39 不時着
マナで淀んでいる離島の中は視界が悪く、誰が放ってきたのか確認することはできなかった。
そんな中、俺はすぐさま空気の壁を前方に展開する。
「アブソリュート――」
――だが、技名を言っている最中に相手の斬撃は空気の壁を貫通してきた。
「……なっ!? ディアマト避けて!!」
俺は一度も破られる事がなかった空気の壁が貫通された事に動揺を抱きながらも、すぐさまディアマトに叫んでいた。
――ズシャァァッ!!
しかし、ディアマトは勢いよく結界に空いた穴へと向かっていた為、満足に避ける事ができず片翼に相手の斬撃が当たってしまう。
完全に切断されることは免れたが、片翼を満足に動かす事が出来ずに一気に海へと落下していく。
「きゃぁぁっ!」
「うわぁぁぁ!」
「ぐぅっ! ……落ちるものかっ!」
ディアマトは何とか海への落下はせずに踏みとどまるが、満足に高度を保つことができなくなる。
「……っディアマトさん! 大丈夫ですか!?」
大きく揺れながらもディアマトの事を心配をするエアリア。
「大丈夫……ではないが、このままでは海に落ちてしまうの」
「すぐに治療します!」
すぐさまエアリアは傷ついた片翼へと回復魔法を施す。
「な、何よさっきのは! アモンの技を突破してきたっていうの!?」
「そのようだ。……俺の壁を貫通してくるなんて」
俺は俯きながら呟く。
「あわわ……目が回るにゃ……うぅ」
「な、何よさっきの攻撃は!?」
マリッサは俺に向かって問いかけてくる。
「……分からない。俺の壁を突破するほどの威力なのか……それとも何か別の要因があるのか」
「アモン様……それでは、この結界を突破することは難しいのでしょうか……」
俺が返答を返す前にエアリアが声を上げる。
「ダ、ダメですアモンさん! この傷跡、魔法を使うと打ち消されてしまいます」
「魔法を打ち消される? ……どういう事だ」
俺はエアリアの傍に近寄る。
「……見てください」
するとエアリアは、傷ついたディアマトの片翼に実際に回復魔法を行う。
光り輝いた瞬間、すぐさまガラスが割れるように光が四散してしまう。
「本当だ、途中で妨害されているね」
「……これは、一体なんでしょうか」
俺達のやり取りを聞いていたディアマトが声を上げる。
「……なるほどの。……相手がわかったのじゃ」
「えっ! ディアマト、攻撃を撃ってきた相手がわかったの?」
「あぁ、呪いを乗せて攻撃を放ってくる相手、我が知る限り一人だけじゃ」
「……だ、誰なんだ。そいつは?」
ディアマトは一呼吸あけて話す。
「我と同じドラゴン種の一体じゃ」
「……っ! ……という事は、離島の結界内にディアマトと同じドラゴンがいるって事!?」
「……おそらくそうじゃろう。黒龍……闇魔法の耐性を兼ね備えたドラゴンじゃ」
希少なドラゴンが更に希少な闇属性の耐性持ちなんて反則だ。
「黒龍……そんな強そうなやつが結界内にいるって事か……でも何で俺達を?」
「それは我も分からんのう。何かを守っているのか……我と同じように何者かに操られているのか」
「……どちらにしても、このままじゃこの結界を突破することは難しいね」
すると、ディアマトの体がガクンと揺れる。
「ディアマトっ!! 大丈夫!?」
「……主様、一旦陸地に戻ってもいいじゃろうか」
ディアマトは弱々しく懇願してくる。
「それは全然大丈夫だよ! 一旦戻ろう。皆もいいよね?」
皆も異論はないようで、頷いてくれる。
「……わかったのじゃ。……ありがとうの、主様。」
それからディアマトは飛んで来た道を引き返して再びエクリエル王国のあるラフィーロ大陸へと引き返した。
痛々しい羽根を無理に羽ばたかせながら俺達を懸命に運ぶディアマト。
やっとの思いで陸地に入ると、少し先に見覚えのある町が見えた。
「あ! ディアマト、あの街に寄ってもらっていいかな」
「あそこは……メルトリアじゃな!」
俺達が出会った町、メルトリアがそこにあった。
「もう少し飛べそうか?」
「……っ! まかせるのじゃ」
ディアマトは力を振り絞るように返事を返し、メルトリアへと向かった。
そしてなんとかメルトリア付近に近づくと、ディアマトは徐々に地面に近づいていく。
「……すまないの、主様」
「……ディアマト?」
小さく答えるディアマトはそのまま意識を失ってしまい――
――ズザザザザザザザザァァァ!
そのまま地面に滑り込むように落下してメルトリア近隣に不時着する。
「うわぁぁ!」
「きゃぁぁぁ!」
俺達は大きな揺れに翻弄されながらも、ディアマトの背中にしがみつく。
揺れが収まり、背中に乗っていた俺達はすぐさま飛び退く。
「ディアマト!」
地面にぐったりとしていたディアマトは光り輝くと少女の姿に戻っていた。
俺はすぐに抱きかかえると、ディアマトは力なく返答も返さない。
「アモン! ディアマトはもう死んでしまったの!?」
マリッサは駆け付けると、俺に残酷な問いをかけてくる。
「……っ!」
「マリッサ様!! ……そのような事を聞くものではありません!」
俺の代わりにマイトが叱る。
「……ご、ごめんなさい」
そんな中、エアリアも駆け寄ってきてすぐにディアマトの状態を確認する。
「……いえマリッサさん、まだディアマトさんは生きています。……ですが、非常に危険な状態です。回復魔法が打ち消されてしまうなんて……私には、もう手の施しようが……ありません」
悲しそうに俯いてしまうエアリアに釣られて、周りにどんよりとした暗い空気が漂う。
……そんな中、俺はディアマトを両手に抱きかかえ、立ち上がる。
「行こう、エアリア。まだ……俺達には出来る事がある」
「……え?」
小さく声を上げるエアリアは顔を上げる。
「ディアマトを治す方法は探せばいいだけだし、空から離島に行けないのなら……陸地から向かえばいいだけの話さ」
俺はエアリアに優しくほほ笑みかける。
「……アモンさん。……そうですね。まだ、私達には出来る事があるはずです!」
エアリアも俺に釣られて笑顔になる。
すると、俺達を包み込んでいた暗い空気が一気に吹き飛んでいった。
「よし、それじゃ皆! ひとまずメルトリアに向かおう!」
「えぇ! ……それにしても、懐かしい場所ね。またここに来るなんて」
エレナが周辺を見渡しながら思いにふける。
「そうにゃ! ここで特訓したのが昨日の事のように思い出すにゃ!」
両手を上げながら元気よく話すキャスティ。
その時、俺はある事を思い出す。
「確かに……あっ! そういえば、宿屋に馬車を預けていたはずだ! それを返して貰えるか聞いてみよう!」
「あ~……確かそうだったわね。それじゃ行きましょ、アモン」
エレナも思い出したかのように呟く。
俺はマリッサに視線を向けるとマイトから叱られてしょんぼりしていた。
「……マリッサ様。申し訳ありません、私も少し言い過ぎました。いつまでも気を落としていないで私たちも行きましょう?」
マイトはほほ笑みながらマリッサに手を伸ばす。
「……もう、怒ってない?」
「もちろんです」
マリッサはパァっと笑顔に変わるとマイトの手を取り、俺達に近寄ってくる。
「アモン! これからあの街に向かうのよね?」
「うん。マリッサ達にとっては初めての街だよね。後で案内するよ」
「えぇ! お願いするわ! 早く行きましょうマイト!」
「ま、待ってくださいマリッサ様!」
マリッサはマイトの手を引いてメルトリアの方へと走っていった。
「ふふ、お2人とも相変わらずですね。……それじゃアモンさん。私たちも行きましょうか」
「そうだね。……行こうか、エアリア」
俺は両手に抱えるディアマトをチラっと覗き込み、微かに呼吸をしているのを確認した後、メルトリアへ駆けていくマリッサ達を追いかけた。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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