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45 ジュラルドの隠し事

俺はそれからの事は覚えておらず、体を揺らされた俺は目を覚ます。


「ん…………ここは?」

「起きてください、アモン様!」


広い部屋は暗くなっており、窓から差し込む月光で声の主がマイトだと分かる。

どうやらマイトに起こされたようだ。


「俺は……寝ていたのか」

「はい。他の方達も同様です。食事の後、グレイス様によって各部屋へ連れられておりました」

「……全員が一度に寝るっておかしいな……マイトは大丈夫だったの?」

「私は思うところがあり、食事を一口も食べておりませんでした。……おそらく、食事に何か入れられていたのでしょう」


俺は自分の浅はかさを呪う。


「そうだったのか……でも何故、こんなことを」

「わかりません。ですが、キャスティ様が部屋にいないのです」

「……キャスティが? 部屋の中を調べたの?」

「はい。皆様が寝静まった後、念のために屋敷内をくまなく調べていたのですが……最後に各部屋を確認したところ、キャスティ様だけが部屋から姿を消していたのです」


俺がベットから立ち上がり、マイトに視線を向ける。


「……探さないと、何か嫌な予感がする」

「はい。付いてきてください。思い当たる場所があります」

「わかった!」


俺はマイトと共に部屋から飛び出した。

廊下を走りながら、マイトに尋ねる。


「……それで、思い当たる場所っていうのは?」

「調べている最中に怪しい扉を見つけたのです。……付いてきてください」


マイトは速度を上げて駆け出していく。

到着した部屋は書斎の様な部屋で、マイトは奥にある本棚に近づいていく。


「この本棚に細工が仕込まれていまして……この本を押すと……」


すると、本棚が横に移動できるようになり、奥には鉄で作られた扉があった。

マイトが鉄で出来た扉を開くと地下へ階段が繋がっていた。


「やはり……少し前だと、この扉には鍵がかかっていたのです」

「なんだよ……この階段は」

「わかりません。……行ってみましょう、アモン様」

「あぁ!」




階段を下っていくと、奥の部屋から光が漏れており、聞き覚えのある声の叫び声が響き渡った。

俺とマイトはすぐさま明かりが漏れる部屋の傍に隠れて中を覗き込む。


「素晴らしい!! 恐怖とは、これほどまでに素敵な造形(ぞうけい)を作り出すのだな!」


そこには何やら実験室のような内装で、水の入っている容器に浮いている奇妙な生命体を見ながらジュラルドが絶賛していた。


「……ひ、ひどいにゃ! ロザリーちゃんに何をしたのにゃ!!」

「ガハハ、見て分からなかったのかな? 私の作品の一部となってもらったたのだよ。……安心しなさい、すぐに君も同じ作品の一部にしてあげよう」


ジュラルドはキャスティにゆっくりと歩み寄る。


「……ヒッ!」


キャスティは両手を後の柱に拘束されており、身動きができずにいた。


「……キャスティ!」

「アモン様! 待ってください!」


俺はキャスティが縛られているのをみて、居ても立ってもいられず室内へと飛び出していた。


「ジュラルド! 一体ここで何をしているんだ!」


飛び出した俺はすぐさまジュラルドに問い詰める。


「……アモンさんっ!!」

「おやおや、寝ていたと思っていたが……アモン殿、なぜここに?」


遅れて入ってきたマイトが答える。


「アモン様は私が起こしてここに連れてきたのです。……貴方はここで一体何をしているのでしょうか?」

「ガハハ、私の趣味だよ。……見てくれ! これが私の作品だ」


ジュラルドは、水の入っている大きな容器の中に浮いている奇妙な生命体を指し示す。


「……何なんですか、この生き物は?」

「様々な亜人族を組み合わせて作ったキメラだ。……私の作品だよ。すごいと思わないかね?」


そのキメラからは微かにロザリーの面影が感じられた。


「合体って……もしかして、ロザリーもこのキメラに?」

「あぁ、そうだとも! さっき、この機械で合体させたところだ。私の作品はデリケートでね……一度に合体させると体調を崩してしまうのだよ」


ジュラルドは全く悪びれずに答える。


「……なんて、非人道的な」


マイトが静かに怒る。


「なんてひどい事を……っ!」


俺もジュラルドに対して叱咤(しった)するが、ジュラルドは困惑した表情をしながら尋ねてくる。


「なんだ2人とも……何でそんなに怒っているんだ? ……相手は亜人族なんだぞ?」

「……種族なんて関係ない! 命を(もてあそ)ぶなんて、許されるわけないだろう!」


俺はジュラルドに対して発すると、死角から何者かが迫ってきた。


「……っ! 」


――ガキィィィンッ!

振り返ると、マイトがスキルで瞬時に俺の背後に移動して相手の鋭い刺突短剣をシルバーダガーで受け止めていた。


「……貴方も、ご存じだったのですか?」


マイトは攻撃を繰り出してきたメイド長のグレイスに向かって問いただす。


「ジュラルド侯爵様の邪魔者は排除するのみです」

「……させません。アモン様、この方は私がお相手致します」

「頼むよマイト。……俺は――」


俺はジュラルドに視線を向ける。


「――ふむ、こんなことになるとはな……。すまないが、私はそこの亜人に興味があるのだ。金ならいくらでも払う……そこのモノを貰えないだろうか?」

「そんな要望に応えるつもりもないし、キャスティはモノじゃない……俺の仲間だ」

「……アモンさんっ」


俺はキャスティを背にしてジュラルドを睨みつける。


「はぁ……交渉決裂か。しかたない……なら私の作品のお手並みを拝見しようじゃないか」


ジュラルドはそう言うと、手元にあるボタンを押した。


――プシュゥゥゥゥゥゥ!

すると、大きな水溶器の中の水がなくなっていき、容器の中に浮いていた奇妙な生命体はその場に立ち尽くす。

次の瞬間、容器を思いっきり叩き割り、外に飛び出してきた。


「なん……だと……、動くのか!」

「……さぁ、お前の力を私に見せてみろ!」

「キシャァァァアア!」


奇妙な生命体は大きく叫ぶと俺の方へ勢いよく襲い掛かってきた。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「アモン達は今後どうなるのっ……!」


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