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第三章 オリエンテーションと新たな仲間


入学式翌日、クラスに着くと早々に俺の席に近づいてくるものがいた。見たことのあるシルエットだと思えばそう、、青貝だ。


「おはよう、、昨日はごめん。Fクラスだからってバカにして悪かったな。というか、Fクラスの実力とは思えなかったが、、、まぁそれはいい。

 何か困ったことがあったら、言ってくれ。俺の2個上の兄貴もこの学校に在学してるから、それなりにこの学校については詳しいつもりだ」


心なしか青貝の左頬が赤いのと、やけに協力的なことから、おそらく真子に謝罪してから俺のところに来たのだろう思われる。

青貝の心の変わりようも気になるところだが、俺にはそれ以上に気になる事が一つあった。


「気にしないでくれ、俺たちも掲示板の前で長居しすぎたのは事実だし。ところで話は変わるが、一つ確認したいことがある。

 さっき青貝は、このクラスの出席番号1番の席に座っていたように見えたが気のせいか、、、?」


「そのことか、、お前の言うとおり俺は1-F、出席番号1番だ。

ここだけの話、昨日のクラス掲示の貼り紙には間違いなく俺の名前は、1-Dの欄にあった。

 だが今朝見たら貼り紙が、取り替えられていて、俺は1-Fってことになってた。

 先生にも確認してみたが、昨日のは見間違いじゃないかってまともに取り合ってくれやしなかった、、。」


間違いなく俺との対人バトルで評価を下げたのが原因だろう。

とはいえ、一度決めたクラス編成を急遽変更など本来ありえてはならない、、。それほどにこの学校における、上層部の力が強いと言う事なのだろう。


「あははっ、あんなにFクラスのことバカにしてたのに、自分がFクラスになっちゃうなんて、特大ブーメランだったね!」

ふと隣の席を見れば、背が高く、ポニーテールでグラマー、まさにバレー選手と言った見た目の女子生徒が楽しそうに足を組み座っていた。


ストレートなもの言いだったが、爽やかで不思議と嫌味に聞こえない。青貝も同じ気持ちだったのか、素直に受け入れる。


「見てたのか。返す言葉がねえよ。」


「ごめんごめん、2人とも凄かったよ。とても下位クラスの試合には見えなかった。私の名前は雛菊由紀子、皆からはヒナって呼ばれてる。仲良くしようねー、1年間よろしく!」



ガララッッ、ガラッ、バタン。


「おーい、盛り上がってるとこ悪いが、みんな席に着席してくれ。ホームルームを始めるぞ。」


綺麗な若い女教師であったが、言葉に重みがある。皆すぐに自席に戻り姿勢を正す。


「よろしい。私は源藍子、今日から1年間お前達の担任を受け持たせてもらう。

 今日の予定は、オリエンテーションや身体測定、校内見学ぐらいだ。この学校について皆の理解が深まればそれでいい。

ふむ、、、どの程度の理解があるか気になるな。

 いきなりだが、出席番号16番の雛菊由紀子、この学校では、毎年Fクラスの下位10人は退学となることは知ってると思うが何故だと思う?」


「はい。この学校の生徒の学費は全て免除、税金で賄われているので、向上心なく続けられては国としても学校としても困るからだと思います。」


「そのとおりだ雛菊。他にも、ここの食堂、トレーニング施設、先生やバレーコーチの人件費なども税金で賄われている。

いずれもハイクオリティであり、ここまで手厚い待遇は通常の学生としてはまずありえないレベルだ。

 そうだな、次は出席番号20番の柳美優、退学の下位10名を決める基準を説明できるか?」


「えっと、優秀な行いや、実績を残したものに与えられるVP(バレーボールポイント)が基準で、、毎年3月31日時点でのVPが少ないFクラス下位10人が退学、、だったかと思います、、。」


ショートカットで大人しそうな生徒が、自信がなさそうに回答していたが正解だったらしく、源先生から褒められたのち、途端に顔が明るくなる。可愛らしく微笑んでいた彼女に癒されていたのは、きっと俺だけではないだろう。


その後も、源先生は様々な生徒に問いかけながらこの学校のことを説明してくれた。





・・・・・・・通常の学校のように、国語・数学・英語などの授業が行われるが、部活動は全員バレーボールであり所属は強制、クラスごとで部活の練習が行われる。

VPは部活動の時間で顧問の先生から付与されたり、昨日の青貝のように生徒同士でのバトルを行い取得するほか、イベント戦という学校行事で付与されたりするそうだ。

また、学業の成績優秀者、つまりは定期考査などで上位の場合もVPが付与される。

そして、当然ながらVPの減点制度もありVPが0になった場合、その瞬間に一年を待たずに退学となる。

なお、4月1日時点でのクラスによって、付与されるVPは決まっており、Aクラスの生徒であれば60VP、Bクラス50VP、Cクラス40VP、Dクラス30VP、Eクラス20VP、Fクラス10VPが生徒各々に付与される。

基本的に、次年度のクラス分けも3月31日時点の保有VPをもとに行われるので積極的にVPの取得に励むこと。・・・・・・・

 





「私からの説明は以上だ。皆よく入学案内を読み込んできていたようで感心だ。

 しかしだ、残念ながらこのクラスに2名、入学早々に校則違反を犯したものがいる。青貝、鳴宮、そうお前らだ。

 個人バトルは基本的に自由だが、入学から最初の1週間は禁じられている。

 バトルのやり方や、施設の使い方は知っていたのに、この規則を知らなかったか?まぁいずれにしてもペナルティを与える。」


「ま、待ってください先生。俺は、バトルを仕掛けられた側なんですが、、!」


「喧嘩両成敗というやつだ。売られた喧嘩を安易に買うやつも悪い。買うならそれ相応の責任を覚悟するんだな。

 さてペナルティだが、今週金曜の団体バトルの模擬戦に選手として参加してもらう。

 本来一年生はこの模擬戦で、バトルのやり方や施設の使い方を学び、翌週月曜日から生徒間でのバトル解禁となる。

 まぁ、ようはお前達には、お手本をお願いしたいという話だ。

で、対戦相手だが、実はちょうどCクラスでも校則違反者が3名いてな。そいつらと3:3のバックアタックゲーム形式の団体バトルをしてもらう予定だ。」


「先生、大体内容は分かったけど、俺と快斗だと1人足りてません。」


「そうだな、、雛菊に出て貰おうか。雛菊勿論いいよな、、?」


「は、はい!その団体バトル私も参加します、、。」

出場することに、メリットはなさそうだが、何か逆らえない理由でもあるのか、雛菊はぎこちなく承諾した。


「よし、決まりだな。そうだ、ちなみにこのバトル10VP賭けてもらう事になる。となるとお前達は負けたら即退学、、ということになるな。3人とも金曜日は健闘を祈る。」



とんでもない話だったにも関わらず、先生は全く同情する様子もなく、ペナルティだから当然だと言わんばかりのすました顔をしている。綺麗な花には棘があるとはこのことか、それともこの学園では日常茶飯事であり、些細なことだとでも考えているのだろうか。


何にしても、俺たちに拒否権はない。3人とも無言で頷きオリエンテーションは終わった。

 



その後、お昼休憩になったので、俺、青貝、ヒナの3人は食堂でバトルの相談をすることとなった。


「2人とも本当にわるい。面倒な事に巻き込んじまって。」


「気にするなよ。まさか退学がかかったペナルティとは思わなかったけど。勝てばいいし、勝ったら20VPになるから、次年度Eクラスに上がれる可能性も高いしな。」


「そうそう勝てば問題なし!

あ、待って、、あの子同じクラスの柳美優、、さんだったかな。声掛けてきて良いかな、、?」

俺たちの返答も待たずに、食堂の片隅で1人ご飯を食べている生徒の前まで行き、バタバタと戻ってくる。



「どうも気になっちゃって!連れて来たよー!」


「初めまして、柳美優です。すいません、入れてくれてありがとう。私人見知りで、全然話しかけれなくて、、。」

近くで見ると、より一層可愛らしい。天使を連れてきてくれてありがとうヒナ、、と心で呟くと同時に、青貝がニヤけていることに気づく。


「青貝顔が気持ちわるいぞ」


「いやいや別にフツーだろ、快斗こそニヤけてるぞ」

おっと、こちらも隠しきれていなかったようだ。慌てて顔に力を入れ直し、青貝の言葉は聞き流す。


「あの、、金曜日Cクラスの人たちとバトルするんだよね。

たぶん相手は、富士宮中学の園田3兄弟だと思う。昨日、たまたまその3つ子の3人が怖そうな先生に怒られてるのを見かけたから、、」


「私も見た!体育館横のコンクリートのとこだよね。

初日から大遅刻するとはなんたる事だ。お前達は海皇高校生としての自覚が足りん!!!とか言ってすっごい怒られてたよー!」



初日から寝坊するのも驚きだが、三兄弟揃いも揃って寝坊することに驚きを隠せない。誰か1人くらい起きれなかったのだろうかと思いつつ、疑問が生じる。

「ならきっと俺たちの対戦相手はそいつらだろう。

けど、よく園田兄弟だって分かったね」


「実は私ちょっとしたバレーオタクっていうのかな、バレー観戦が趣味で、世代問わず全国の有名なバレー選手のことは大抵知ってるの。

 先週スポーツドキュメンタリー番組で、園田三兄弟がテレビで取り上げられてたからっていうのもあるけれど」


「おお、頼もしいぜ!

だったら美優ちゃんに園田兄弟のこと教えてもらって、事前に対策練っていこうぜ!」


青貝の言う通りである。

現役プロ時代もそうだったが、相手の分析をして対策を練ることは非常に大切だ。元いた世界では、バレーアナリスト・データ戦略スタッフという職業もあるほどであり、その需要は大きい。



思いがけず強力な仲間を得ることができたのは、とてもラッキーだった。FクラスとCクラスでは、単純な戦力では不利である事に変わりはないが、俺たちは不思議と勝てるという自信に満ち溢れていた。


「やってやろうぜジャイアントキリング!Fクラスの底力見せてやろうぜ。金曜絶対勝つぞおぉーー!!」

「「「「おおおぉぉー!!!!」」」


こうして団結も深まり、まもなく俺たちの退学を賭けた戦いが始まろうとしていた。


以上 第3章

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