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56 宴の準備

俺がエアリアと共に研究所に向かおうとした時、目を覚ました白髪老人の研究者が街の人たちに深々と頭を下げていた。


「謝って許されるものじゃないのはわかっておる。じゃが……街の皆を研究に巻き込んでしまった事、本当に申し訳なかった。……この通りだ!」


他の研究員の者達も白髪老人と共に街の人達に頭を下げていく。


「……どうしようもなかったのなら、あなた達を責める理由はありません」


街の者達は、誰一人研究員を(とが)める者はいなかった。

それも、俺達がオルビアの能力により研究員の意志で行動していなかった事を予め街の人達に伝えていたからだ。


「あの……その研究している魔法兵器っていうものを見せてもらえないでしょうか?」


俺はそんなやり取りをしている白髪老人の研究員に問いかける。


「そうじゃな、実際にどんな兵器を作っているか見る権利は当然にあるじゃろう。……付いてきなさい」


すると、街の人たちも俺達同様に見学を申し込んできた。


「あの、私たちも同席してもいいでしょうか!?」

「構わない。見たいものは付いてくると良い」


それから俺達は、他の仲間や街の皆と共に研究中の魔法兵器が置いてある場所へ案内してもらう事となった。




大きな部屋に案内されると、中には魔法兵器が設置されており、俺達はその魔法兵器を見上げる。


「……デカいですね。……それで、この魔法兵器の利用目的とかって国王から聞いているんですか?」

「すまないの。私はただ『大きな壁を壊せるような威力が欲しい』と言われているだけで、それ以上はわからんのじゃ」

「ん~……直接ライフォードに確認をしたいところだけど――」


俺はマリッサに視線を向ける。


「――今エクリエル王国に戻っている暇はないもんなぁ」

「ふん、そうね! 私もせっかくお城から出られたのにまた舞い戻るなんて御免だわ!」

「……はは、そうだね」


マリッサは別の理由で帰りたくない様だが、俺達は早く離島に向かいマリッサの漏れるマナを抑えるのが優先だ。

そんな事を考えている俺にマイトは問いかけてくる。


「アモン様。ディアマト様の体調も戻られましたし、また空から離島へ向かってみますか?」

「……いや、また例の黒龍に妨害を受ける可能性もあるし――」


視線をディアマトに向ける。


「――治ったばかりのディアマトに頼るのも気が引けるからね。安全を取って陸地から向かおうと思っている」

「うむ……我は全然使って貰ってかまわないんじゃがな」

「ありがとう、気持ちだ――」


俺が返答しようとするとキャスティが代わりに答える。


「――大丈夫にゃ! 風魔法を使えば、馬車でも早く移動できるし、ディアマトさんはゆっくり休んでいるにゃ!」

「……わかったのじゃ。あの馬車の移動速度も慣れれば楽しいからの!」

「そうなると、エルフ族や亜人族の国があるフィランドへ渡る必要があるわね」


エレナが顎に手を添えながら俺に尋ねる。


「そうだね。俺達がいるラフィーロから海を挟むから、どこかの港町から向かう事になるけど……」


すると、白髪老人の研究員が答える。


「それだったら、港町のアルトエリコに向かうと良いじゃろ。この街から出て南西に進むと雪はなくなり暖かい高原が広がる。その先にある大きな海の入り江にあるのが港町のアルトエリコじゃ」

「アルトエリコか……。ありがとうございます。そこに行ってみたいと思います」

「……じゃが、フィランドでは種族間での争いが激化していると聞いておる、もしかしたら船を出して貰えない可能性もあるからその時は諦める事じゃな」


白髪老人は白い髭を触りながら教えてくれた。


「……そっか、確かメルトリアの情報屋も同じような事を言っていたな……わかりました。一度行って確かめてみます」


俺がお礼を伝えると、一緒に魔法兵器を見学にきていた街の者達が俺達に提案をしてくる。


「あの、冒険者の方々! 今日は間もなく日が暮れてきます。……その、よかったら今日はこの街で休んでいってはいかがでしょう?」

「……部外者の俺達はお邪魔ではないのでしょうか?」

「いえいえ、滅相もありません。他の街の者達も今日は街で大々的な宴を開こうと計画しています。私たちが今こうして自分たちの意志で行動出来ているのもあなた達のお陰です! ……是非、参加して貰えないでしょうか?」

「……そう言ってもらえるのなら、俺も参加したいところですが……皆はどう?」


俺は他の皆に視線を向ける。


「是非、私も参加してみたいです!」

「私も賛成よ。今日は闇魔法も使ったし、もうクタクタなのよ。しっかり休んで英気を養いたいわ」

「私も賛成にゃ! 沢山動いてもう腹ペコにゃっ!」

「そうじゃの、我も異論はないのじゃ。今日はこの街でゆっくりしていくかの」


エアリア達は特に問題が無い様子だ。


「私も賛成よ、アモン! 今日はこの街で休みたいわ!」

「アモン様、私も異存はありません。アリッサ様も今日はお疲れの様子ですし、お言葉に甘えましょう」


皆も特に異論はないようで、提案をしてきた研究員に視線を戻す。


「それじゃ今日はこの街でゆっくりさせて貰いたいと思います」

「ありがとうございます! それではすぐに街の者達に知らせてきますね! それまでは街の宿屋でゆっくりしていってください。この後、すぐにその宿屋に案内致します」

「ありがとうございます」


それから俺達は街の人に宿屋まで案内してもらった。




宿屋に到着した後、俺達は部屋を3部屋借りる事にした。

マリッサはエアリアと同じ部屋が良いと主張してきたので、部屋割りは俺・マイト、エアリア・マリッサ、エレナ・キャスティ・ディアマトとなった。

部屋に入った俺はその場で思いっきり背伸びをする。


「ん~~! ……っと、今日は疲れたね、マイト」

「そうですね……エアリア様の回復魔法のお陰で傷は治りましたが……実はスキルを使いすぎてマナ切れでもう倒れてしまいそうなんです」

「ははっ、それなら宴が始まったら起こしてあげるから、それまでベットで横になっていたらどうだ?」

「……そうですね。では、お言葉に甘えて、そうさせて貰いたいと思います」


マイトはそう言うと、ベットに横になる。

すると、すぐに寝息を立て始めた。


「……もう寝ちゃってるし……ま、エアリア達を助けに行っている間、オルビアを1人で引き留めてくれていたからな」


俺はそう思いながら宴が始まるまで窓枠に座り、宴の準備をしている住民達を眺めながら待つのだった。




しばらくすると、アロイ達から宴の準備が出来た知らせが届く。

俺達はアロイ達に手を引かれて一緒に宿屋から外へと出た。


「こっちだよ、お兄ちゃん!」

「ま、まってくれ!」


俺はアロイに手を引かれながら街の中央にある広い場所へ案内される。


「おぉ!」


案内された場所には光り輝く装飾品が数多く飾られており、数多くの料理や飲み物がいくつもあるテーブルに置かれていた。

優雅な曲を弾いている集団もいたり、華やかな場所として盛り上がっていた。


「さぁ、大したおもてなしはできませんが、お寛ぎください」


アロイのお父さんが俺達向かって呟く。


「いえいえ……すごいですね。是非楽しませてもらいます!」


すると、マリッサはエアリアの手を掴む。


「待ってたわ! エアリア、行きましょう!」

「わわっ! 待ってください、マリッサさん!」


マリッサはエアリアの手を引いて料理がある場所へとエアリアを連れ去ってしまう。

妙に仲良くなった2人を眺めながら俺は微笑ましく思っていると、マイトも俺に視線を向ける。


「まったく……。では、私たちも楽しむと致しましょうか。アモン様」

「だね!」

「いっぱい食べるにゃ!」

「そうじゃのう! 行くぞ、キャスティ!」

「わかったにゃ!」


キャスティとディアマトも共に料理があるテーブルへと駆け出す。


「ふふ、テンション高いわね。……それじゃアモン、私たちも行きましょう」

「そうだね」


俺は頷きながらエレナとマイトの三人で盛り上がる宴の場所へと歩み寄るのだった。

「面白かった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「アモン達は今後どうなるのっ……!」


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