73 ビーストヘルズ攻略戦
俺達はラインセル領にある工業都市グルブトレクから出た後、ドラゴン化したディアマトに乗り込む。
「ボレサス、グラインボルトの王がいる城まで案内お願いできるか?」
「はい。ディアマト殿。ムファザ様がいらっしゃるビーストヘルズ城は、このクルブトレクから東にあります」
「東じゃな、分かったのじゃ!」
ディアマトは返事を返すと、翼を羽ばたかせ空に浮き始める。
俺も皆が落ちないように空気の壁で囲い込む。
「それでは、行くかの!」
ディアマトはそう言うと東方向へものすごい速さで向かっていき、瞬く間にクルブトレクが遠くに遠ざかっていった。
しばらく東方向に飛んでいると、ボレサスが声を発する。
「……見えてきました! あれがビーストヘルズ城です」
ボレサスが指さす先には禍々しくそびえたつ漆黒の城が見えていた。
「ボレサス、そのムファザって王はあの城の中にいるのか?」
「はい。ただ、ビーストヘルズ城は強固な守りを誇っております。正面から突破するのは現実的ではないでしょう」
話をしている間に、城の付近に近づく。
「主様、どうするかの?」
俺はビーストヘルズ城に視線を向ける。
「なるほど……ボレサスの言う通り、分厚い関所に城自体が守られているんだな」
「あの兵士達を相手するのはさすがに我らだけだと多勢に無勢です」
ビーストヘルズ城の城門前や関所周辺には数多くの亜人族の兵士が守りを固めていた。
「……いや、俺に任せてくれ」
「アモン殿!?」
「危険ですよ!」
ボレサスと同様にテキサリッドも俺の発言に驚く。
「ディアマト、俺が先に城門前に降りるから、後で降りてきてくれるか?」
「分かったのじゃ、主様!」
「……1人であの大軍を相手するのですか!」
「うん。まぁ、見ててよ」
動揺するボレサスとテキサリッドと違って他の仲間は落ち着いている。
「アモン様、また後程でお会いしましょう」
「うん。それじゃ行ってくる」
俺はマイトにそう伝えた後、城門上空にいるディアマトから飛び降りた。
落下しながら俺は城門付近に視線を向ける。
「まずは、着地のスペースを作らなくちゃな……」
俺は兵士達が死なない程度の空気を圧縮した球を作り上げる。
「ちょっとどいてもらうぞっ! ……ウェーブ・キャノン!」
――ドゴォォンッ!
俺が放った空気の球が地面に激突した瞬間、圧縮した空気の拡散が発生し周りにいた兵士達を放射状に吹き飛ばす。
「「「グアァァァァ!」」」
兵士達は空気の球によって円状に弾かれ、俺が落下出来る範囲は確保できた。
「よし! ……あとは、落下の衝撃を弱める為に空気の層を展開してっと」
――ふわっ……スタッ!
俺は落下位置に空気の層を作り、落下の衝撃を軽減させながら地上に着地する。
「……近くで見ると、やっぱり多いな」
周りを見ると、先ほど吹き飛ばした兵士達が起き上がって俺を囲い込んでくる。
「ググ……!」
亜人族達の目は赤く光っており、理性を感じられない。
やはり、この兵士達も狂人化状態にさせられているんだろう。
「……すまんがディアマトが着地できるだけの場所を作らせもらうぞ! ……アブソリュート・シールド!」
――ブゥンッ!
俺は空気の壁を四方に展開し、そのままその空気の壁を放射状に放出する。
すると、放出した空気の壁に押された兵士達は、城壁にぎゅうぎゅう詰め状態となる。
「ディアマト! 今だ、降りて来い!」
俺は上空を見上げてディアマトに指示を出すと、ディアマトはすぐに皆を連れて降りてくる。
――ドスンッ!
ディアマトは俺が作ったスペースに降り立つ。
「さすが、主様じゃ!」
「さ、すぐに皆を下ろしてくれ」
「わかったのじゃ!」
すぐにディアマトは皆を手に乗せて背中から地上に下ろしてくる。
ディアマトの手から降りてきたエアリアが壁にぎゅうぎゅう詰めの兵士達に視線を向ける。
「あはは……すごい状態ですね」
エアリアに続いて、マリッサも勢いよく降りてくる。
「もう、アモン! 1人で相手にしちゃうんだから、私も戦いたかったわ!」
「マリッサ様。アモン様は敵を殺めずに無力化したいのです。無暗に傷つける必要はないのですよ」
「……わ、わかっているわよ! 言ってみただけ!」
マイトもマリッサに続いて降りてくる。
「やっぱりアモンさんはすごいにゃ!」
「ふふ、この光景はちょっと滑稽ね」
キャスティとエレナも壁にぎゅうぎゅう詰めにされている兵士達を見ながら降りてくる。
そしてラルクやボレサスとテキサリッドも皆に続いて降りてくる。
「……アモン殿。あれほどいた兵士達を退けるとは……驚きました」
最後に降りてきたボレサスはぎゅうぎゅう詰めの兵士を見て呟く。
「まぁね。……エアリア、早速で悪いけどこの兵士達も狂人化してるみたいなんだ。直してもらえるか?」
「そうでしたか……わかりました!」
エアリアはすぐに亜人族の兵士達に杖をかざし、呪文を唱え――
「キュアリー」
――ドワーフ族で行った同様の魔法を使うと、城壁にぎゅうぎゅう詰めにされている兵士達を光が包み込む。
光が収まると、兵士達は我に返って城壁にぎゅうぎゅう詰めになっている状況に混乱している様子だった。
「……この杖、すごいです……マナの構築効率が段違いです!」
魔法を使い終わったエアリアは杖に視線を向けながら呟く。
「お、早速強化された武器の恩恵があったみたいだな! ……っと、それはそうともうぎゅうぎゅう詰めにする必要もないよな」
俺はそう言うと、兵士達を壁に押しやっていた空気の壁を解除した。
「うぅ……ここは」
ぎゅうぎゅう詰めから解放された兵士達にボレサスが近づく。
「……お前達、どこまで覚えている?」
「あ、ボレサスさん! ……えっと、城に全兵士が集められたところまでは……」
「……私と同じだな。詳細は後で説明する。ビーストヘルス城内に賊がいるんだ。その者は私たちが倒す。その為にもお前達の手で城門を開けてもらえるか?」
「わ、わかりました! 皆の者、手を貸してくれ!」
ボレサスの指令によって、兵士達は固く閉ざされていた門を大勢の力によって開け始める。
俺は指示を出したボレサスに声を掛ける。
「へぇ……城門って大勢で開けるんだ」
「はい。ビーストヘルズの城門は敵兵の侵入を防ぐ為に大勢の兵士の力を合わせないと開ける事ができない重たい門で守られています。本来は開け放たれていますが、今回のように守りを固めている時などは固く閉ざされています」
ボレサスが説明をしている合間に城門は多くの兵士によって開け放たれる。
「よし、お前達は不測の事態に備えて他の兵士達をかき集めておけ。城内には私たちが向かう!」
「わかりました、ボレサスさん!」
ボレサスの指令によって兵士達は散っていった。
俺はすぐ城門の方へ駆けよる。
「よし、俺達も急いでムファザ王の所へ向かおう!」
皆は頷くのを確認した後、俺達はビーストヘルズ城内へと入っていくのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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