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第四章 ペナルティマッチ バックアタックゲーム①

団体バトル当日の朝、いつものように真子が俺の家まで迎えに来た。


「おはよー、今日も晴れて気持ち良い朝だね!

そういえば快斗知ってる?今日はバトルの模擬戦があるらしくて、来週からは私たちもバトル解禁なんだって。」


「おう、知ってるぞ。俺お手本お願いされたし。」


「この前の青貝の時はさ、なんとか勝てたから良かったけど!きちんとルール覚えないと、実力を発揮できないかもだから、ちゃんとやり方覚えよよーね!

、、、ってええ?!快斗がお手本するの??」 

タイムラグがあったが、ぱっと口元を抑えながら驚かれた。

そういえば、ペナルティマッチ云々について真子には伝え忘れていた。不服そうに頬を膨らませている真子に、遅ればせながら経緯やルールを伝えた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「団体バトル 3:3バックアタックゲーム」


1.当バトルは、15点先取 1試合にて勝敗を決する

2.セッター1名 レフトスパイカー1名 ライトスパイカー1名 ポジションは固定。

3.ブロックはどのポジションの選手でも可能。

4.スパイクはスパイカーのみとし、アタックラインより後ろからのバックアタックのみ可能とする。

5.ネットにかかったスパイク、サーブ、オーバーやアンダーなどいかなる理由であろうとも、アタックラインより手前に落ちたボールはアウト判定とする。


※ペナルティマッチ 限定ルール

敗者チームのメンバーは、勝者チームのメンバーに10VPを譲渡すること


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「えええっ、じゃあ快斗負けたら今日で退学になっちゃうってこと??!!あとで、青貝に会いに行かなきゃ、、、」


「青貝なら、ものすごく反省してたから許してあげてくれ!!それになんだ、話してみたらあいつ結構いいやつでさ!」

試合が始まる前に、味方チームの戦力を削るわけにはいかないので、咄嗟に青貝のフォローを入れる。それに最近青貝が面白いやつだと思うのも嘘ではない。


「快斗がそういうなら、、いいけどさ。」

なんとか衝動を抑えてもらえたようだ。

チラリと時計を見る。安心したのも束の間、話し込みすぎたこともあり、またも遅刻しそうである。

「真子、時間が!走ろう」


・・・・・・・・・・


「はぁはぁー、はぁ、はぁーー。」

「おう遅かったな快斗、俺とヒナしかいないからどうなることかと不安だったぜ。間に合って良かったけどよ」

「ほんとそれよ!しっかりしてよねキャプテン!」

いつのまにか、俺がキャプテンになっているが青貝をキャプテンにしたくないし、遅刻しかけた罪悪感もありグッと飲み込んだ。

「わるいわるい、ちょっと朝ドタバタしててな」


「なんだ、あいつらぁ、、対戦相手が、小太りと女子生徒と、遅刻ヤローの3人か。ふんっ楽勝そうだな。」

「辰三、口が悪いぞ。まぁ俺と淳二のスパイクに手も足も出ないのがオチだろうが。」


春高バレーが開催される体育館ほどの広さの会場であり、相手コートとは距離があるにも関わらず、悪口が耳に入ってくる。


美優の事前情報では、園田三兄弟は長男から順に、園田一彰、淳二、辰三というらしく、いずれもバレーの実力もさることながら、素行の悪い生徒という方でも有名であったらしい。


「なによ、あいつらー!ていうか園田たちも、揃ってさっき着いたばっかりだったんだよー!

遅刻した人数差でうちのチームの不戦勝!とか青貝と話してたしねー」

「なっ!あいつらゼーゼー言って、息切らしてきてたもんな。」

「なら、俺が園田達を足止めして不戦勝を狙うべきだったか」

「それも良かったわね、それだと快斗は遅刻で退学かもしれないけど ふふっ」

ヒナの笑顔をみるに、多少本音も混じっているのではないだろうか。ひとまず苦笑いで応対し、ドリンクの準備をしている美優に声を掛ける。


「美優は、ペナルティ対象者じゃなかったのにサポーターを申し出てくれてありがとう。本当に助かるよ」


「いえいえ、仲間に入れてもらえて嬉しかったし、好きでやってるだけだから気にしないで」

小さく首を横に振りながら微笑んでいる様は、やはり天使のようだ。


「試合前だし、園田達について改めて確認しよう。美優、説明お願いできるか」


「うん...園田くん達は、速いトス回しが特徴で中学時代は、そのスピードで他チームを圧倒してたみたい....ブロックはついていけないかもしれないけど、身体の正面にしか打って来ないし、球も比較的軽いのでレシーブ位置にしっかり入れたら皆んななら上げられると思う」


一呼吸おいて再び言葉が紡がれる


「あの、、私は応援しかできないけれど皆んな頑張ってね....!」


「サンキューな美優ちゃん!俺の華麗なるレシーブで1点もやらねーから安心してくれ!!」

青貝が鼻の穴を膨らませながら、食い気味に返答する。空回りしないことを祈るばかりだ。


そうこうしていると、見たことのある女性が審判台の隣にどこらかともなくふっと現れる。


「会場の皆様、お待たせしました。恐縮ですが、今回のバトルも黒翼会の私、黒楊(コクヨウ)が取り仕切らせて頂きます。


ルールについては、各クラスごとのギャラリー席にて、担任の先生方と黒翼会の者から説明を受けたかと思いますので省略させて頂きます。


サーブ権は、コイントスの結果、Fクラスからとなります。

それでは両者ご健闘をお祈り致します。」


黒楊(コクヨウ)からサーブ権のボールをもらう際に、ぼそっと呟かれる。


「・・・・どうぞ快斗様、、今回の試合も大変期待しております、、そしてあなたの秘密、、知っておりますよ、、、、」


「おいっ、、ちょっと待て、、!」

黒装束から覗く大きな黒目が、試合を始めろ

ろと目で訴えかけている。詳しく聞きたいが、周りの目もあるため渋々受け取ったボールを、青貝に渡す。


快斗チームのポジションは、レフト快斗、セッター雛菊、ライト青貝であり、青貝サーブから始まる。

対する園田チームのポジションは、キャプテンである園田長男がレフト、園田三男がセッター、園田次男がライトである。

3つ子なだけあり、顔も背格好もよく似ており、途中でポジションが入れ替わってもバレないのではないだろうかなど空想に浸っていると

ピーッというホイッスルが鳴り響き現実に引き戻される。

「そらっ、いくぜっ!!」


「はっ!威勢が良い割に大したことねーな!!なんだこのフローターサーブ!辰三、いつものやつくれ!!」


「合点、せいぜい見惚れてな!"共時性平行トス"(パラレルシンクロニシティ)」


ほいっ という声と共に、無重力・無回転の高速平行バックトスが辰三の腕から放たれ、数秒後には、スパァン!!!! と軽快なスパイクが快斗達のコートに突き刺さる。


「ごめん、私のせいだね、、! 次はブロック飛んで止めてみせる」


「大丈夫、大丈夫!楽勝で勝ってもつまんねーし、ハンデくらい与えてやらねーと。さぁ切り替えるぞ!」


「謝罪は不要だ。想像以上に速い、、あれは俺でも追いつけないな」

ブロックに飛べなかったのも無理はない。辰三のトスは、高校でもトップクラスのスピード違反の超平行バックトスであり、これに完全に合わせて打つことができたのも、三つ子の強固な信頼関係があってこそであろう。


試合は完全に園田チームに主導権を奪われた。


「うそっ、、ほんとに速すぎるわ。皆んなごめんね!」

スパァン!!!!

スパパァン!!!!!!!と その後も、高速バックトスからのノーブロックのスパイクが容赦なくレフト・ライトから降り注ぐ。


事前に美優から聞いていた通り、身体の真正面にしか打ってこず球も重くはないため、コースに入れさえすればレシーブはできる。


青貝の"全身防御"(フルリジェクト)で繋げたボールから、負けじと、こちらもサイドからのバックアタックで切り返すなどしてしがみつくが、ブロック有りのバックアタックと、ブロック無しのバックアタックでは決定率の差は明白だ。


点差は広がり14対11で園田チームリード。サーブ権は快斗の番だ。


「おやおや、あんなに元気だったのに静かになっちまったな。俺が出るまでもないな。ラスト1点はライトで決めるか!淳二、用意しとけよ!」

「ノーブロックだから楽勝楽勝!どのコースに打とうかな。ま、どこでも決まるだろうけど!ははっ」


既に相手は勝利ムードだが、まだ諦めてないやつがふと目に入る。ギャラリーで立ち上がりながら応援してくれている真子だ。


「かいとぉーーー!!!!なに手抜いてんの!負けたら許さないからねーー!」


「アイドル様からの声援があっては、頑張らないわけにもいかないか...」

思わず笑みが溢れる。


「審判、タイムを取らせてくれ。作戦会議をしたい」


流れを切るためにもタイムを取ったが、何も思いついてはいない。3人とも はぁはぁと息を整えながら、腕を組む。足踏みの音が響く。。


----どうすれば良い、ブロック無しではあまりにもコースが広すぎる...かといって...


「あのすみません....私、試合を見てて気付いたことがあるんです。お伝えしても良いですか...?」

美優がおずおずと、おそるおそる手を挙げる。


「もちろんだ。話を聞かせてくれないか、、!」


園田達の高らかな声を他所に、美優が静かに話し出す。

果たして流れを断ち切る光明となるのか。はたまた、このまま敗北・退学か。快斗達の運命やいかに、、


以上 第4章

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