71 中庭での一休み
キャスティ達は木刀を手にすると、すぐに稽古をし始めた。
稽古をしてるキャスティ達を横目に俺はマイトに組織について尋ねる事にした。
「マイト、質問なんだけどいいかな?」
「はい。なんででしょう、アモン様」
「この前のウエスタンと件といい、今回のグラインボルトの件といい。マイトがいたカオスゲートっていう組織ってそういった依頼ばかり来るのか?」
「……私が属していた組織は暗殺集団ですからね。多くの者達が様々な欲望を抱きながら依頼してくるのでしょう。私はエクリエル王国に8年前に潜入していたので、今回のように他の幹部がどのような任務をしているのか知りませんでしたが」
「……なるほどね」
俺はサミルの事を思い出しながら問いかける。
「……サミルもその中の1人って事か」
「そうなりますね」
「一度、アモン様もサミルとはお会いしているので、どういった方なのかある程度はご理解して頂いていると思いますが、サミルは非常に気分に左右される者です。ボスからの依頼以外ではあまり本腰をいれずにサボる節もあります。ですが、今回のように直接依頼を受けた時には自身が持つスキルを容赦なくつかって任務を遂行していくのです」
「前もエクリエル王国から出ようとした際に、身動きができない術にかけられたもんな。あれは厄介だった」
「あの時はまだ私は組織と決別を決めていなかったのでサミルのスキルについてアモン様にお伝えてしていませんでしたね。その節は申し訳ありませんでした」
謝ってくるマイトに手を振りながら答える。
「全然いいよ。今、こうして旅が出来ている訳だし」
「ありがとうございます。サミルは以前にもお伝えした通り、死者を操って任務を遂行していきます」
俺はエアリアに視線を向ける。
「エアリア。確か、以前はエアリアの魔法でアンデットを無力化にしたんだよね?」
「そうですね! 今回もお役に立てると思いますよ!」
グッと両手で握り拳を握るエアリア。
「うん! その時はお願いするよ」
「はい!」
俺はマイトに視線を戻す。
「それで、他にも悪霊も操るって言ってたよね?」
「はい。以前アモン様達の動きを止めてきたのは、おそらく悪霊を行使したものでしょう」
「……その悪霊にまた動きを止められたりしないのかな?」
マイトは首を振る。
「いえ、悪霊に操られる条件は瀕死状態など、対象の生命力が下がっている時に限ります。以前は不意打ちでマナが使えない術を掛けられ、悪霊の操作を抵抗できなかったのでしょう」
「それならマナが封じられていない状態なら、サミルの前で深手を負わないようにすればいいって訳か」
「そういう事です。その点、アモン様は問題ありませんね」
「任せて。……でも、問題なのは――」
俺は稽古をしているマリッサに視線を送った。
すると、キャスティと稽古をしていたマリッサが息を知らしているのに気付く。
「はぁ……はぁ……ちょっとキャスティ! 素早くて全然攻撃が当たらないじゃない、卑怯よ!」
「ふふ~ん! 風の層をまとっているからにゃ!」
「いいなぁ……あ、そうだっ! 私も使いたいわ、それ!」
「えぇ!? ……マリッサさんはマナが漏れてるからやめた方が良い気が……」
キャスティは俺の方に視線を向けてくる。
「マイト、キャスティが使ってる風魔法をマリッサも使ってみたいだけど?」
マイトは少し考えてから答える。
「……そうですね。サミルと対峙する時に自衛も兼ねて補助魔法が使えていた方がいいでしょう」
マイトはマリッサの方を向く。
「でも! 使い過ぎは厳禁です、マリッサ様!」
「……っ! 分かっているわマイトっ! さぁ、キャスティ、その体にまとってるやつを教えなさい!」
「分かったにゃ! この魔法は簡単にゃ! 頭の中で体に風をまとわせるのをイメージするにゃ!」
「イメージね、わかったわ! んんん~!!!!! …………って、よくわからないわよ!! それに呪文は唱えなくてもいいの?」
すると、ラルクと稽古をしていたエレナが稽古を中断してキャスティ達に近づいていく。
「マリッサ、キャスティはちょっと特殊で無詠唱で魔法を行使できるのよ。風の層の使い方なら私が教えるわよ」
「あぅ……エレナさん、お願いするにゃ」
ショボンとするキャスティにラルクが問いかける。
「キャスティ殿。エレナがマリッサ殿に魔法を教えている間、俺と手合わせ願おうか」
「あ、ラルクさん! わかったにゃ!!」
キャスティとラルクは稽古をし始め、エレナはマリッサに風の層のやり方を教える。
マリッサは風の層を使おうと呪文を唱えるが――
――ブオォォォォッ!
中庭にものすごい暴風が吹き荒れる。
「ちょっと、マリッサ!! 強過ぎよ、抑えて抑えて!」
「……む、難しいわね! こんな魔法制御をいつもエレナ達はしているの?」
「ま、慣れの問題よ。マリッサはマナ量が多すぎて制御しきれないのかもね」
「……そ、そんな事ないわ! 制御しきってみせるんだから!」
それからもマリッサはエレナに風魔法の制御方法を教わり、徐々に制御できるようになってきたがまだまだ体にまとわせる練度には到達しないようだった。
こう見てると、キャスティの習得速度の速さは尋常じゃなかったんだな。
それからもマリッサは根気よくエレナの教えを聞き、風の層をある程度まとえる状態までになる。
「まぁ、一先ずはこんなもんね。あとは実戦で使って慣れていきなさい」
「ふぅ……回復魔法はバーッて感じにマナを解放するイメージだったのに、他の魔法ってそのまま解放するだけじゃダメなのね……制御が難しいわ。……でも! 頑張って制御してみせるんだから!!」
「その意気よ、マリッサ」
俺は意気込むマリッサを横目に、芝生に寝そべって眠っているディアマトに気付く。
「ディアマト? ……寝ちゃってるな」
……こう見ると、まだ幼い女の子そのものだな。
俺がディアマトの寝顔を覗き込んでいると、ディアマトは目を薄っすらと開ける。
「……あ、すまないの、主様……ちょっとウトウトしておったのじゃ」
「いや、そのままでいいよ。俺がディアマトの部屋まで背負っていくからさ」
俺はそう言うとディアマトを両手で抱え込み、皆に視線を向ける。
「それじゃ、俺はディアマトを部屋に送っていくよ」
「わわっ! 主様にそんなことをお願いするのは悪いのじゃ」
「気にしないでくれ。……ディアマトにはいつも乗せて貰ってるからな。たまには俺にも持たせてくれよ」
俺はお姫様抱っこしたディアマトに微笑みかける。
「……うぅ……わかったのじゃ」
ディアマトは頬を染めながら答える。
「それじゃ、皆もタイミングを見て寝てくれ」
「わかりました、アモンさん! おやすみなさい」
「アモンさん、お休みにゃ!」
「あぁ、お休み」
他の者にもお休みの挨拶を済ませた後、俺はディアマトを抱えて中庭を後にした。
廊下には俺だけの足音が響き渡る中、俺はディアマトから部屋の場所を教えて貰い、その部屋まで向かっていた。
「……主様」
「ん? なんだ、ディアマト」
窓から差し込む月光が俺を見上げるディアマトの顔を照らす。
「我は主様と出会えて本当によかったのじゃ。……あの洞窟に縛られていた状態だったら、こんな楽しい仲間達と旅は出来なかったからの」
「……そう思ってもらえるなら、俺としても嬉しいよ。ディアマトには頼りにしている事も多いし、これからもいろいろお願いすることもあると思うけど……これからもよろしくね」
俺はディアマトにニコっと微笑みかける。
「……あぁ、わかったのじゃ」
ディアマトは俺の胸に顔を埋めて、静かに寝息を立て始める。
それから俺はディアマトを起こさないようにディアマトの部屋へと送り届けるのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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