3話 レベルアップ
「まずい! それに触れたら――」
「駄目! もう、足が動かせない! それに何か、何か吸われて……」
急いで銀色のスライムと距離を取ろうとしたけれど、あっけにとられていたせいでわずかにだけど、それに足の先が触れてしまった。
それは本当に少し。それなのに地面と私の足をそれは強力にくっつけてしまった。
力を込めようと踏ん張ってみるけど、だんだんと体から力が抜けて立っているだけで疲労を感じてしまう。
まるで勢力を吸い取られているようなそんな感じ。
そういえばダンジョンに存在する生き物って、その生命力維持のために『魔力』ってものが必要とか……。
「奴は食事中、魔力を飲み込む瞬間だけ気が緩む! そのタイミングで――」
「そんなの私にわかるわけがないでしょ! こ、の……離れなさいってば!」
銀色のスライムから逃げるという意識を捨て、石を投げた時と同じように相手に殺意を込める。
すると銀色のスライムの身体は次第に毒々しい紫色へと変色を始め……。
「――きゅ、ぅ」
「動かなく、なった?」
「う、そだろ。殺したのか? あの無敵の『アイアンスライム』を……。魔法も剣も、全ての攻撃が効かなかったモンスターを……」
『大量の経験値獲得を確認。レベルに対して得られる経験値が異常だったため、特別に報告。討伐したモンスター、アイアンスライム。取得経験値5000。レベルが1から25に上がりました。スキルツリーの解放。スキルポイント25を付与。レベルアップボーナス、体力の回復を実行。初級、中級、上級魔法習得が可能になりました。全てステータス画面より確認可能です』
レベルアップ……。
25レベルがどれくらいの評価を得られるのかは分からないけれど、いろいろ強くはなったみたい。
それに脱力感も感じない。それどころか疲れが全部なくなって、漲るくらい。
ダンジョンという特別な場所による特別な仕様。まるで現実じゃないみたいな不思議な感覚ね。
「……姉ちゃん、あんた一体何者なんだい? 俺はてっきり新米探索者だと思ったんだが……」
「おほん! 私は誇り高き……。いいえ、あなたの言う通り今日初めてダンジョンに潜った新米探索者よ。名前はエ――。……。ただのアメリア。よろしくね。えーっと」
「俺はハインツ。宿屋の主人と探索者の兼業をしているもんだ。残ったスライムは逃げてってるみたいだし……。いやあ、本当に助かった。感謝するぞ、アメリアちゃん」
「ちゃん……。まあいいわ。それより怪我は大丈夫なの?」
「命に別状はないが……しばらくは動けそうにないな。スライムに両足の肉をちょいと溶かされて……。感覚としては酷めの火傷って感じか。回復魔法も魔力切れの状態じゃ掛けられんから、その悪いんだが、助けを呼んできてもらえないか? 探索者らしく報酬も勿論だす。ドロップ品もほとんどアメリアちゃんのもんでいい。ってこれは当たり前か」
「……助け、ね。悠長にしていると怪我が悪化するわ。……。ねえ、もっと報酬をもらえれば地上まで担いであげてもいいのだけど、どうかしら?」
「アメリアちゃん……。はっはっは! なかなかの善人かと思ったがそうかそうか! なかなかどうして強かだ! 分かった。見たところ持ち物は全部紛失しちまってるみたいだし、必要なもん一式と宿泊代、俺が奢って――」
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