58 港町アルトエリコへ
朝、窓から入ってくる日差しで目が覚める。
「……ん……ふぁ……おはよう、マイト」
俺は体をムクッと起こすと、既に起きて身支度をしているマイトに挨拶をする。
「おはようございます、マイト様。熟睡されていましたね」
「ははっ……このベットが気持ちよくて暖かかったからね」
俺は照れ笑いをしながらベットから立ち上がり、思いっきり背伸びをする。
「ん……っ! っと、それじゃ俺も出発の準備や馬車の用意をするかな。マイト、皆を起こして準備が出来たら宿屋の前に出てくるように伝えてくれるか?」
「畏まりました、アモン様」
それから俺達は別々に港町アルトエリコに向けての出発準備を行った。
宿屋の前に馬車を移動させ、ある程度の物資の確認・搬入を終えるとエアリアとマリッサが宿屋から出てくる。
「おはようございます、アモンさん。……今日は一段と寒いですね」
「おはようアモン! さ、早く出発しましょう! 船ってものに早く乗りたいもの!」
エアリアは両手に息を吹きかけながら、マリッサは船という未知の乗り物にワクワクを隠し切れない様子で挨拶をしてくる。
「おはようエアリア、マリッサ。2人とも、この積雪地帯を抜けるまでは防寒着を着ていた方がいいかもね。荷台に置いてあるから着ておいてね」
「ありがとうございます。しばらくは着たままで行動したいと思います」
「そうね。少し肌寒いし、私も着たままで過ごそうかしら!」
2人が荷台に乗り込み防寒着を着ているのを横目に宿屋の入り口に視線を向けると、エレナとキャスティ、ディアマトも宿屋から出てくる。
「おはようアモン」
「おはようにゃ! 昨日は楽しかったにゃ~!」
「そうじゃのうキャスティ! ……またあのような催し物を楽しみたいものじゃ! ……おっと、おはよう主様!」
「おはよう、みんな。昨日は楽しかったけど、ちょっとウエスタタンに長居しちゃったから今日は急いでアルトエリコに向かうよ!」
すると、キャスティが懐かしい表情をしながら話す。
「そうにゃ! 次の目的地はアルトエリコだったにゃ! あぁ……懐かしいにゃ……」
「ん? ……キャスティ、アルトエリコに行った事あるのか?」
「そうにゃ! 私がフィランドからそのアルトエリコに船で渡って抜け出してきたのにゃ!」」
「……そうだったんだ! その、アルトエリコってどんな町なんだ?」
「活気があって、食べ物も海の料理が多くて美味しかったのを覚えているにゃ!」
「なるほどな、特に問題がありそうな町じゃないという事か……。よし、それじゃエレナ達も乗り込んでくれ」
エレナ達が乗り込むのを確認していると、会計を済ませたマイトが最後に宿屋から出てくる。
「お待たせ致しました、アモン様」
「ありがとうマイト。乗り込んじゃってくれ」
全員が馬車に乗り込んだのを確認した後、キャスティに視線を向ける。
「キャスティ、いつもの頼む!」
「わかったにゃ!」
キャスティはそう言うと、馬の全身に風の層をまとわせる。
そして御者席に座っている俺は手綱を引くと、勢いよく馬は高速で駆け出していった。
ウエスタンから出た後、白髪老人の研究員が話していた北西に向かいつつしばらく馬車を走らせる。
すると、積雪と同じく白い体をした俺達の2倍近い背丈をした複数体の魔物が馬車を取り囲うように現れた。
「「「ブオォォォッ!」」」
鋭い牙と爪を持った魔物は、俺達の様子を見る間もなく襲い掛かってきた。
「……っ!! アブソリュート・シールド!」
俺は間髪入れずに、空気の壁を四方に展開して攻撃を防ぐ。
「危なかった……でも、攻撃は防いだけど、これじゃ移動出来ないな。……ディアマーー」
俺はディアマトにお願いしようと声を上げようとすると、エアリアが一目散に声を上げる。
「アモンさん! ここは私に任せてください!」
エアリアは魔法が使えるようになったので目をキラキラさせながら答える。
「それじゃ、エアリアにお願いしようかな」
俺は断る理由がなかったのでお願いすることにした。
「ありがとうございます。それじゃ、皆さん目を瞑っておいてください。少し眩しいので」
「わかった」
俺も含めて皆が頷き、目を瞑る。
すると、エアリアが呪文を唱えた後――
『ホーリーフラッシュ』
――呪文名を唱えたと思ったら、瞼越しでも分かる程の光が俺を包み込んだ。
「……皆さん、目を開けてください」
エアリアの言われるがまま目を開けると、俺達を取り囲んでいた魔物達は眩しい光で視覚が奪われたのか、その場に伏せて身動きできなくなっていた。
「今のうちに進みましょう!」
「わかった! ありがとう、エアリア!」
「えへへ……」
俺はエアリアらしい対処法でニヤリとほくそ笑みながら手綱を引いて先を急いだ。
途中、エレナの千里眼で周辺を確認してもらいながら積雪地帯から抜け出すことができた俺達は、森の中に入る。
しばらく森の中にある小道を進んでいると、寒さも収まってくるのを感じる。
「皆、雪がなくなってきたから適当なタイミングで防寒着を抜いて荷台の隅っこにまとめておいてくれ」
「わかりました、アモンさん」
「……それにしても、魔物が出てこない静かな森だな」
俺は周りの森を見ながら進んでいると、エレナが声を上げる。
「アモン。この森を出た後、海岸沿いに小さな町が見えたわ!」
「ありがとうエレナ。行ってみよう!」
しばらく進むと、森を抜けてエレナの言う通り海に面した街を発見する。
「見えた! あればアルトエリコか?」
「そうにゃ! 間違いないにゃ」
「よし、ひとまず向かってみよう!」
俺は手綱を勢いよく引いて、更に加速させてアルトエリコへ向かった。
アルトエリコの警備はそこまで強固ではなく、俺達はすぐにアルトエリコに入る事ができた。
街の中に入ると海で取れた新鮮な食材が数多く出品されている店があり、多くの人で賑わっていた。
「結構人が多いな……キャスティ、風魔法は一旦解除しておいてくれ」
「わかったにゃ」
すると、馬がまとっていた風の層が消えてなくなり、通常速度に戻る。
「……さて、それじゃ早速港に向かってみようか」
俺達はゆっくりと馬車を港に移動させ、港に到着すると数多くの船が港に停泊していた。
港に立っている複数人の漁師に俺は御者席から話かける。
「あの~、すみません」
「ん? なんだ、あんたらは?」
「冒険をしている者です。この海の向こうにあるフィランドに渡りたいのですが、船ってどこから乗り込めばいいのでしょうか?」
「あぁ。渡航希望者か。え~っと、確か……」
すると、答えた漁師と一緒にいた漁師の人たちが案内しようとしていた漁師の肩に手を置き、目くばせで顔を左右に振っていた。
「……あ、すまねぇ冒険者の方達。忘れていたよ、フィランドに今船は出すことはできないんだ」
「……えっ! そうなんですか……」
断られる可能性はあると分かっていたが、こうも易々と断られるとは思っていなかった。
すると、荷台からマリッサが身を乗り出して漁師たちに問いかける。
「もう! なんでよ、少しぐらいいいじゃない!」
「悪いな。今フィランドでは国同士の関係が最悪な状態なんだ、不用意に近づくと攻撃されかねない」
「……物騒ですね。そんなに深刻なんですか?」
「あぁ、中でもグラインボルトは攻撃的で手の付けようがないみたいだ」
「グラインボルト……確か、亜人の国ですよね?」
「あぁ、そうだな。亜人族は身体的に強靭の体を持っている者が多く、好戦的な者も多いと聞く」
「……そうなんですね」
俺が俯きながら答えていると、ふとアルトエリコに船が停泊しようとしているのを見つける。
「……でも、船は招き入れているんですね」
「そうだ。来るものは拒まずってところだな。フィランドから逃げ出してくる者もいるんだ。そういった者達を俺達は受け入れているんだよ」
すると、キャスティが続けて話す。
「そうにゃ。私もグラインボルトから逃げ出してきた時、船を快く招き入れてくれたにゃ!」
「なるほどね」
俺は先ほどの停泊した船に視線を向けていると、開いた入り口から勢いよく傷ついた年配のエルフ族の女性が走りだしてくるのが見えた。
「……ん?」
すると、先ほど走り出したエルフを追いかけるように牛型と豚型の亜人族の男性2人が続けて船から駆け出してきていた。
「……すみません。あのエルフ族の女性、追われているようですが?」
俺は漁師の人に尋ねる。
「あぁ、放っておけばいいさ。俺達は来るものは拒まずだが、面倒ごとまで請け負っていないからな」
冷たく言い放つ漁師だったが、俺は見過ごす事はできなかった。
「……マイト、あのエルフ族の方を助けてあげてくれるか? ちなみに、相手は殺さないように」
「畏まりました、アモン様」
マイトが答えたと思ったら、一瞬で傷ついたエルフの手前に移動し、亜人族にシルバーダガーをちらつかせて牽制をしていた。
俺はいろいろ教えてくれた漁師に視線を戻し、お礼を伝える。
「いろいろ教えてくれてありがとうございます」
「あ……あぁ、どうって事ないさ」
マイトが急に消えた事に驚いていた漁師を横目にしつつ、俺は皆に視線を向ける。
「それじゃ、俺達も向かおう!」
「わかりました、アモンさん!」
エアリアも含めて皆が頷くのを確認した後、俺達は急いでマイトとエルフの元へと向かうのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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