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第二章 クラス分けと対人バトル

学校に着くやいなや俺たちは、生徒が群がっている掲示板に向かった。どうやら今年度のクラスが張り出されているようで、人が集まるのも無理はない。

しばらくしてやっとのことで、俺たちも人混みを掻き分け自分の名前が視認できる位置まで辿り着く。


「俺のクラスは、Fクラスか。真子はどうだった?」


「私はね、、ふふっ内緒!とりあえず快斗とクラス違うみたいで残念、、。次は一緒のクラスになりたいね!」

「それはざん、、」

ドンっといきなり後ろから突き飛ばされる。

「どけよ、Fクラス。雑魚のくせにトロトロしてんじゃねえ」

見知らぬ、ちょっと小太りで吊り目の少年が、俺を睨みつける。


「確かに、クラス掲示の前で長居しすぎたかもしれないけど、突き飛ばすことは無いはずだ。ちょっと失礼すぎやしないか?」


「おまえさ、ギリギリ入学できたFクラスだろ。すぐに学校からいなくなるやつらからどう思われようと問題ないな.....可愛い女といちゃつきやがって」


「ちょっと快斗に謝ってよ、それはいくらなんでも失礼よ」


「なんだ性格は可愛くないな。謝らねーよ!いや、、俺と対人バトルしてこいつが勝ったら謝ってやってもいいぜ。その代わり、こいつが負けたらお前らは1VPずつ寄越せ。」


「望むところよ!!海斗こいつボコボコにしちゃって」


「威勢がいいな。こいつ呼ばわりされるのも気に食わねーもんだな。ちっ、自己紹介遅れたが俺は青貝悠人だ。これが終わったらもう会うこともないだろうがよろしくな、、」


「俺は、鳴宮快斗。こっちは、井上真子だ。よろしく」


正直バトルまでする気はなかったが、ここまでくるともう引き下がれない、やるしかない。

そういえば青貝悠人聞き覚えがある。確か中学時代に埼玉県ベストリベロ賞を受賞していた有名人。

それにしても、Fクラスはいなくなる?バトルとは何か?VPとはなにか?とまたしても疑問が生まれるが、すぐに吊り目が口を開く。


「おらっ、ボサッとすんなよ。行くぜ対人闘技場、時間もないし1セット先取だ。」


対人闘技場とやらに着くまでに、俺は真子からありがたく説明を聞かせてもらう。そもそも戦うことになったのは、真子の意向が強いのだから当然とも言えるが。


対人闘技場は少し小さめの体育館といった感じだ。

通常の6人制コートの6分の1くらいの広さで、ネットは無く白線だけが引いてあるコートが10コートほど用意されていた。


対人は、俺の想定していた通りバレーボールのアップメニューの1つの、あの対人パスだ。

2人1組で行うもので、Aが地上でスパイクを打ち、Bがそれをレシーブする。Aは返ってきたレシーブをトスして、今度はBが Aにスパイクを打つもので、互いにボールを落とさないようにスパイクをレシーブし続け合うアップメニューだ。


通常の対人パスとの違いは、これがバトル形式になっており、ボールが地面に落ちた時点でジャッジとなり、ボールを落とした過失がどちらにあるかで勝敗が決まる。


また判定には、正体不明の審判団体 (黒翼会)という黒装束の組織から1人が立会人として派遣され、公正なジャッジをしてくれるとのことだった。



「さて、先行ボールはFクラスのお前に譲ってやる。へなちょこスパイクを華麗にあげて自信喪失させてやるよ」


「快斗〜〜!あんな吊り目小太りやっつけちゃえ!!」


掲示板の前で目立ってしまったからか、気付けば真子以外のギャラリーも大勢いる。少し緊張してきたが、只の対人パスの延長だと気持ちを落ち着かせる。


ピーッと笛の音が響き渡る。始まりの合図だ、 

スパイクが俺の右手から打ち放たれる。俺の球威に多少動揺をしたように見えたが、相変わらず口数が減らない。


「どうしたそんなもんかぁ!ちょっといいスパイク放るようだが、そんなスパイクじゃ俺は絶対にボールを落とさないぜ!」


生意気な口を叩くだけの事はあり、青貝は上手かった。体型に怠慢が見られるが、さすがは埼玉ベストリベロなだけはありレシーブが上手く、ミスするイメージが湧かない。


「なら、、これはどうだぁ!!!」


パアァァーンとスパイクのミート音が闘技場に響き渡る。このスパイクは先程までと違い、青貝の胸元に打ち込んだものだ。

バレーボール選手にとって否、人間にとって1番難しいのがこの位置でのレシーブだ。

アンダー・オーバーどちらで取るのも難しく、なんとかあげれたとしてもミスをしてあらぬ方向にボールが弾け飛んでいく可能性が高い。


ボンッ!!と鈍い音がして、ボールが高く上がり、見事な軌道で快斗に返球される。

俺は目を見張った。なんと青貝は"胸トラップ"で俺の渾身のスパイクを完璧に上げてきた。


「確かに球威もコントロールも見事だったが、俺の"全身防御"(フルリジェクト)の前では無意味だ。俺はこの身体のどの部位でもあげるテクニックで、あらゆるスパイカーの心を折ってきたからなぁ!!!」 


「快斗ー!!!まずいわ、、対人バトルには時間制限もあるの。このままどちらのミスもなくボールが落ちなければ、芸術点で青貝の判定価値になる確率が高いわ、、」

不安そうな顔が、横目に映る。


相手はリベロということもあり、そこまで強いスパイクは飛んでこないため、こちらのミスも無いものの、確かにこのままでは先程の見事なレシーブが決定打となり、真子の言う通りになりそうである。


仕方ない、、大人気ないが、ここは"奥の手"を出させてもらうか。

青貝が俺のモーションを盗んで、予想して構えているのが目に入る。そうはさせるか、、、と俺はミートさせる瞬間、目にも止まらぬ早さで、手のひらだけ向きを変えてボールの左側面を強打した。


「レシーブ位置間違えてるぜ。もう遅いけど」


スパアァァーンとスパイクのミート音が再び闘技場に響き渡ったあと、ドンッとボールが床に落ちる音が聞こえた。


「なん、、だ、と?」


青貝は開いた口が塞がらない。確実に快斗の身体の向きからは、スパイクは右斜め前に来るはずだった。だが実際はどうだ、左斜め前、全くの真逆である。


「バカな、、百戦錬磨のこの俺が騙された?!こんなことできるやつなんて全国のどこにも、、、、」


青貝の言う通り、これは中学レベルでは体験することはまずないだろう。

"虚像動作"(フェイクモーション)これは日本代表として戦う中で快斗が身につけた必殺技とも言える代物だ。プロ相手にも得点力を発揮するこの技に、ついこの間まで中学生だった青貝に、到底反応出来るはずがない。


ピーッ、試合終了の笛が鳴る。


「勝者 鳴宮快斗。敗者の青貝選手は1週間以内に、鳴宮さん及び井上さんへ謝罪するようにしてください。履行されない場合、厳しい処罰を下しますので、決してお忘れのならないように、、、。皆さま、これからも黒翼会をどうぞご贔屓に。それではご機嫌よう。」


完全に仕事一辺倒の無駄のない喋りであり、覇気は感じなかったが、厳しい処罰をの部分で青貝が少し身を震わせていたので、きっと履行を拒否した場合、とんでもない処罰があるのだろう。


なんにしても勝ててよかった。ドッと疲れが押し寄せてくる。


「快斗おめでとう!!私は勝てるって信じてたよ!!」


まずいわ!とか言って不安そうにしていた記憶はすっかり抜け落ちてるようで調子が良い。いずれにしても、こんな可愛い子に駆け寄られて賞賛の言葉をかけられて、悪い気になる男はいないわけだが。


「けど、快斗!喜んでばかりもいられないよ!もうこんな時間!急いで第一体育館へ向かおっか!!」


その後、青貝やギャラリーも含めて、走りに走って俺たちはなんとか入学式に参加することができた。


・・・入学初日からトラブルに巻き込まれて災難だったなぁ。もう明日からは平和に暮らしていきたい。そう切に願う快斗であったが、これから次々とトラブルに巻き込まれていくことを彼は知る由もない。


以上 第2章 

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