62 フィランド上陸
ディアマトによってエルフの隠里を囲っていた山岳を抜け、アルトエリコ近隣へと再度上空から近づいていく。
その道中もマリッサは流れる景色を存分に楽しんでいた。
「やっぱりこの高さからの景色は最高だわ! もっと進みなさいディアマト!!」
そんなテンションの高いマリッサを見ながらセバストも呟く。
「……いや、ほんと快適ですね。アモンさんのスキルで落ちる心配もないですし、最高の乗り物じゃないですか」
「喜んでもらえて嬉しいよセバスト。それで、肝心のフィランド大陸はアルトエリコからどの方角に向かえばあるんだ?」
「はい、こちらに向かって頂ければ大陸が見えてくると思います」
セバストは西を指さして向かう方向を示す。
「こっちだな。ディアマト、アルトエリコから西に進んでもらえるか?」
「わかったのじゃ、主様!」
それから、ディアマトによってラフィーロ大陸を後にしてフィランド大陸へと向かった。
しばらく海上を進んでいたが、ディアマトの飛行速度が速かったのかすぐフィランドの大陸が見えた。
「お、見えて来たな!」
「……こんなに早く着くなんて、船とは大違いですね。ラビスタットはこちらです」
セバストは更に北西の方向を指差す。
「よし。ディアマト、次は北西に進んでくれるか」
「わかったのじゃ!」
ディアマトが方向を変えようとしたその時、エレナが慌てて俺に声を掛けてくる。
「待って、アモン! ……近くで亜人族がドワーフ族の村を襲っているわ!」
エレナは千里眼で周辺の探索をしていたらしく、目を瞑っていた。
「……本当かエレナっ! その村はどの方角にあるんだ!」
エレナは目を開け、南西の方角を指差す。
「こっちよ!」
「よし。ディアマト、すぐに向かってくれ!」
「任せるのじゃ! 主様、村の上空を低空飛行する時に飛び降りてくれるかの!」
「あぁわかった」
それからディアマトはエレナの指し示した方向へ高速で移動する。
すぐに火の手があがる村が視認できた。
「あそこかの!」
俺も目を凝らして上空から村を確認したところ、所々で火の手が上がっていた。
亜人族はディアマトに目もくれず、村のドワーフ族を襲い続けていた。
「酷いな……皆、ディアマトが村の上空を低空飛行した時に飛び込むぞ!」
皆が頷き、セバストに視線を向ける。
「セバストはそのままディアマトの背中に待機しておいてくれますか」
「は、はい!」
俺は展開していた空気の壁を解除し、セバスト周辺の四方に展開し直す。
その後、ディアマトは村の上空をギリギリの高度を飛行する。
「今じゃ!」
ディアマトの掛け声と共に俺達は村を目掛けてそれぞれが飛び降りた。
――スタっ!
地面に着地した後、俺は周りを確認する。
「死ね!」
「キャアっ!」
目を赤く光らせる牛型の亜人族に追われたドワーフの少女は足が縺れて躓き、問答無用に大きな斧を亜人族の巨漢が振りかざそうとしている状況だった。
少女は頭を抱えてその場を動こうとしない。
「っ!? アブソリュート・シールド!」
――ガッ!
少女の頭上に斧が当たる寸前のところで空気の壁に阻まれ動きを止めていた。
「っ!?」
困惑する亜人族に空気の球を当てようとしたが、今のままだと少女にも衝撃が当たってしまう。
そこで俺は駆けながら手に衝撃が来ないように空気の壁で保護しつつ、相手が吹き飛ぶ程度の空気を圧縮した球を手に構築して亜人族の腹に押し込み――
「ウェーブ・キャノン!」
――ドゴォンッ!
押し付けた空気の球が瞬く間に拡散し、その勢いで相手を後方へ吹き飛ばし壁に激突させる。
頭を抱えていたドワーフの少女は恐る恐る顔を上げる
「ふぇ……?」
少女は傍にいた俺の顔を覗き込んで問いかけてくる。
「お、お兄ちゃん……は?」
「……通りすがりの冒険者さ」
俺はニコっと笑顔で答える。
「冒険者……さん?」
「あぁ。他にも俺の仲間が村を守ってくれているから安心してくれ」
周りを見渡すと、俺と同様に皆が次々と村人を救出しているのが確認できた。
俺は少女に視線を戻し、手を差し伸べる。
「ほら、立てるか?」
「うん!」
少女は俺の手を掴み、俺は勢いよく少女を立たせる。
「よっと」
すると、後方から声が聞こえくる。
「アモンさん!」
俺はエアリアの声が聞こえた方へ振り返ると、エアリアと一緒にいたドワーフの親子が俺が助けた子供に駆け寄り思いっきり抱きしめていた。
「……あぁ良かった!」
「おぉ、無事だったか……っ!」
「お母さん! お父さん!」
エアリアは抱き合う親子を見ながら俺に近づく。
「この親御さんは2人とも瀕死状態だったのですが、なんとか一命を取り留めました」
「どなたか存じませんが……この御恩は忘れません……っ!」
何度も頭を下げてくる親御さんにエアリアは微笑みかける。
「いえいえ、助けられてよかったです!」
エアリアは親子から周辺に視線を向けて呟く。
「アモンさん……どうやらギリギリ最悪な状態は防げたようですね」
「そうみたいだね。間に合ってよかったよ」
――ガララッ!
すると、先ほど俺が吹き飛ばした亜人族が崩れた瓦礫から起き上がり再び襲い掛かってきた。
「グァアアアアッ!」
「アブソリュート・シールド!」
俺はエアリアと親子を守る程の大きさの壁を展開する。
「グゥゥ……っ!」
壁に阻まれる赤く目を光り輝かせる亜人族を見てエアリアが呟く。
「……やはり、この村にいる亜人族の方達は何者かに操られている可能性が高いです」
「なんだって? 誰に操られているっているんだ?」
「……わかりません。なので、直接本人に聞いてみましょう。この村の規模であれば私だけでも問題ないでしょう」
エアリアはその場で地面に膝をつけて祈りのポーズをすると目を瞑って呪文を唱え始めると瞬時に周りが光り輝き始める。
呪文を唱え終えた後、エアリアは目を開け――
『キュアリー』
――そう呟くと、眼前の亜人族や村にいる全ての亜人族の足元に光のサークルが出現して、光が亜人族達を包み込んだ。
光が収まった後、眼前の亜人族の目は赤く光っておらず正気のある瞳に戻っていた。
――ガチャンッ!
斧をその場に落とし、自身の両手を見ながら辺りを見回していた。
「私は一体……ここは」
俺も周りを見渡したが全ての亜人族が戦闘行動を止めていた。
「……エアリアの言った通りだね。皆動きを止めたよ」
エアリアは立ち上がり、先ほど斧を落とした亜人族に歩み寄る。
「あなたに確認したいのですが、何故この村を襲っていたのですか?」
「村? この惨劇は私たちが行ったとでも言うのか……!?」
牛型の亜人族は混乱しているようだ。
「……覚えていないのですか?」
「うぅ……」
エアリアは尋ねるが相手は頭を抱えるのみで、まともな回答が帰ってこない。
俺はどうしようか考えていると一段とゴツイ鎧を着たトラ型の亜人族とエレナが共に歩いて来る。
「アモン、亜人族の騎士団長があなたに話があるってさ」
「あなたがアモン殿か。私はボレサス・ロイズと申す者だ。この団の団長を務めている。……この度はご迷惑をおかけした」
「いえ。ボレサス、なぜこの村を襲っていたのですか?」
「……うむ。申し訳ない。私共はビーストヘルズから記憶がないのだ」
「ビーストヘルズ?」
「あぁ、私たちの王ビーストキング・ムファザ様がいらっしゃる城の事だ。グラインボルトの兵一同が城に呼び出されていたはずなのだが……」
すると、エアリアが呟く。
「おそらくそこで何かしらの術にかかり、皆さんは操られていたようです」
「そうだったのか……なるほど、通りで見慣れない黒装束の者がいると思ったのだ」
俺は黒装束という単語に引っかかる。
「……待ってくれ。その黒装束の者は顔を隠していたか?」
「ん? あぁ、顔は見えなかったな」
……もしかして、ここにも組織の手が伸びているのか……っ!?
俺は一人、焦燥感に似た動揺を感じていた。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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