38 離島の結界
エアリアに治療されていたマイトは目を覚ます。
「……私は」
「マイトっ! 目が覚めたのね! もう大丈夫よ、傷は塞がったわ!」
マイトはゆっくりを体を起こし、自身の傷が癒えている事を確認する。
そして、傍で控えていたエアリアに視線を向ける。
「……エアリア様が治療してくださったのですね。ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして! ……でも、このままじゃ血まみれですよね、ちょっと待っててください」
エアリアはそう言うと、呪文を唱えて2人の血まみれの服を水魔法で瞬時に洗浄する。
「……魔法って便利だね。マイト……もう動けそう?」
俺の質問に対してマイトは体に問題が無いのかを確認する。
「はい。お陰様で問題ないようです」
返答を聞いた俺は立ち上がり、アリシアに視線を向ける。
「今回は助けて頂き、本当にありがとうございます。アリシアがいなかったら今事マイトは……」
「気にしないで。私も間に合ってよかったし、マイトにはいろいろお世話になっているからね。今から旅立つの?」
「はい! 今回のような奇襲にも備えるように気を付けながら行きたいと思います」
「わかったわ。エクリエル王国は私たちが守るわ。……だから、安心して旅立ちなさい」
実際にアリシア達の実力を目の前で見たこともあり、説得力が全然違う。
「わかりました! それでは少しの間、王国をお任せ致します」
「えぇ、任せて」
すると、歩み寄ってきたアイネも俺に話しかけてくる。
「……兄さん、気を付けてね!」
「ありがとうアイネ。俺が留守の間、アリシアに迷惑をかけないようにね」
「もう、わかっているわ!」
エアリアに視線を向けると、ドルフとお別れの言葉を交わしている。
「おじいちゃん! 行ってくるね」
「うむ、あまり無茶はしないようにの」
すると、2人にエレナも近づいていく。
「私もお礼を言わなくちゃね。ドルフのお陰で闇魔法を習得できたわ。ありがとう」
「ふぉっふぉっふぉ、気にする出ない。闇魔法に耐性のある人はそもそも珍しいからの、長生きはするものじゃ」
キャスティもボルティガと別れの挨拶を交わしていた。
「ボルティガさんも旅から戻ったらまた特訓してくださいにゃ!」
「あぁ、小生もキャスティとまた手合わせしたいものだ。今回の旅でより一層、技を磨いてくると良い」
「わかったにゃ!」
クロエもエアリアに近づいてお別れの言葉を交わす。
「エアリアちゃん。……大丈夫だと思うけど、無事に戻って来れるように祈ってますね」
「ありがとうございますクロエさん! 皆は私が守りますから任せてください!」
「……ふふ、そうね。行ってらっしゃい」
俺達はそれぞれ別れの言葉を交わすと、エクリエル王国を後にした。
街から出て緑が広がる高原まで進むとマリッサがディアマトに近寄る。
「そろそろいいんじゃない? ねぇ、ドラゴンになって見せてよ!」
「ち、近いのじゃ!」
俺も2人のやり取りを聞きながら周りを見渡す。
「……そうだね。いいんじゃないかな。ディアマト、お願いできる?」
「主様がそういうなら……わかったのじゃ」
すると、ディアマトは少し俺達から距離をとり、光り輝いたと思ったら大きさが一気に俺達の10倍ぐらいのドラゴンサイズへと変わっていく。
「お待たせしたの」
「……っ! すごい!! すごいわ! これがドラゴンね!」
すぐさまマリッサは踏みつぶされそうな程大きいディアマトの足元に近づく。
「マリッサ様、気を付けてください!」
「大丈夫よマイト! ……ねっ! 背中に乗って移動するのよね!」
俺もディアマトに近づきながら答える。
「そうだね。結構揺れるけど、俺が落ちないように守るから安心してよ」
「わかったわ! それじゃ早速乗り込みましょう」
「せわしない女子じゃのう。……ほら、手に乗るのじゃ」
ディアマトはそう言いながらマリッサに手を近づける。
俺達もその手に乗り込むとディアマトは手を肩の辺りに移動させた。
「すごいわっ! もう既に景色が段違いよ!」
「……確かに、既に高いですねマリッサ様」
エレナはワクワクを隠せない2人にニヤニヤしながら伝える。
「ふふ。……この後、空を飛んだらもっと素敵な景色が見れるから、楽しみにしていなさい」
「そうにゃ! 落ちそうになってもアモンさんが守ってくれるから安心して景色を楽しむにゃ!」
キャスティも一度経験しているからか、今から始まる空の旅を今か今かと楽しみにしていた。
エアリアも俺の方に視線を向けると問いかけてくる。
「アモンさん、それではいきましょう!」
「うん! それじゃディアマト。離島に向かって貰えるかな?」
「わかったのじゃ主様! 振り落とされないように気を付けての」
「俺が皆をしっかり守っておくからディアマトは飛行に専念しててね」
「頼もしいのぉ」
ディアマトはそう言うと翼を羽ばたき始め、徐々にディアマトの体が宙に浮き始める。
「すごいすごい! 飛んでるわ!」
マリッサはもう興奮して落ちてしまいそうになる。
もちろん俺は四方に空気の壁を展開しており、マリッサはすぐに空気の壁にぶつかり落ちる事は無かった。
「……もうっ! これ以上進めないじゃない」
「マリッサ様! アモン様がお守り頂いているのです。我慢してください」
「うぅ……わかったわよ」
宙に浮いた後、高度をある程度上げたディアマトは俺達に確認を取る。
「……それじゃ向かうとするかの。振り落とされるでないぞ?」
「わかったよ。皆は任せて!」
俺が返答すると、ディアマトは速度を上げて移動し始めた。
飛行速度は徐々に上がっていき、エクリエル王国が瞬く間に遠くに見える。
「すごいわ! お城がもうあんなに遠くにあるわ!」
「……本当ですねマリッサ様……。これほどまでとは」
2人はエクリエル王国に視線を向けて呟く。
すると、ディアマトが俺に問いかけてくる。
「主様、間もなく海を越えるからの、雨雲に注意するのじゃ!」
「わかった!」
俺は進行方向先にある地平線に広がる海と、その上にある大きな積乱雲を見ながら返答を返す。
空気の壁で濡れる事は無いと思うが念のため備えておくことにする。
「マイト! あの一面に広がる青いのは何?」
「あれは海というものです。世界の7割はあの青い面に覆われているのです」
「そうなのね! とても綺麗だわ!」
マリッサは海を見たことがないのか、とても興味津々だった。
程なくして、ディアマトは海上を移動し始める。
「アモン! このままじゃ、あの白い雲に突っ込むわよ!」
マリッサは大きな積乱雲を見ながら慌てながら俺に問いかけてくる。
「大丈夫だよマリッサ。俺が守っているから濡れる事はない」
「そうなの? ……わ、わかったわ!」
すると、ディアマトは大きな積乱雲に入り込んでいった。
視界は雲で覆われて見えない上にうす暗く、空気の外壁に水滴がついていく。
「ディアマト! 何も見えないけど、大丈夫なの?」
俺は少し心配になりディアマトに尋ねてみる。
「主様、大丈夫じゃ! 離島が放つマナの方角は分かっておる、それに従って進んでおるからの」
「わかった! 引き続きお願いね!」
それからしばらく進むと無事積乱雲を抜ける。
すると、眼前に大きな離島が見えてくる。
「主様、見えてきたのじゃ!」
「あれが……ライフォードの言っていた高濃度のマナが放たれているイングラシル大陸か」
大陸からはマナが視認できるほど空気が淀んでおり、離島の周りには目に見える程に分厚い結界が張られていた。
……あの中に入っていくのか?
「主様! あれが離島を囲う結界じゃ! あれを抜けなければ離島に入る事はできないのじゃ」
「……うん。見るからに厚そうな結界だね」
「どれ、強度を確認してみるかの」
すると、ディアマトは初めて洞窟で出会った時に見せた業火の火炎を口から放つ。
結界に放たれた火炎は、結界に阻まれてかき消える。
「ご覧の通りじゃ、あの結界を壊すのには至難の技じゃぞ」
「……そうみたいだね」
俺は早速結界に向けて手をかざし、ドルフから学んだマナ分解を試みる。
すると、呆気なく一か所の結界が綻び始める。
「……いけそうだ!」
「さすが主様じゃ! あの一点に向かって進むのじゃ!」
更に俺はマナ分解を進めると、結界の一部に穴をあける事に成功する。
「よし! 待ってて、ディアマトが通れるように大きくするから……」
俺は小さく空いた穴を大きくしていく。
そして、ディアマトが通れるぐらいの穴まで拡大をさせた。
「……よしっ! これで通れるのじゃ!」
ディアマトが空いた穴へ向かう刹那――
――ズバァァァァンッ!
大きな音が鳴ったと思ったら巨大な斬撃が離島から俺達に向かってきた。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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