33 マリッサを助ける為に
ライフォードの声が大広間に響き渡る。
「そんな…………あ、そうだ! ドルフにマナを漏れ出るのを防いでもらうって事はできないの?」
俺はドルフに視線を向けて尋ねる。
「うぅむ。難しいじゃろう……王家に伝わる根深い呪いじゃからの。人ひとりが治す事ができる代物ではないのじゃ」
「根深い呪い……ライフォード、その呪いを治す方法はないの?」
俺はライフォードに視線を向ける。
「治す方法としたら……高濃度のマナを放出している離島にある神殿しかないだろう」
ライフォードは神妙な表情をしながら話始める。
「……その神殿ってどこにあるんですか?」
「うむ、今私たちがいる陸地が我が国とバリョッサス帝国のあるラフィーロ大陸。そして亜人やエルフ、ドワーフの住まう島がフィランド大陸。フィランド大陸を経由した先にあるのが、高濃度のマナを放出している離島……イングラシル大陸、そこに神殿はある」
「イングラシル大陸……そこにいけばマリッサは治るんですね!」
「神殿にいけば……おそらく、漏れ出るマナを止める根本的な方法があるはずだ。……だが、高濃度のマナを放出している地域でもある。その分、魔物達も非常に狂暴になっておるのだ」
「――問題ありません。俺がマリッサをそこに連れていきます」
マリッサをこのまま見殺しにすることはできず、俺は自然と言葉が出ていた。
「おぉ……なんと! 引き受けてくれるのかアモン殿!」
すると、エアリアは立ち上がる。
「アモンさん! 私も協力させてくれませんか?」
「それはもちろんだけど……いいの? 危険な場所らしいけど」
「もちろんです! 危険な場所だからこそ回復魔導士がいた方がいいと思います!」
「……ありがとうエアリア」
すると、隣に座っていたエレナも話始める。
「……あたしも行くわアモン。マリッサ達にはお世話になっているし、協力するわよ」
「私もにゃ! アモンさんにはどこまでもご一緒するにゃ!」
「ふふ、我は初めから主様に付き従うつもりじゃ」
「皆……ありがとう!」
俺は再びライフォードに視線を向ける。
「という事です。マリッサは俺達に任せてください」
「……ありがとうアモン殿」
ライフォードが深々と頭を下げる。
「……あ、そうだ……俺達が出かけている間に魔族が襲ってきた時はどうすれば……」
すると、黙って話を聞いていたアリシアが話し始める。
「安心してアモン、もし魔族が再び襲ってきても私達がこの街を守るわ」
「ありがとうアリシア。……それとアイネ、しばらく俺達は城を離れるけど、戻るまではあまり無茶はしないでね」
「えぇ、心配しないでよ兄さん」
話がひと段落した頃、椅子にもたれ掛かっていたマリッサが目を覚ます。
「……ん。……あれ、ここは?」
「マ、マリッサ!?」
俺はすぐさまマリッサに近寄る。
「わわっ! え、アモン? あれ、私……中庭にいたはずじゃ……痛っ!」
マリッサは腹部を手で押さえる。
「マリッサよ、あまり無茶をするではない。お前の体からはマナが漏れ始めておるのだ」
「……マナが漏れてる? この痛みの原因ってそれなの?」
「そうだ。今、その事について話していたところだ」
「だったら、早く治したいわ! どうすればいいのよお父様! ……あ! それとマイトは? マイトはどうしたの?」
目を覚ましたと思ったらすぐさまいつも通りのマリッサだったので俺は胸を撫でおろしていた。
「マリッサ様、マイトは今救護室で休んでおります」
ミダルマンがマリッサに報告をする。
「救護室ね! わかったわミダルマン!」
すると、椅子から立ち上がり、腹部を押さえながら大広間から出て行った。
「……あはは、元気そうですね」
エアリアは苦笑いをしながら呟く。
「はぁ……うちの娘め。他人の心配より自分の心配をすればいいものを……アモン殿。付き添って頂けるかな?」
「わ、わかりました!」
俺はすぐさまマリッサを追いかけた。
大広間から出ると、壁にもたれ掛かって腹部を押さえるマリッサに追いつく。
「マリッサ! その……お腹大丈夫?」
「……えぇ! 最初みたいな痛みはもうないわ。ちょっとチクチクする程度よ!」
そうは言っているが、明らかに痛そうにしている。
「……わかった。でも、無茶はしないで」
「わかっているわ!」
空元気のマリッサは再び走り出す。
俺は不安になりながらもマリッサと救護室へと向かった。
救護室に到着すると、ベットから体を起こしているマイトが視界に入る。
「あ……お嬢様! それにアモン様も」
付き添っていたメイドが俺達を見ると軽く会釈をして救護室から出ていく。
「マイトを看病してくれてありがとうね」
マリッサは出ていくメイドに一声をかけた後、すぐにマイトに視線を戻す。
「マイト! もう大丈夫なの?」
「はいお嬢様。やはり水に含まれていた催眠成分によって眠っていただけのようです」
「そうなのね! あぁ……よかったわ!」
俺は一歩マイトに近づく。
「マイトが寝ている間にいろいろあったんだ」
「……? 何かあったんですか?」
「うん。実は――」
俺は2人が寝ている間にライフォードから聞いた話を共有する。
「――えっ! 私、このままじゃ死んじゃうの!?」
「アモン様……それは本当なのですか?」
2人はにわかに信じがたい表情をする。
当然だ、俺も信じたくはない。
「うん。このままだとマリッサのマナが全て漏れ出してマリッサが死んでしまう。だからこそ、俺達がマリッサをその神殿に連れていこうと思っているんだ」
「アモン様が? ありがたいのですが……アモン様もお忙しいはず、よろしいのでしょうか?」
「大丈夫だよ。それに、このままマリッサを見殺しにはできないからね」
「ありがとうアモン……その神殿に行かないとお腹の痛みが収まらないのなら私に選択肢はないわ。お願いするわ、アモン」
「うん、任せて!」
俺が返答を返すと、マリッサはチラっとマイトの方に視線を向ける。
「……ねぇ、マイトも付いてきてくれる?」
「当然です。私はマリッサ様の専属の執事ですからね」
「そ、そうよね! 当然よね!」
マリッサは嬉しそうな表情を浮かべる。
なにはともあれ、俺はマリッサの笑顔をまた見る事ができて心底安心するのだった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「アモン達は今後どうなるのっ……!」
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