48 失意のエアリア
宿屋に戻った後、ベットに寝かせていたディアマトの元へと駆け付ける。
ディアマトは静かに寝息を立てており、別段問題はない様子だった。
「……ん」
すると、ディアマトは微かに目を開ける。
「え、ディアマト!?」
「……主様、ここは?」
「っ! 目が覚めたのね!」
マリッサは目を覚ましたディアマトに勢いよく飛びつく。
「マリッサ様! 無理に起こすとディアマト様の体に障りますよ」
「わ、分かっているわよマイト!」
「あはは……でも、ディアマトさん、意識が戻ったんですね!」
目を覚ましたディアマトにエアリア達も驚く。
「あぁ……我はどうなった?」
「ここはオルテシアっていう街の宿屋だよ、ディアマトのお陰でメルトリアに移動することが出来て……そこでディアマトの呪いを解けるっていう情報を頼りにオルテシアに来ているんだ」
俺は目を覚ましたディアマトに近況を報告する。
「そうであったか……面倒をかけるの」
そう言いながらベットから体を起こすディアマトに対してエレナが尋ねる。
「……起きて大丈夫なのか?」
「あぁ、どうってことはない……が、まだ体が痺れて思うようには動けそうもないの」
「それなら無理をしない方がいいよ。この後、ディアマトの体にかかった呪いを解く事が出来るかもしれない教会に向かうところなんだ。もう少しの辛抱だからな」
「ありがとう……主様」
「ほら、俺の背中に乗ってくれ」
「……わかったのじゃ」
小さな声で感謝を伝えてくるディアマトを背負い込むと俺は皆を見渡す。
「よし、それじゃ教会にいくとしようか」
皆が頷き、俺達は教会へと向かった。
教会はオルテシアの中央に設立されており、遠くから見ても一目で分かる建物だった。
「ここか……」
「……そうみたいですね」
「でっかい建物にゃ……」
「……本当ね」
俺とエアリア達は大きな教会を見上げながら呟く。
「マイト! 早く入りましょう!」
「マリッサ様! 引っ張らないでください!」
マリッサはマイトの手を引っ張りながらいち早く教会へと入っていった。
「俺達も中に入ってみよう」
「はい!」
「えぇ」
「わかったにゃ!」
俺は背中に抱えるディアマトを持ち上げ直し、教会の中へと入っていく。
教会内に入ると、天井が高く神聖な雰囲気を醸し出す内装をしていた。
「……痛っ! 何だ、肌にヒリヒリと痛みを感じるぞ」
「……大丈夫ですか?」
「エアリアは何ともないのか?」
「はい、なんともありませんよ?」
「う~ん、なんだろう」
俺が魔族だからだろうか……あまり、この教会に長居したくない感覚だ。
「……おそらく、魔物に近い者を阻む小規模な結界が教会内に張られているのじゃろう。我も先ほどからその痛みを感じているのじゃ」
背中に背負ったディアマトも痛みを感じていたようだ。
「だ、大丈夫ですか、お2人とも?」
エアリアは心配そうに見つめてくる。
「うん。そんなに大きな痛みではないから、少しの間なら大丈夫だよ」
俺とディアマトを心配するエアリアに微笑みかけ、俺達は奥へと歩みを進める。
すると、神官のような服装をきた中年男性が俺達に声を掛けてきた。
「ようこそ神聖教会へいらっしゃいました。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「すみません。この子にかかった呪いを解いてもらいたくて……」
「解呪のご依頼でございますね。少々お待ちいただけますでしょうか?」
神官の男性は奥へと姿を消した後、しばらくすると凛とした女生の方と共に戻ってきた。
「お待たせ致しました。こちらの方が教皇のナタリック様です。……ナタリック様、この者達です。後はよろしくお願い致します」
神官の方は一礼をすると、奥へと消えていった。
「紹介に預かりました。初めまして、私はナタリック・マイオニーと申します。この教会の教皇をしている者です」
「……これはご丁寧に。俺はアモンと申します」
俺は背中に抱えたディアマトを教皇であるナタリックに見せる。
「俺の仲間が敵からの呪いにかかってしまったんです。呪いの解除をお願いできますでしょうか?」
ナタリックはディアマトの頭に生えた角を見ると、俺に尋ねてくる。
「アモン殿。この者は……何物なのですか?」
「……えっと。見た目は少女ですが、元はドラゴンなんです」
すると、ナタリックの表情が急に鋭くディアマトを睨みつける表情に変わる。
「……ドラゴン……魔物という事ですね。申し訳ありません。この教会では魔物の解呪は行ってはおりません」
ナタリックは冷たく言い放つ。
「……え。ちょっと待ってください! ディアマトは元はドラゴンですが、危害を加えるような魔物じゃありません!」
「そういう問題ではありません。魔物である時点で教会の加護を与える事はできないのです」
すると、マリッサがナタリックに対して物申す。
「ちょっと待ちなさいよ貴方! 何でダメなのよ!」
「マリッサ様!?」
「……貴方は? ……いえ、どなただとしても、この教会では魔物に対して加護は行ってはおりません」
ナタリックは全く動じることなく、説得のしようもなかった。
「……そんな」
俯く俺にナタリックは続けて話す。
「それに……その者にかかっている呪いは特殊な呪いのようです。……特殊な禍々しいマナによる呪いと言いましょうか。解呪をしようとすると、その術者にも呪いの影響が出てしまう可能性があります」
ナタリックがそう言うと、エアリアが反応する。
「……えっと。……私、一度この子に回復魔法を使っているんですが、その場合はどうなるんでしょうか?」
「おそらく、何かしらの影響が出ているでしょう。試しに魔法を使ってみてください」
エアリアは試しに呪文を唱えるが、マナが構築される直前にガラスが割れるように砕けてしまった。
「……え?」
それから何度も繰り返すが、マナの構築が途中で妨害されてしまう様子だった。
「……え、なんで!? ……魔法が、使えない」
その場で見てわかる程、落ち込むエアリア。
「それも呪いの影響でしょう。貴方は人間でしょうから解呪を行う事はできますが……先ほども申した通り、この魔物にかかった呪いは少し特殊な呪いです。私にも何かしら影響が出る可能性もあります」
「……要するに、エアリアも解呪できないってことですか?」
俺はナタリックを睨みつけながら問いかける。
「申し訳ありません。私はオルテシアの上部に張っている結界の管理も行っているのです。私が魔法を使えなくなった場合……この街を危険な状態にしてしまいます」
「……っ!」
俺はそれ以上、頼む事は出来なかった。
「……フン、とんだインチキ教会ね。行きましょう、アモン」
エレナは悪態をつきながら出口へと向かう。
「……あのっ! 何か、何か他に治す方法は無いんでしょうか!?」
俺は最後にすがる思いでナタリックに尋ねた。
ナタリックは少し考えた後、答える。
「……オルテシアから少し離れた都市に魔法都市ウエスタンという雪に覆われた街があります。そこでは複数人で行う解呪術式を行えるはずです。複数人で行う儀式でありますので、呪いの影響を受けることなく、呪いが解く事ができるでしょう」
「魔法都市ウエスタン……ですね! わかりました、そこに向かってみます!」
俺はエレナ達が出て行った教会の出口へと向かった。
「べーっだ!」
マリッサもナタリックに対して悪態をついていたが、マイトに軽くあしらわれながら教会から共に出た。
俺達はやるせない気持ちで宿屋へと戻ると、ディアマトをベットに横にした。
続けて俺もベットに深々と腰を下ろす。
「……ふぅ」
「すまないの、主様」
「いや、ディアマトのせいじゃないさ」
室内では重たい空気が漂う。
その要因であるエアリアに視線を移す。
「エアリア……気を落とさないでくれ」
「すみません……どうしていいか、分からなくて」
エアリアは魔法が使えなくなった事が予想以上にショックなようですっかり落ち込んでいた。
俺はすぐさま重たい空気を取り払う為、ベットから立ち上がる。
「ディアマトやエアリアの症状を倒す為にも魔法都市ウエスタンに行かないと! ……って、言っても誰か行った事ある人っているの?」
俺は皆を見渡すが、全員が顔を左右に振る。
「ない……か。確か、ナタリックは雪に覆われた街って言っていたはず」
「……そうね。私の千里眼で一定距離は周辺を見る事が出来るから、慎重に進んでいけば街は見つかるはずよ」
「そうだね。お願いしようかな、エレナ」
「任せて、アモン」
俺はベットで寝ているディアマトに視線を向ける。
「ディアマト、もう少しの辛抱だけど……」
すると、ディアマトはゆっくりとベットから起き上がろうとしていた。
「……た、立てるの?」
「うむ。立って動く事はできるが……ドラゴンになる事は難しそうじゃ」
「……っ! それで充分だよ。それじゃ魔法都市ウエスタンに向かおう!」
「わかったのじゃ、主様」
俺達は次の目的地、魔法都市ウエスタンへと向かうのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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