っているのか分からず何も答えれなかった。
「答えろ」
そう言い少女は俺の首に剣を押し付ける。
皮膚が裂け肉が焼ける、アドレナリンで痛みは多少軽減されているが死ねる痛さだった。
「貴様は魔人族だろ?」
やっと理解した、この少女は「異種族」を殺しに来たのだ、「害獣」と言っていたのは人を襲う異種族のことを言っていたのだろう。
「たしかに俺は魔人族だ、だが俺は人を襲っていないしむしろ助けてきた」
俺は嘘を言わず無罪を主張した、この手の相手はだいたい嘘を見抜く能力かなにかがある。
「…そう」
少女は剣を収めどこかに消えた…剣どこにしまった消えたぞ。
「あーマジでやばい痛ぇ…」
首を押えて倒れる、火傷で止血されて血は出ていないが普通に首を切られているのだから痛くないはずがない、アドレナリンってすげぇな。
痛みから逃げるように意識が遠のく、血が流れて意識が遠のくのはよく小説で見るが痛みでこうなるのは聞いたことがない、まぁこうなるのだろう。
泣いている声と救急車の音が聞こえる、姉が呼んだのだろう、とりあえず痛みから逃げよう。
読んでいただきありがとうございました。まだ続きます。よろしくお願いします。