63 暗躍するもの
俺は脳裏に浮かんだ仮説を一旦頭の隅に置き、エアリアに視線を向ける。
「エアリア、他の皆も助け出した村人をまとめて落ち着ける場所に集めておいてくれるか?」
「わかりました、アモンさん!」
「エレナもエアリアの手伝いをしてくれるかな?」
「えぇ、分かったわ」
エアリアとエレナは返答をすると駆けだし、入れ替わるように俺の元にキャスティやマイト、マリッサが駆けつけてくる。
「アモンさん、重傷者もいたけどマリッサさんのお陰で全員無事にゃ!」
「アモン様。急を要していたので村人の治療をマリッサ様に行って頂きました」
「ふふ、まだ傷を受けている者がいたら名乗りを上げなさい! 私が治してあげるわ!」
マリッサはどこか自慢げに問いかけてくる。
「ありがとうマリッサ。でも、もうエアリアが亜人族に掛かっていた術を解いてくれたから大丈夫だよ」
「キュアリーよね。……エアリアったら、使うなら私も誘ってほしかったところよ!」
「……残念ですがマリッサ様。またしばらく魔法は禁止です。エアリア様にお任せ出来る範囲はお任せ致しましょう」
「嫌!! もっと使うの!」
「ダメです。我慢してください」
「うぅ~!!」
マイトは駄々をこねるマリッサをなだめつつ、亜人族の騎士団長に気付く。
「……アモン様、こちらの方は?」
「あ、あぁ……亜人族の騎士団長をしているらしい」
「おっと、これは失礼。私はボレサス・ロイドと申す者だ。貴方は?」
「ボレサス様ですね。私はマイト・スタインと申します。こちらのお嬢様の執事をしております」
マイトはプスっと頬を膨らませて拗ねているマリッサへ手を向けて簡単に自己紹介を済ませる。
俺はすかさずマイトに先ほど脳裏を過った仮説を共有することにした。
「……それでマイト。ボレサスから聞いたんだけど、どうやらグラインボルトに黒装束の者がいるみたいなんだ」
俺の言葉を聞いたマイトは驚きの表情をしながらボレサスに視線を向ける。
「ボレサス様、本当なのでしょうか?」
「あぁ、間違いない」
「……その黒装束の者の顔を見ましたか?」
「すまないが、先ほどアモン殿にも伝えたが、その黒装束の者はフードを被っていて顔が見えなかったんだ」
「そうでしたか」
少し俯くマイトに俺は尋ねる。
「オルビア以外に組織の中に他者を操作できるような能力を持っている者はいないのか?」
マイトは少し考えたが、顔を左右に振る。
「……いえ、操作を行えるのはオルビアだけで、他にそのような能力を持っている方はいない……はずです」
「そっか……」
そうなると、黒装束の者は誰なんだ?
俺が悩んでいると、マイトはハッとした表情をしながら話始める。
「あ……いや、1人いました。……ですが、操作できると言っても操作対象が死者である必要があるんです」
「死者を操作……何か怖いな」
俺はそう言いつつも、とある男性を思い出す。
「……あ、もしかしてその人と既に俺達は会ってたりしないか?」
「仰る通りです。エクリエル王国から出発する際に私達を襲ってきた2人組の1人です。名前はサミル・ソサエティ。ネクロマンサーの異名を持つ気分屋です」
「サミル……確か、名前は聞いていなかったな。……でも確か、死んでいない俺達の動きも止めてきたぞ? あれは何だったんだ」
「サミルが操作できるのは死者だけではなく、この世に存在する様々な霊魂を操作する事もできるのです。おそらくその者達の力を借りたのでしょう」
俺はマイトの説明を受け、空いた口が塞がらなかった。
「……あんなチャラチャラした男にそんな能力があったとは……もし、そのサミルってやつがグラインボルトにいたとしたらどうなるんだ?」
「おそらく……今回のラビスタットの国王を暗殺した件と深く関係している可能性が高いでしょうね」
俺が考えていた仮説は一段と確信めいてきた。
その時、少女姿のディアマトとセバストが駆けつけてくる。
「主様!」
「ディアマト、もう村は大丈夫だ!」
セバストも辺りを見回しながら感心していた。
「すごいですね……もう鎮圧するなんて」
「うん。間に合ってよかったよ。これもディアマトの移動速度のおかげだね!」
「そう言って貰えると嬉しいのじゃ! おっと……それはそうと、南東の方角から武装したドワーフの騎士集団がこの村に向かってきておったぞ」
「ドワーフの騎士集団?」
俺がディアマトに返答すると同時に、馬に乗った数多くのドワーフの騎士たちが村に到着する。
その騎士の中で一段と強そうな者が前に出てきて、俺達に視線を向けてくる。
「……お主達がこの村を……ッ! 許せぬ……覚悟ッ!」
「い、いや……俺達は!」
「問答無用!」
ドラーフの騎士たちは小さい体に似合わない大きな剣を抜刀し、馬に乗って襲い掛かってきた。
「あぁ、もう! アブソリュート・シールド!」
俺は大きな勘違いをしているドワーフの騎士達と俺の間に大きな空気の壁を展開する。
――バコッ!!
すると、いくつもの馬の頭部が壁に衝突し、バランスを崩した馬はドワーフの騎士たちを次々と落馬させていく。
「「「うわぁぁ!」」」
俺は壁を展開しながら落馬した騎士たちに歩みよる。
「ググ……な、何をした?」
「その前に、話を聞いてくれる気になりましたか?」
「……あぁ、聞こう」
「それじゃ、まず――」
俺は展開した壁を解除し、この村で起きた事と亜人族が何者かに操られていた事を包み隠さずドワーフの騎士達に伝えた。
「――といった訳で、今の状況は何者かに意図的に仕組まれた可能性が高いんです」
俺が説明し終えると、ドワーフの一番強そうな騎士も口元に手で覆う。
「にわかに信じがたいが……」
――その時、先ほど俺が助けたドワーフの少女と手を繋いでいるエアリアが戻ってきた。
「……な、何かあったのですか?」
エアリアは大量に落馬している騎士団を見ながら驚いた表情をしていた。
ドワーフの騎士も元気そうにしているドワーフの少女の姿を見て、俺に視線を戻す。
「……っ! ……申し訳なかった。私はラインセルで騎士団長をしているテキサリッド・ボリスと申す者だ。どうやら、俺達は何か大きな勘違いをしていたみたいだな」
俺はドワーフ族の騎士達が戦意を無くしてくれたようで心底安堵する。
「いえ、分かって貰えたのならそれでいいです。……そこで、両国の騎士団長にお願いがあるのですが――」
俺はトラ型の亜人族の騎士団長であるボレサスと、先ほど誤解が解けたドワーフ族の騎士団長であるテキサリッドの両名にある事をお願いをすることにした。
「――これから俺達と一緒にラビスタットに同行してくれませんか?」
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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