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67 三種族会議

俺達はセバストによって大広間に通される。


「さ、みんな好きな椅子に座ってくれ」

「ありがとう、ラルク」


俺はラルクにお礼を言いつつ、近くにある椅子に腰を下ろす。

皆も座った事を確認した後、俺は話を切り出す。


「今回の件なんだけど、さっきもセバストからの説明があったように第三者の介入が考えられるんだ」


俺がそう言うと、マイトが付け加える。


「はい。ボレサス様の証言によると今グラインボルトには私が以前所属していたバリョッサス領にあるカオスゲートという組織の幹部がいる可能性が非常に高いのです」


すると、一番奥に座ったラルクがマイトに尋ねる。


「そのカオスゲートという組織はどういった組織なのだ?」

「私が属していた組織、カオスゲートは国に所属せず、依頼された内容はどういった事でも請け負う組織となります。私は元々バリョッサス帝国の依頼により、エクリエル王国の執事として潜入していたのですが、今は組織を抜け、アモン様達とマリッサ様を救う為に旅を共にしているのです」


マイトは元々いた組織の概要を皆に説明をする。

説明を聞いたラルクは続けてマイトに尋ねる。


「なるほど……その組織の幹部が今グラインボルトにいるという事なのだな。……して、今グラインボルトにいる者に心当たりがあると?」

「はい、組織にはサミルという幹部がおり、その者はネクロマンサーという異名を持っています。死者であったり、悪霊を自由に操り、自身の手を汚さずに任務をこなす事が多いのです。……おそらく、その者がドワーフ族の村を襲った亜人族を操っていた可能性は高いでしょう」


マイトが説明を聞き終えたボレサスは思い出しながら話し出す。


「マイト殿。そのサミルという者の事は分かった。……だが、聞いたところによると私たちの目は赤く光っていたと聞いている。その症状は狂人化の状態と酷似しているのだ。……そこで思い当たる事が1つある」

「……何でしょうか?」

「はい。我らが王・ムファザ様は”共鳴”という能力を持っており、我らを強制的に狂人化させる事もできるのです」


ボレサスの証言により、席に着いた者達はざわめき立つ。

俺はいち早くボレサスに尋ねる。


「……という事は、そのムファザという王がボレサス達を狂人化させた、という可能性もあるというのか?」


すると、ボレサスた答える前にラルクは勢いよく立ち上がり声を上げる。


「――なんだとっ! だとすると、やはり今回の父上の暗殺は亜人族の意志で行った可能性もあるという事ではないのか!?」


ラルクは血相を変えてボレサスに問いかける。


「……うむ、その可能性もあるという事だ」


俺は危ない方向に向かいそうだったので介入する事にした。


「待て待て、結論を出すのはまだ早い。……そもそも、何でラビスタットとグラインボルトは今までいがみ合っているんだ?」


俺がラルクの激高を押さえつつ、国同士の仲が悪い理由を尋ねた。

すると、ボレサスが話し出す。


「アモン殿。元々は我ら亜人族の嫉妬から始まったのだ。……既にご存じだと思うが、我ら亜人族は多くの国から侮蔑(ぶべつ)された目で見られておる。見た目も多種多様だから、受け入れる事ができない者も多いのだろう」


ボレサスは自身の人間ではないトラ型の顔を触りながら答える。

確かに、キャスティみたいに人間族のような容姿の者もいれば、ボレサスのように顔が完全に人間ではない見た目の者も多くいる。


「なるほど……俺も旅をする途中で、亜人族を道具のように扱う者と会った事があるな」


俺はジュラルドの事を思い出しながら呟く。


「……うむ。ラフィーロ大陸では我らを軽視する傾向が顕著(けんちょ)で、我らはこのフィランド大陸から出る事がしづらい状態なのです。……そういった中、嫉妬の対象としてラビスタットに住むエルフ族に嫌悪という感情が向けられていたのです。エルフ族は見ての通り、耳が特殊なだけで人間族と見た目は変わらず、受け入れやすい種族ですからね」


ボレサスがいままで亜人族がエルフ族を嫌う理由を共有する。

話を聞いていたテキサリッドも話始める。


「……それを言うなら私達ドワーフ族も同じようなものだ。見て貰ったら分かるが私たちの種族はとても身長が低い。ただその分、手先が器用で多くの武器防具の開発やモノを作り上げるには長けて事で身を守っていた。……だが、それが原因でエルフ族から反感を買っていたようだがな」

「……そうなのか? セバスト」

「はい。私たちは魔法には長けていましたが、非力で近接戦闘に向いておらず手先も不器用な者がほとんどです。一部のエルフはドワーフ族に対して嫉妬の感情を持っていたのは事実です」


俺はそれぞれの種族の話を聞いた結果、お互いの種族がいがみ合う理由が嫉妬である事に呆れていた。


「……なるほどね。他種族に対しての嫉妬によりいままで仲が悪かったのか。……ってすまない。本題はそこじゃないな……今問題なのは亜人族を操っていたのは誰なのか、という点だ」


俺は自ら脱線させた話を元に戻すと、マイトが俺に話しかけてくる。


「アモン様、先ほどムファザ様がご自身で亜人族達を操っている可能性があると仰っていましたが、サミルは対象を操作できる上に、その対象の能力まで意のままに扱う事が出来るのです。……おそらく、ムファザ様は既にサミルの手の内にある可能性は高いでしょう」


マイトの証言にとってラルクは立ち上がった席に再び腰を落とす。


「……そうであったか。大声を上げてすまない」


俺はラルクを横目で見ながらマイトに問いかける。


「サミルってやつは、そんな事もできるのか。……そうなると、少し厄介な状態だな。サミルを倒すにしてもムファザだったり、他の者が妨害してくる可能性が高いという事だろ?」


マイトはゆっくりと頷く。


「そうなるでしょうね」

「うぅ~ん……ボレサス、ムファザというグラインボルトの王はどれぐらい強いんだ?」


ボレサスは俺の問いかけに血相を変えて答える。


「それはもう……想像を絶する強さです。6本の腕に様々な武器を持ち、近接戦闘で勝てる者はいないでしょう」

「6本の腕か、そうなるとあまり近接戦闘を挑まない方がいいな」


すると、エレナが俺に尋ねてくる。


「アモン、1人で戦うのなら難しいのなら大勢で一度に挑めば6本の腕の対処もできるんじゃない?」

「……そうか! キャスティやマイト達も協力すれば――」


――ガタッ!

すると、マリッサも勢いよく席から立ち上がる。


「アモン! 私も戦うわよ!」

「そ、そうだね」


俺は驚きながら答えると、マイトが小言を挟む。


「……マリッサ様、あまり前に出過ぎないようにしてくださいね」

「分かっているわよ、マイト!」


マリッサは満足そうに席に着く。

そんな中、ボレサスやテキサリッドも手を上げる。


「アモン殿、私も加勢しよう。少しはお役に立てるだろう」

「私も同行しよう。相手の腕の一本ぐらいは私でも対処することが出来るさ」

「ありがとう2人とも。それじゃ、ムファザの対処はエレナ・キャスティ・マイト・マリッサ・ボレサス・テキサリッドの6名に任せるよ」

「わかったわ、アモン」

「わかったにゃ!」

「任せなさい!」


エレナとキャスティとマリッサは元気よく返事を返し、マイトとボレサス達も頷く。

俺はエアリアやディアマトに視線を向ける。


「あと、エアリアは傷ついた者の治療や俺達のサポートをお願いね。ディアマトは移動で消耗すると思うからエアリアと共に俺達のサポートをお願いするよ」

「わかりました、アモンさん!」

「わかったのじゃ、主様!」

「頼むよ、2人とも。……あと、俺はサミルを相手にする」


すると、再度ラルクが席を立ちあがる。


「アモン殿! ……その役目、私にも協力させてくれないか!」


必死で懇願(こんがん)してくるラルクに過去の自分が重なり合う。


「……そうだね。お願いできるかな」

「ありがたい。父上の仇……必ず討ってみせる!」


ラルクを力強く拳を握りしめながら呟く。

俺はそんなラルクを横目に皆を見渡す。


「よし! それじゃ皆、準備が出来たらすぐにグラインボルトに向かうぞ!」

「「「「「おぉ!!」」」」」


大広間に集まった者は全員が大声で返事を返し、俺達はグラインボルトへ向けての戦闘準備を始めるのだった。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「アモン達は今後どうなるのっ……!」


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