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40 マリッサの服装

メルトリアに到着すると、早速宿屋に足を運んだ。

宿屋の中に入ると、すぐに俺は亭主へ話しかける。


「すみません、以前この宿に馬車を預けていた者なんですが……覚えているでしょうか?」

「あぁ、あんたか。覚えているよ。……それはそうと、その手に抱えている子は大丈夫かい? 意識を失っているようだけど」


亭主は抱えているディアマトを見て尋ねてくる。


「えぇ……ちょっと怪我をしてしまいまして……部屋も貸して頂けると嬉しいです」

「それはもちろんだが……って、ちょっと待て!? ……もしかして、そこにいるのはマリッサ姫じゃないのかい!?」


亭主が純白なドレスを着たマリッサを見た途端、慌て始める。


「……何をそんなに驚いているのよ? 私はエクリエル王国のマリッサ・エクリエルで合っているわ」

「これはこれは……っ! お嬢様のような方が私のような者の店に出向いてくださるとは……ありがたいです!」

「えっと……実は――」


俺は亭主に簡単に事情を説明した。


「――そのような事が……それはざぞお疲れでしょう。……ささ、宿代は結構ですので、好きにお使いください」

「あ! いや、宿代はしっかり払いますよ」

「……そ、そこまで言うのでしたらわかりました」

「はい。……それで話は戻りますが、馬車をまた使いたいとおもいっているのですが、問題ないでしょうか?」

「もちろんですよ。馬車は一応手入れはしておいたから、綺麗な状態で保管している。好きに持って行ってくれて良い」

「手入れまでしてくださっていたんですね。ありがとうございます!」

「気にしないでくれ。……それで、部屋も借りるんだろ? 何部屋借りるんだい?」


俺は振り返って皆を見回す。

確か、1部屋にベットは2つで俺達は7人いるから――


「――4部屋でお願いします」

「わかったよ。………ほら、鍵だ。それぞれ近い部屋にしてあるから。部屋の行き来もしやすいだろう」

「ありがとうございます」


俺は鍵を受け取った後、部屋に移動する。

まずは1部屋に入り、ディアマトをベットに寝かせる。


「ディアマト……少しばかり休んでいてくれ」


ディアマトが微かに息をしているのを確認した後、立ち上がり皆の方を振り返る。


「一先ず、情報収集をしよう。ディアマトの呪いを解く方法と離島に向かう方法だ」

「わかりましたアモンさん! 行きましょう!」

「そうなると、人が大勢いる所で聞いた方がいいでしょうね。……久しぶりにギルド本部に行ってみない?」

「いい案にゃ! 何か情報があるかもしれないにゃ」


マリッサは聞き慣れない単語が出たのか、エレナに尋ねる。


「その……ギルド本部っていうのは何よエレナ」

「あぁ簡単に言えば、そこで様々な冒険者が仕事を受け持ってお金を稼ぐ場所よ」

「……マリッサ様には縁のない場所でございますね」


マイトが会話に割り込んでくる。


「そんな事ないわマイト! エレナ、そのギルドって場所に行ってみたいわ!」

「わかったわ。……どうかしらアモン?」

「そうだな……だけど、その前にマリッサ。一旦、冒険者っぽい服装に着替えた方がいいんじゃないかな?」


俺はマリッサの方を見て呟く。


「そ、そうかしら?」

「うん。元々はディアマトですぐ離島に向かって済ます予定だったからドレスのままでいいかな。と思っていたけど……もうそれは出来ない。しばらくは陸地を移動していくから、ドレスのままじゃさっきの亭主みたいに目に付きやすくなっちゃうからね」

「……アモン様のおっしゃる通りですね。マリッサ様、一度服を新調するのがいいと私も思います」

「マイトがそう言うなら私も異論はないわ! むしろこのドレス動きづらかったから嬉しいぐらいよ!」

「よかった。それじゃギルド本部に向かう前にマリッサの服を見に行くとしよう。……エアリア、マリッサの服を選ぶのを手伝ってくれるかな?」

「わかりましたアモンさん!」

「それじゃ、店は私が案内するわ」

「エレナさん、お願いしますね」


そんなこんなで俺達は、ギルド本部へ向かう前にマリッサの服装を整える事となった。




エレナに服を買える店へ案内してもらったが、明らかに覚えのある店に案内される。


「エレナ……服を買う店って言ってたけど、ここって前にキャスティの装備を揃えた店だよね?」

「あはは……懐かしい場所ですね」

「懐かしい場所にゃ……っ!」


エアリアやキャスティが店を見て懐かしい表情を浮かべる。


「ふふ、そうよ。マリッサもこれから一緒に冒険するんだから、ある程度の装備を整えた方がいいじゃない」

「……あ、それもそうか」


俺は妙に納得をしてしまう。


「装備を整える……っ! これで私も冒険者の仲間入りなのね!」

「……マリッサ様、あまり目立つ装備を買わないようにしてくださいね」

「分かっているわよマイト! さぁエレナ、早く入りましょう!」

「えぇ、それじゃ付いてきて」


エレナに続いて俺達も店へと入っていく。


「お邪魔するわ」

「おぉ、エレナじゃないか。この前ぶりだな、今日は何の用だ?」


店に入ると、以前にも会ったドワーフ族の優しそうなおじさんが俺達を出迎えてくれた。


「えぇ、今日はこの子の装備を見繕(みつくろ)ってほしいのよ」

「どれどれ……って、おいおい!? もしかして、君はマリッサ姫じゃないのかい?」


装備屋の店主も先ほどの宿屋の亭主と同様にマリッサを見た途端、慌て始める。


「ふふ、そうよ! 私も今日から冒険者になるのよ!!」


マリッサは何故か腰に手を置き、ドワーフ族のおじさんに宣言をしていた。


「はて……お姫様が冒険者に……?」

「……細かい事は気にしないで、それでこの子に合う武器防具を揃えてほしいのよ」

「あ、あぁ……わかったよエレナ。それでマリッサ様、どんな武器をご所望ですか?」

「……そうね、ずっと剣の稽古をしてきたし、剣がほしいわ!」

「おぉ! 私と同じにゃ!」


キャスティが妙に興奮していた。


「剣だね。……ちょっと待ってくれ。……よいしょ」


おじさんは奥から3種類の剣をテーブルに置く。


「剣と言っても長さが三種類ある。どの長さの剣が希望かな?」

「一番長い剣は私と同じにゃ! 重たいけど、それだけ相手に剣が届きやすいにゃ!」

「長い剣も良いわね……」

「マリッサ様、あくまで護身用として持つ程度にして、短剣か中ぐらいのサイズの剣にした方がいいのではないでしょうか?」

「そうね……」


マリッサはテーブルに置かれた長い剣を持ち上げてみる。


「う……確かに長い剣って重たいわね。これはどうかしら」


マリッサは長い剣を置き、中ぐらいの剣を持ち上げる。


「……うん、これなら持ち上げられるわ。これにしようかしらわ!」

「ミドルソードだね。わかったよ。防具はどういったモノをご希望だい?」

「動きやすい防具がいいわ! このドレス、動きづらいったらしょうがないもの!」

「はは、わかったよ。ちょっと待っていてくれ」

「あのっ! ある程度の強度がある防具でお願い致します」

「あぁわかったよ」


マイトが1つ要望を伝えると、頷いたドワーフのおじさんは奥へと姿を消した。

少し待つと、箱に入った青白い綺麗な鎧を持ってくる。


「よいしょっと」


机に箱を置くと個別に取り出してくる。


「わぁ!! 綺麗な鎧ね!」


マリッサはテーブルに並べられた青白い防具一式を見てテンションが上がり始める。


「この防具なら、フルプレートみたいに動きづらくないが、急所を守る事がしっかりできる強度はある代物だ」


マイトが防具のパーツ一つを持つと手で何度か叩き、強度を確認していた。


「……しっかりとした作りですね。素晴らしい」

「私も気に入ったわ。これにする!」

「お気に召したようで嬉しいよ」


武器と防具が決まったようなので、俺はマリッサに試着を勧める。


「それじゃマリッサ、早速試着してくるといいよ」

「えぇ!! ……って言っても、どう着ていいのか分からないわ」

「大丈夫にゃ! 私も着替えるの手伝うにゃ!」

「ありがとうキャスティ! お願いするわ!」


キャスティも同じような防具を着ているからか、自ら志願してマリッサと共に試着スペースへと移動していった。


「今回も良い武器防具を揃えて頂いてありがとうございます」

「なに、また何かあれば来てくれると良い」


俺は2人が試着スペースで着替えている間にドワーフ族の優しそうなおじさんに武器防具代を渡しておく。




マリッサ達が戻ってくる前に俺はマイトに視線を向けた。


「……マイトは武器防具は揃えなくていいの?」

「お気遣い頂きありがとうございます、アモン様。……ですが、私は必要ありません。武器なら既にシルバーダガーがありますし、防具も相手の攻撃を受けなければいいだけの話です」


マイトは腰のシルバーダガーを見せながら話す。

だが、俺はこの前マイトが黒装束の大男に血だらけにされていた事を思い出していた。


「でも……この前の黒装束の大男から攻撃を受けていたと思うけど?」

「あ……これはお恥ずかしい。あの時は私のスキルが封じられていたからです。本来であれば、私は相手の攻撃を必ず回避できるのです」

「……え? そうなの?」

「はい。このように――」


――シュッ!

すると、マイトは一瞬で立っている場所を移動した。


「……っ!? 何をしたの?」

「私は一定時間、時を止めて移動することが可能なのです」


想像以上のスキルで空いた口が塞がらなかった。


「……え、でも初めに俺と戦ったあの夜、すぐにマイトは降参していたけど、何であの時にスキルを使わなかったの?」

「あぁ……時間を止めている間は、他者に干渉することができないのです。それに、すぐにアモン様から四方を空気の壁に囲まれてしまいましたので……時間を止めても移動することができなかったのです」

「そうだったのか。……という事は回避専用の技って感じなんだね」

「そうなります。だからこそ、私には防具は必要ないのです」


俺はエクリエル王国を出る前に見たアリシアの戦闘を思い出す。


「……たしか、アリシアも相手の攻撃が分かるような事を言っていたけど」

「あぁ、アリシア様は少し特殊です。直観といいますか……感じた事が全て実現するとおっしゃっていました」

「直観?」

「えぇ、アリシア様は強運がある、とおっしゃっていましたね」

「強運か……」


強運があるからこそ、黒装束の大男の攻撃を回避できたとでも言うのだろうか。

俺が思考を重ねていると、試着スペースからマリッサ達が戻ってきた。


「待たせたわね!! どうかしら!」


すると、青白い綺麗な鎧を身にまとうマリッサがそこにいた。


「凄く似合っていると思う! 何かどこかの王国の聖騎士っぽいよ!」


俺は思った事をマリッサに伝える。

もうお姫様の面影は微塵もなかった。


「そうよね! 私も気に入っちゃったわ!」


マイトがマリッサの姿を見て、少し考え込んでいる。


「マリッサ様、このままだと髪が鎧に(もつ)れてしまう可能性があります。店主の方、何か髪を括る布はありませんか?」

「ん? あぁ、ちょっとまっていてくれ」


すると、おじさんはすぐに純白な白い布を手渡してくる。


「これはサービスだ。受け取りな」

「ありがとうございます。マリッサ様、じっとしていてください」

「わ、わかったわ」


純白の布を受け取ったマイトは、美しい黄金色のマリッサの長い髪を一括りに結んだ。


「よし、これでいいでしょう」


すると、金髪ポニーテールとなったマリッサは立ち鏡の前に立ち、自身の姿を改めて確認する。


「うんうん! いいじゃない! 剣もあるし、これでどこからどうみても冒険者よ!」

「そうだね。武器防具もそろった事だし、ギルド本部に向かおうか」

「ギルド本部……っ! いいわね! 早速向かいましょう!」


上機嫌なマリッサを横目に俺達はギルド本部へと向かうのだった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「アモン達は今後どうなるのっ……!」


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